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安楽宙斗「頭でムーブを整理できていた」【ボルダージャパンカップ2025|決勝後の選手コメント】
2日に行われたボルダージャパンカップ(以下BJC)男子決勝は、6人から8人へと人数が増え、2人が同時に登るローテーション制の導入、さらに全ラウンドでポイントによる順位付けがされる新ルールが適用された中で、3課題を一撃する見事なパフォーマンスを見せたパリ五輪銀メダリストの18歳・安楽宙斗が男子最年少記録を更新して初優勝を飾った。以下、ファイナリスト8人の主なコメント一覧。
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安楽宙斗(優勝)
「今までW杯で決勝には行くけど、表彰台に乗ったり乗らなかったりと上下が激しかった。今回はBJCで1位を取りたいと思ってオフシーズンに準備してきて、それが実行できたのは重要な経験になった。4課題目は完登しなければ優勝できないことはわかっていた。W杯でも何度かそういう場面があったけど、リザルトばかり気にして『登らなきゃ』という気持ちになってしまい、変なムーブをしたりして決め切れないことがあった。今回は頭ではムーブを整理できていたし、やると決めたムーブを全力でやり切れたところも相まって決め切れたと思う。
僕は感覚で登る派で、よくわからないけど行っちゃおうみたいな感じで1トライ目に何もつかめずダラダラと時間が過ぎてしまうことが多い。今回は1トライ目から大切にすることを強く考えながらトライしていた。1課題目でそれが顕著に出て決め切れたことが優勝に繋がったと思う。(オフシーズンの取り組みは?)基本的なクライミング。コーディネーションとかではなくて、地味なボルダーのトレーニングを続けてきた。1トライ目でミスして落ちるか、全力でいっていろんな情報をつかめるかの違いは大きい。そうするためには焦らないということと、しっかりオブザベをすること。オブザベの能力は選択肢を増やすこととその判断。これは無理だからこっちだと判断するところも練習してきた。(大会へのピーキングにも取り組んでいるが?)BJC前の練習でもとても調子が良くて、疲労を抜く作業をした経験はとても活きたと思う。(疲労を抜くのが)早過ぎたと感じるところもあるので、(最適な)日数をこれから探していきたい」
藤脇祐二(2位)
「今年からW杯に出られる人数が少なくなってしまい、日本は強い国なので代表選考が厳しくなると思って気合を入れていた。無事に代表入りできたので安心している。オブザベの段階ではかなり難しいと思っていたけど、登ってみると意外とどれも登らないといけないような課題だった。1課題目はゴール落ちしてしまったが最終課題でミスを取り返すことができた。僕のクライミング能力は平均的。でも大会での爆発力はあるほうで、大会のが得意な選手だと思う。日本の課題も自分に合っている。僕は感情が出ちゃうタイプ。選手が感情むき出しで『もっと声援くれよ!』みたいな感じで煽ってあげると観客の人も乗ってきやすいのかなと思う。そういうふうに盛り上げたい気持ちもある」
杉本怜(3位)
「予選、準決勝とギリギリの戦いをしていたので、最後はすべてをぶつけて駆け抜けていこうと思って1本1本かみしめながらやっていた。(自身最後のBJCとなったが?)これが最後の課題になるんだなと気持ちが高ぶってくる中、感傷に浸りながらやってしまった部分もあるけど、それでも自分の持てるものは出し切れたと思う。昔に比べて大会は進化して、課題も進化して、毎年ついていくのが大変だけど、今年を最後と決めて、全力で取り組んだ。最後のBJCをこういう形で終えられて、もう少しだけ自分の選手生活を自分で伸ばすことができた。そこは本当にうれしく思う。今年もう一度W杯に挑戦する権利を得られた。自分のキャリアをさらにいい形で締めくくりたい」
杉本侑翼(4位)
「課題に対して攻略するというよりは、攻めの姿勢を取っていくという気持ちの部分を意識して練習してきた。それが活きたので予選、準決勝と決め切らないといけない課題を着実に決められたと思う。壁に滞在する時間が長かったり、課題を見ていろんなムーブの選択肢が浮かんでどれを選んだらいいのか迷ったりして、時間的な問題でできなくなることがよくあった。どうしても出し渋る場面は時間をかけると出力が落ちてきてしまう。力の出せるうちに出すという、気持ちの切り替えの部分。選択は早くしようと心がけていた。昨年リードの練習をしていく中で、力んでいた部分が少しずつなくなった。緩傾斜課題にはさらに対応できるようになったと思う」
楢崎智亜(5位)
「用意してきたものの方向性が少し違った感覚があった。冬にやってきた体のいい感覚だったり、流行りのコンペチックな動きに対する部分でレベルは上がっていると思うが、ベーシックな保持力、持つ力や引く力が少し落ちていると感じる。そこを重点的に練習したい。(決勝はローテーション制となりほとんどの時間で2人が同時に競技したが?)観ている人にとって両方観られる楽しさはあると思うが、決勝らしさが薄くなってしまうのは個人的に残念な部分もある。まったく攻略できない状態が続いた時に他の選手の競技を観られるという面はあるのかなと思うけど、前の(1人ずつ競技する)決勝のほうが自分は好き」
山口賢人(6位)
「3年ぶりに決勝に残れてホッとしている。2週間ぐらい前までずっと調子が悪くて、BJCに出るのも悩んでいたぐらいだった。なんとか1週間前から上がってきて、BJCにピークを持ってこられた。3年前の決勝と比べてメンタルもフィジカルのボリュームも強化してきた。ボディを鍛えた分、繊細な動きは苦手だったので、これからはボディも強化しつつ繊細な動きも強化していきたい」
佐野大輝(7位)
「全部デュアル(ホールド)の課題が出てきたり、テイストもわかりづらかったり、自分が経験したことないような課題が多くて、対応し切れなかった。準決勝はかなり集中できてトライできた。時間の使い方などコンペ力がかなり上がってることは感じたがまだ苦手な部分が苦手なままで残っている。また来年までに特訓できたら。この順位でW杯への派遣があるかわからないけど、今年は楽しみながらいろいろな大会に出たい」
土肥圭太(8位)
「正直、準決勝と決勝の1課題目の1トライ目で出し切ってしまった。足がつったり出血があったりと気持ち的に最後まで持たせることができなかった。悔しいというよりも最後まで戦い抜けなかった感じ。(代表落ちも経験したがどういう思いでBJCに臨んだ?)2年連続で予選落ちだったので、今年も予選で落ちるようだったら引退だと思っていた。悔しいよりも決勝に残れてホッとしてしまった。いい結果を見せることはできなかったので、悔しさよりも申し訳なさみたいなところがある」
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CREDITS
取材・文 編集部 / 写真 窪田亮
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