FEATURE 34
[対談]野中生萌 × 竹口正範
進化の裏に新トレーニングあり
2018年、ボルダリングW杯年間ランキングで首位に立つ野中生萌(第6戦終了時点)。目を引くのが、6戦すべてで2位以上という抜群の安定感だ。ハイパフォーマンスを維持する背景には、今季から取り組んでいるトレーニングがあった。成長を求め新たな挑戦を続ける21歳の、進化の秘密とは?
※本記事の内容は2018年6月発行『CLIMBERS #008』掲載当時のものです(インタビュー収録日:2018年6月12日)。
野中「体の可動域が拡がった」
竹口「クライミングで重要なのはコアの安定」
野中選手は半年ほど前から竹口トレーナーの指導を受けられているそうですが、何がきっかけだったのでしょうか?
野中「2020東京オリンピックに向けて、リードやスピードのような(ボルダリングとは)違う競技にも取り組んでいかないといけない中で、今のままではダメだなと感じていたんです。何か取り入れられたらいいなと思っている時に、サッカーの堂安律選手から紹介してもらったのがきっかけでした」
竹口トレーナーが行う指導というのはどういったものなのでしょうか?
竹口「どのアスリートを指導する時も、最初に体の状況をチェックします。身体の可動域をはじめ姿勢や動作のクセ、フィジカル的に強い箇所と弱い箇所などを分析したうえで、強化プランやトレーニングメニューを組み立てていくんです。クライミングでは、(手と足を繋ぐ)中間にあたるコアというのが、爆発的な力を効率的に伝えていくために重要なパーツになってきます。野中選手はコアが弱いわけではありませんでしたが、より強化していくためにアプローチしているところです」
トレーニングでは様々な器具を使用するそうですが、その中の一つにFLOWIN(フローイン)というアイテムを採り入れられているとうかがいました。
竹口「FLOWINは滑りながら動作を行っていくトレーニングアイテムで、身体の可動域を拡げたり、強化したりするのに役立ちます。体幹はもちろん、下半身や胸部など全身をトータルで強化していくことができます。こうした器具の場合、滑り過ぎるとコントロールができずケガを引き起こしてしまいますし、逆に滑らなさ過ぎると動かすのがキツ過ぎてトレーニングにならなくなってしまいます。その点、FLOWINは製造特許を取得していて、滑り過ぎず、滑らなさ過ぎず滑り具合が絶妙なんです。手でも足でも適切な負荷をかけることができるので様々なトレーニングのバリエーションを組めます」
野中選手はFLOWINを使うようになって、ご自身のクライミングの変化を実感していますか?
野中「ありますね。一番感じているのが、身体の可動域が拡がったことです。最初にテストした時、(他の人に)押してもらえば動かすことができるけど、自力ではそこまでの範囲は動かせないってことに気づいて、私の中でけっこう衝撃的だったんです。それがFLOWINを使ってトレーニングしていくうちにどんどんできるようになりました。壁に入り込まないといけない場面で、入り込むだけじゃなくてそこからさらにねじったりする動きに変化をすごく感じています」
野中「壁での動きに落とし込みやすい」
竹口「上達の速度には目を見張る」
クライミングとFLOWINは相性がいい?
野中「合っていると思います。個人的に一番難しいと思っているのが、クライミングは地面でやる競技じゃないので、トレーニングを地面でいくら頑張っても壁での動きに落とし込めないと意味がないんです。その壁での動きとのリンクの部分で、落とし込みやすいトレーニングができている感覚があります」
FLOWINの特徴はどんなところでしょうか?
野中「体を動かしながら体幹を鍛えられることです。クライミングも含めて、スポーツで静止していることってほとんどないですからね。静止しているのと動きながらとでは使う筋肉も変わってきますし、それにこうやって動くことによって、壁に取りついた時に再現しやすいです」
竹口「野中選手の目的は体幹を強くすることではなく、勝つことです。クライミングに活きるトレーニングという観点で考えた時、手足を大きく、たくさん動かすなどあらゆる方向に強い力を発揮するにはコアの安定が重要になります。ただ、それを実現するためには止まっているトレーニングだけではダメで、こういう動きがあるものも採り入れないと、トレーニングと競技とが繋がってきません」
様々なアスリートを指導されてきた竹口トレーナーから見て、野中選手の特徴や他の選手との違いをどういったところに感じますか?
竹口「現在も多くの選手を見ていますが、その中でも最初の身体テストの評価は1番だったんです。最大の長所はウィークポイントがないところ。加えて、上達の早さは目を見張るものがあります。テストを通して見えてきた改善点も少しずつ良くなってきているので、さらに鍛えていったらいったいどんな選手になっちゃうんだろうなって、すごく楽しみにしています」
トレーニングで心がけていることはありますか?
竹口「本人がそのトレーニングをすることの意味を納得して、必要性を理解したうえでやってもらうというのをすごく大事にしています。動き方だけを説明してあとは頑張って、という指導で本人が狙いをわかっていないようではモチベーションも上がりません。専門的なことも理解しやすいようにして伝えています」
野中「トレーニングに限らず、何かをやる時に『何でこれが必要なのか』『何に活きるのか』をちゃんと理解するのはすごく大事だと思っています。そうすることで(トレーニングが)どこに効いてくるかイメージできるし、今日トレーニングした動きは壁の中だとどういうふうになるんだろうってイメージして取り組むことによって、成長するスピードが上がると考えています」
最後に、普段話していないけど伝えたいことがあれば、せっかくの機会なのでぜひ。
野中「私あります! いつも最初に手本を見せてもらう時、バッチバチに綺麗なフォームなんですよ、当たり前なんですけど(笑)。それを抜けるように頑張りたいです」
竹口「じゃあ、そのメッセージには『一生抜かれないよ』って応えたいですね(笑)。ある意味トレーニングって人と人なので、その時間をポジティブに、楽しめる形でやっていきたいと思っています」
<野中選手も実践している、FLOWINを使ったトレーニングメニューを大公開>
野中生萌も実践!クライマーに効く体幹&関節トレーニング with FLOWIN
FLOWIN(フローイン)とは?
サッカー日本代表・長友佑都選手がオーナーを務める株式会社Cuoreが取り扱う、スウェーデン発のフリクショントレーニングギア。動的な体幹トレー二ングからリハビリのような軽度なトレー二ングまでを1枚で実現できる。また、軽量かつコンパクトに収納できるため外出先や遠征・合宿先にも携帯が可能。欧州のトップアスリート、プロサッカーチーム、リハビリテーションなどの現場で多く導入されている。
<FLOWIN Sport>
FLOWINシートをロール上に丸めて収納できるため、普段使用しない時やお掃除の際などに邪魔にならず使用が可能。専用の収納ケースも付属しているので、移動先、合宿先、遠征先などの用途にも活用でき、マットを広げることの出来るスペースがあればどこでもトレーニングが可能となる。(シートサイズ:約138cm×約98cm、重量:2.7kg、価格:25,000円(税込))
詳細・購入は公式オンラインショップから
CREDITS
インタビュー・文 編集部 /
写真 永峰拓也 /
撮影協力 PUMP CLIMBER'S ACADEMY
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