NEWS 2024/10/22

インタビュー：杉本侑翼【住友商事 presents Enriching+賞】

　JMSCA（日本山岳・スポーツクライミング協会）はこのたび、今後のスポーツクライミングを牽引していく次世代のユース選手の支援を強化していきたいという、ゴールドスポンサーの住友商事株式会社（以下住友商事）からの申し出を受け、「住友商事 presents Enriching+賞」を新設した。住友商事の創立100周年に合わせて策定した同社グループのコーポレートメッセージ「Enriching lives and the world」に込めた想いを受け継ぎ、ステークホルダーと共に未来に向かって新たな価値を“+（プラス）”できるようなコンテンツを発信する公式オウンドメディアの名称「Enriching+」が同賞の冠となった。

　今回は8月に行われたIFSCクライミングユース世界選手権で優勝した6人が受賞した。副賞として日本代表オフィシャルサプライヤーの「THE NORTH FACE」のアイテムも贈られる。CLIMBERSでは各選手に同大会でのエピソードを中心に話を聞いた。本記事では男子リードUnder20で優勝した杉本侑翼選手のインタビューを掲載する。

――リードでの優勝、おめでとうございます。今の気持ちを教えてください。
「いまだに優勝できたことが信じられません。自分はボルダーがメインなので、リードの練習量は他の選手に比べると少なかったと思います。今回はリードのみで代表に選ばれたので、ユース日本選手権が終わってから3カ月ほどは初めて没頭するくらいリードを練習してきました。しっかり自分のすべきことを見つめ直して練習してきたことが優勝に繋がったと思っています」

――ユース世界選手権をどのような大会と位置づけて臨みましたか？
「来年からユースレベルの大会でジュニアのカテゴリーがなくなり、シニアレベルの国際大会ではIF枠がなくなります。国際大会に出場するチャンスが少なくなる中で、自分の持てるすべてを発揮して挑んだ大会でした」

――自分の強みはどこにあると感じていますか？
「一つの強度に耐え続けられる力が武器だと思っています。リードでは6分間の競技時間で常に力を維持し続けることがなかなかできていなかったので、少しでも長く力を出せるようにと練習してきました」

――具体的にどういった練習を？
「ある程度の強度のルートを長く登り続ける練習です。最近は大きいボリュームに小さいカチが付いて繋ぐようなルートが増えているので、指先の保持で5分間登り続けるような持久力を鍛える練習をしていました」

――ユース世界選手権では持てる力を出し切れましたか？
「出し切れました。練習してきたルートがそのまま出た印象があります」

――JMSCAが主催、住友商事が協賛する今回のEnriching+賞は、ユース選手を応援する新しい賞です。受賞した感想を教えてください。
「これまで大会の結果だけを求めて、強くなりたい一心で戦っていたので、このような賞を用意してくださることによってまた違ったモチベーションが生まれるのかなと思います」

――住友商事グループのコーポレートメッセージ「Enriching lives and the world」には未来に向かって「世界を、社会を、そして人々の暮らしを、より豊かにしていく」という意味が込められています。杉本選手が思い描いている未来はありますか？
「選手としてのモチベーションがあるうちは選手としてクライミングを続けていきたいと考えていますが、競技人生が終わっても何らかの形でクライミングには関わりたいと思っています。ルートセットに興味があるので、昨年の冬に資格を取得しました」

――競技人生での目標はありますか？
「2028年のロサンゼルスオリンピックは目指してみたいですね。ただ、自分はまだワールドカップにも出たことがないので、段階を踏みながら、まずは世界で戦い続けられるような選手になるところから目指したいです」

――その目標はボルダーとリードの両方で目指したいですか？
「今はそう考えていますが、学生の時間はそう長くはないので、どこかのタイミングでどちらかに選ばないといけないと思っています。ロサンゼルスオリンピックでの実施種目が3種目それぞれに分かれた場合は、ボルダーかリードのどちらかに絞らないと戦っていけません。今回のユース世界選手権でリードの手応えを感じることができました。今まではボルダーだと断言していましたが、まだどちらを選択するか悩む余地があるのかなと感じています」

杉本侑翼（すぎもと・ゆうすけ）
2006年6月19日生まれ。近畿大学工業高等専門学校所属。24年のユース世界選手権でリード初優勝（Under20）。21年大会にはスピードで3位、23年大会にはボルダーで3位に入っており、各種目で表彰台を経験した。