安楽宙斗が銀! 日本男子でスポーツクライミング初の五輪表彰台 金メダルはロバーツの手に【パリ五輪|男子ボルダー&リード】
9日、パリオリンピックの男子ボルダー&リード決勝が行われ、17歳の安楽宙斗が銀メダルを獲得。日本男子にスポーツクライミング初のメダルをもたらした。金メダルは安楽とユース大会で競い合ってきた英国の19歳、トビー・ロバーツが手にした。銅メダルにはヤコブ・シューベルト(オーストリア)が2大会連続で輝いた。
決勝には準決勝の上位8人が進出。安楽は首位でファイナリストに名を連ねた。先に行われたボルダーは5人が完登発進した。一手ごとに距離のあるこの第1課題を、最後に登場した安楽はあっという間に攻略。この課題初の一撃で25点を獲得し、世界ランキング1位の実力を見せる。
垂壁に設けられたバランス系の第2課題でも安楽は躍動。細かいステップを刻んで慎重に進んでいくと、まるでシューズとホールドが磁石で付いているかのような安定感でホールドを踏んでいく。そしてこの課題唯一となる完登を、残り約10秒で決めた。
パワーが求められる第3課題は、ムーブを起こすのに手間取ると大きく体力を削られていく内容。ここはロバーツのみが登り切り、安楽との1完登差を埋めることに成功した。安楽はゴール下まで近づくも3連続完登はならなかった。
最後は躍動感あふれるコーディネーション系課題。トップホールドまでの距離は2.3mあり、スイングで勢いをつけた上で飛び出し、着地を挟んで2つの小さな穴が開いたポケットに指を命中させるという難関となった。このポケットへのムーブをダフィーが5アテンプト目に完遂。雄たけびを上げて、この課題ただ一人の完登者となった。安楽は完登目前に迫るも指はハマらなかった。ボルダーラウンドは2完登した3人が上位に入り、安楽が69.3点で1位、ダフィーが68.3点で2位、ロバーツが63.1点で続いた。
リードラウンドでは、キャンパシングのパートが複数設けられるなど選手の体力を徐々に奪っていった。しかしリードを得意とする選手が揃ったことで、8人の平均は80.8点と好成績が続いた。中でもリードのスペシャリストとして名高いシューベルトは驚異的な粘りで完登目前の96点まで高度を伸ばす。ボルダーの43.6点から139.6点へと飛躍し、ラウンド前の5位から一気に首位へと浮上。33歳のベテランが出遅れを完全に挽回した。
同じく名クライマーの1人、アダム・オンドラ(チェコ)も登り切る直前の96点で観客を大いに沸かせると、直後に登ったロバーツは完登まで2手となる92.1点を獲得。ボルダーとの合計155.2点でシューベルトを抜き去った。
最後に登る安楽とロバーツは85.9点差で、84点から88点への一手をつかむと金メダルが決まる状況。安楽は着実にムーブを重ねていき、1手につき4点を得られるセクションに突入する。さらに銀メダルへのムーブを決めて、残すは金メダルへの道のみ。しかし、ボルダーでの消耗も影響したのかリズムが悪くなり、80点のホールドに手を出して落下した。
リードのスコアは5位となる76.1点で、合計は145.4点。ロバーツには約10点及ばず、金メダルを譲る結果となったが、大会を通して素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた安楽が銀メダルという素晴らしい結果を日本にもたらした。
<男子ボルダー&リード決勝|総合成績>
1位:トビー・ロバーツ(GBR)
155.2pt(B 63.1pt/L 92.1pt)
2位:安楽 宙斗(JPN)
145.4pt(B 69.3pt/L 76.1pt)
3位:ヤコブ・シューベルト(AUT)
139.6pt(B 43.6pt/L 96.0pt)
4位:コリン・ダフィー(USA)
136.4pt(B 68.3pt/L 68.1pt)
5位:ハミッシュ・マッカーサー(GRR)
125.9pt(B 53.9pt/L 72.0pt)
6位:アダム・オンドラ(CZE)
120.1pt(B 24.1pt/L 96.0pt)
7位:アルベルト・ヒネス・ロペス(ESP)
116.2pt(B 24.1pt/L 92.1pt)
8位:ポール・ジョンフ(FRA)
78.4pt(B 24.4pt/L 54.0pt)
CREDITS
文 編集部 / 写真 長田洋平/アフロスポーツ