【パリ五輪現地レポート】大舞台で見せた森の保持力、耐久力

 8日に行われたパリオリンピックの女子ボルダー&リード準決勝リードラウンドは、1位タイの96.1点を獲得した森秋彩がボルダーとの総合成績で4位に入り、10日の決勝に駒を進めた。野中生萌は総合9位で惜しくも敗退した。野中と男子代表・楢崎智亜のボルダーコーチで、ルートセッターとしての視点も持つ宮澤克明氏が現地からレポートする。

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 女子のルートは、男子のそれとは少し内容が変わり、一手あたりのポイントが切り替わるごとにタイプの異なるセクションが続いた。序盤はクリンプ、その後ポケット、そこからスローパーが配置され距離があるパワフルなセクション、最後は絞り込んでいくという“ファイトスタイル”。

 勝負のポイントとなったのは左から右に流れていく中盤のパワフルなセクションだったように思う。多くの選手が一気にダメージを受けてしまい、登りが崩れていった。レストの取り方も少なからず後半の登りに影響したはず。わかりやすいレストポイントがあるというよりは、流れの中でシェイクを入れていくルートに見えたが、その中でもしっかりとレストして回復をしながら進んでいた選手は後半の登りがうまくつながっていた。クリップポイントは各選手の経験値も試され、そこをスムーズにこなすかどうかも1つのポイントだった。

ルート中盤はパワフルなセクションとなった

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 生萌は大勢がダメージを受けたパワフルなポイントも決して悪くないリズムと登りで通過したように思えたが、やはりレストをしにくいルートの影響もあり下部から蓄積されたダメージがあの一手で露呈してしまった。落ちどころだと感じていた右手で取りにいくダイナミックな一手を止めたことで、これはいけると感じただけに非常に悔しい。

 ヒールなどの選択肢もあった中で、生萌のボルダー力からすればあのムーブは最善だったように思えたが、リプレイで確認すると狙いが少し外れてしまっていた。決勝にはわずかに及ばず、もちろん残念ではあるけれど、昨年の世界選手権からOQS(五輪予選シリーズ)を経て確実に強くなっている生萌のピークはまだ先だと思う。より強い姿を見せてくれることを楽しみにしたい。

野中は惜しくも9位で敗退した

 秋彩ちゃんはさすがリードのスペシャルリスト、という登りで終了点タッチ。どんなルートでもレストを細かく挟んでダメージを溜めず、常に1番落ちにくいムーブを選択できる保持力と耐久力はすごいと言う他ない。中間部は距離のあるムーブがあり、動き出し前に考えるような素振りも見えたが、その後の上部では悪いハンドホールドに対して足自体はポジションもよく配置されていて、むしろ登りの中で回復できているようにも見えた。最後のムーブは手の狙いが外れてしまい悔しい表情こそしていたが、その悔しさは決勝の舞台で完登する姿を世界中に見せることで晴らしてほしい。

 (首位通過した)ヤンヤ(・ガンブレット)は圧倒的なボルダー力を駆使してほとんどのパートで余裕があり、上部も歩くような登りだった。まだまだルートのグレードが上がっても問題ないと感じずにはいられなかった。決勝は各選手が力を出し切れることを願う。

首位通過したガンブレット

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宮澤克明、編集部 / 写真 © Drapella/Virt/IFSC

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