
トレーニング合宿に参加したボルダー日本代表選手とトビー・ロバーツら
W杯新シーズンに向けてボルダー日本代表がトレーニング合宿 パリ五輪金のロバーツも参加
ボルダー日本代表が27日、都内の「livedoor URBAN SPORTS PARK(有明アーバンスポーツパーク)」で4月19日に中国で開幕するW杯シリーズに向けたトレーニング合宿を行った。
合宿にはパリ五輪の男子ボルダー&リード銀メダリストの安楽宙斗や楢崎智亜・明智の兄弟2人、中村真緒や伊藤ふたばらが姿を見せ、そこに日本滞在中の同金メダリスト、トビー・ロバーツ(英国)が特別参加した。壁は東京五輪で使用されたもので、高さも幅も十分にあり、また課題はパリ五輪のルートセットを担当したピエール・ブロワイエ(フランス)や、日本代表からは漏れてしまったもののトップクラスの実力を持つ藤井快らが合宿のために準備した。
代表合宿は複合型スポーツレジャー施設「livedoor URBAN SPORTS PARK」にあるボルダー棟で行われた。普段は一般利用も可能となっている
ウォーミングアップする選手たち
選手たちは午前中に5分間の制限時間によるベルトコンベア方式で実戦を想定した大会シミュレーションを行った。実施の意図について安井博志ヘッドコーチは「普段のトレーニングでは(大会形式の)オンサイトが中々できない。W杯に向けて“トレーニング脳”から“コンペ脳”に切り替えることが必要」と説明する。セッター陣には昨年のW杯で日本人選手が苦戦した傾向の課題や、スペック十分な壁だからこそ可能な横幅を大きく使った課題などをリクエストしたという。
大会シミュレーションの様子
選手たちは東京五輪で使用された壁を登った
壁について関川愛音は「高さがあって距離もあるので、いろんな練習ができる」と印象を話すと、楢崎智亜は「東京五輪の壁ということもあって、今までの合宿の中で一番コンペ感がある。ピエがセットしたこともあり強度の出し方も違った」と過去の代表合宿の中でも印象に残った様子。シミュレーションについて伊藤は「普段のジムで練習していると大会を想定した練習ができる機会があまりない」と話すと、安楽は「どうムーブを選ぶかにフォーカスしてシミュレーションした。もっと感覚を研ぎ澄ませていきたい」と来たるW杯シーズンを見据えていた。
シミュレーション課題を登る楢崎智亜
特別参加したパリ五輪金メダリストのトビー・ロバーツ
テーマを持ってシミュレーション課題に挑んだという安楽
その後は昼食を挟んでチームミーティングとセッショントレーニングを行い、代表チームの交流を深めた。合宿の意義について安井ヘッドコーチは「クライミングは個人種目だが、日本はチーム力で強くなると思っている。そのために合宿は必要で、シーズン前にもう一度自分の能力を知ること、共に日本代表として戦う選手をより知ることが目的」と話した。
チームミーティングの様子
さらに各選手に代表合宿のメリットを聞くと、「トップレベルの選手で集まることで、現状把握ができたり、モチベーションをもらえたり、他の選手のいいところを吸収できる。いつも有意義な練習になる」(伊藤)、「W杯前にこのような環境で練習できるのはすごくいいこと。W杯本番も頑張りたい」(中村)と語った。また、藤井が午後のセッションから姿を見せて自身が設けた課題などを題材に選手たちにアドバイスなどを行った。楢崎明智は「快さんという最前線の選手が教えてくれるなんて、こんなにいい環境はない」と感謝していた。
セッションの様子
今合宿で使用された課題は一定期間残るため、「livedoor URBAN SPORTS PARK」の営業中は一般クライマーも触れることができるという。そしてシミュレーション終了後、ロバーツに合宿参加の感想などを聞いた。
▼トビー・ロバーツ コメント
――日本代表合宿に参加した感想は?
「本当に良いセッションができたと思う。シーズン直前にこういったハードなボルダー課題を試せたのはすごく良かった。今回のようなシミュレーションに呼んでもらえて本当に感謝している。新シーズンに向けて良い準備ができている」
――日本を訪れた理由は?
「ボルダーをもっとトレーニングしたくて、シーズンが始まる前の1か月間は日本でトレーニングしたいと思っていた。日本はボルダーのトレーニングをするのに最高の環境が揃っているからね。主にB-PUMP(荻窪)に通っていて、ハードなボルダー課題にチャレンジしたり、今回のようなシミュレーションもしている。他にも日本には良いジムが多いと思う」
――昨夏のパリ五輪で金メダルを獲得しました。今シーズンの目標を教えてください。
「かなり昔のことのように感じるけど、今は次の目標に向かってリセットした直後だし、今シーズンは前年よりもいいパフォーマンスが見せられるようにしたいと思っている。今シーズンは何といってもボルダーを上達させたい。僕はボルダーの“クレイジームーブ”が苦手なんだ。それを改善して、今シーズンのボルダーW杯では表彰台に立ちたいし、世界選手権でも表彰台を目指したい。当然、好きな種目のリードでも表彰台に立ちたいね」
――その先のロサンゼルス五輪は見据えている?
「まだ実施種目が決まっていないので、どのように練習していけばいいかわからない状況だけど、まずはボルダーを上達させていきたいと思っている」
CREDITS
取材・文 編集部 / 写真 窪田亮
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