会見に出席した(左から)安井博志日本代表ヘッドコーチと合田雄治郎常務理事。

スポーツクライミング五輪代表選考方式をめぐり混乱。JMSCAが国際連盟を提訴

 日本山岳・スポーツクライミング協会(JMSCA)は1日、都内で緊急会見を開き、国際スポーツクライミング連盟(IFSC)が事前説明なしに東京五輪代表選考方式を変更した可能性があるとして、スイス・ローザンヌにあるスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴したことを発表した。

 JMSCAは昨年10月にIFSCが公表した選考方式に基づき、今年5月に五輪日本代表選考基準を発表。複数ある選考大会いずれかで「出場枠」を獲得することが前提条件となり、その枠を獲得した選手の中から五輪代表を決定するとしていた。

関連記事:東京2020オリンピックのスポーツクライミング日本代表選考基準が発表

 最初の選考大会となった世界選手権(八王子)コンバインド種目で7位以内となり出場枠を獲得したのは男子が楢崎智亜、原田海、女子が野口啓代、野中生萌の4人(出場枠獲得は各国2名まで)で、JMSCAの基準により日本人1位の楢崎、野口が五輪代表に内定した。

 残る選手は、今月28日からフランス・トゥールーズで始まる五輪予選大会(2枠獲得可)、または来年の各大陸選手権(1枠獲得可)で上位に入り出場枠を確保したうえで、同5月のコンバインドジャパンカップで原田、野中と五輪代表の座を懸けて争うはずだった。

 しかし、IFSCが10月に通知した書面には、「訴訟戦略上公表を差し控えたい」として詳細は明らかにしなかったが、各国が最大5名まで取れるとしていた出場枠は最大2名までであると受け取れる“新たな解釈”の記載があったといい、JMSCAは従来の選考方式が変更された可能性があると踏んで何度も説明を求めたが、十分な返答が得られなかったという。

 つまり、今のままでは日本は出場枠を3枠以上取ることができず、すでに世界選手権で7位以内かつ日本人2位となり出場2枠目を獲得した原田と野中がそのまま五輪代表として確定する公算だ。また、柔軟に使えるとされていた開催国枠に関しても、日本が出場枠0だった場合にのみ使用できるとの指摘があったという。

 このままでは、3~5枠目の出場枠獲得を目指す選手たちの五輪への道が絶たれてしまう。会見に出席したJMSCA常務理事の合田雄治郎氏は「IFSCにそう言われたからといって、待つだけでいいのか。選手のためにやれるべきことはやりたい」とし、五輪予選大会も迫ってきているため「極めて遺憾で、苦渋の決断だった」という、選考方式の新解釈取り消しを求める訴訟に踏み切った。

 合田氏は、「選考方式の解釈の確定を慎重に行い、なおかつ選手のためになる選考基準としてきたつもりだが、混乱を招く事態となってしまった。選手に対して申し訳ない気持ちでいっぱい」と話した。

 五輪予選大会には、出場資格を持つ藤井快、楢崎明智、森秋彩、伊藤ふたばは予定通り派遣し、CASには遅くとも大会終了までの判断を求めているという。

CREDITS

取材・文・写真 編集部

back to top