【パリ五輪】スポーツクライミングの競技ルールを解説! スピード編

 パリ2024オリンピックで2度目の五輪開催を迎えるスポーツクライミング。今大会の実施種目「ボルダー&リード」「スピード」のうち、スピードについて解説していく。

 スポーツクライミングは、ポリウレタン製などの「ホールド」をルートセッターが壁に配置して課題(コース)を作成し、選手はホールドを手がかり、足がかりとして頂点を目指す競技。東京2020オリンピックでは、速さを競うスピード、課題を登り切れた数を競うボルダー(当時の呼称はボルダリング)、どこまで高く登れたかを競うリードの3種目複合で行われ、各種目の順位をかけ算してその数の少なさを競った。パリオリンピックではボルダー&リードの複合とスピードに分かれてメダルを争う。

 毎回同じ壁で同じ課題を登るスプリント種目のスピード(ゆえに世界記録がある)は、大会ごと、ラウンドごとに壁と課題が変わり、攻略法をその都度見出していくボルダー、リードとは異なる性質を持つ。そのため、ボルダーとリードの両方に取り組む選手は多いが、スピードは専門選手がほとんど。パリオリンピックでのフォーマット変更をポジティブに捉える選手や関係者は多い。

スピードとは?

 高さ15m、前傾した95度の壁にセットされた世界共通のコースを登り、「どれだけ速く登れたか」を競う。選手は命綱であるロープを装着し、最上部のゴールパッドに駆け上がっていく。パリオリンピックの出場人数は男女各14人。予選は普段の公式大会と違い、シーディングとエリミネーションという2つのフェーズに分かれている。

 シーディングは、2回の試技を行い速かったタイムを適用してエリミネーションで行う対人戦の組み合わせを決める。シーディングの1位と14位、2位と13位など、順位を合計すると15の数になる組み合わせでレースを行う。その勝者7人と、敗者の中でシーディングを含めて最速だった1人が決勝トーナメントに進出する。通常、スピードの対人戦といえばいくら速いタイムを出しても相手より先にゴールパッドを叩かなければ意味がないのだが、独自ルールのパリオリンピックでは敗れたとしても決勝に進むチャンスがある。決勝トーナメントも対人戦で、準決勝で敗れた場合は3位決定戦に回る。

 勝負は5秒前後で決まるため、スピードはオリンピック最速種目とも言われる。身体能力はもちろんのこと、ミスを減らす安定性や対人戦で相手に動じないメンタルなども必要になる。世界記録は、男子は4秒79、女子は6秒24。近年はホールドをショートカットする様々なムーブが考案されており、各選手のタイムは年々縮まってきている。特に今大会のボルダー&リード日本代表・楢崎智亜が編み出したスタート直後のムーブ「トモアスキップ」は世界的に流行し、ほとんどの選手が取り入れるようになった。

CREDITS

編集部 / 写真 © Jan Virt / IFSC

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