【パリ五輪現地レポート】クライミングIQの高さ光った安楽 決勝はボルダーの点差が重要に
7日に行われたパリオリンピックの男子ボルダー&リード準決勝リードラウンドを終え、安楽宙斗が総合1位で決勝に進出、楢崎智亜が総合10位で敗退となった。楢崎と女子代表・野中生萌のボルダーコーチで、ルートセッターとしての視点も持つ宮澤克明氏が現地からレポートする。
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大きいホールドを土台としてつくられたルートは、ルックスがよく選手の登りが早く見たくなるようなものだった。しかしその見た目とは裏腹に下部から握り込みが強く、足も悪い内容で、登る選手にとっては緊張感のあるルートだったはず。
1つの鬼門となったのは10点を過ぎてすぐのブルークロス付近。ヒール、粒への足送り、トウフックと多くのムーブの選択肢があり、一見、粒への足送りが自然に見えるが足が深く、多くの選手がこの選択でスリップした。ここを越えると見せ場のキャンパ、そして上部突入となるが、そこまで辿りついた選手が少なかったのは少し残念ではある。上部まで進んだ選手の登りは見ていて気持ちが昂る感じで、「THE リード」といった出し切れるルートでよかったと思う。願わくばもう少し上部での登りが見たかった!
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智亜は下部の流れ的にテンポがよく、「これは!」と期待したがやはり多くの選手と同様の場所でスリップ。下部のリズムはよかったがそのままのリズムで危険なポイントを突破してしまおうとしたところに罠があった。あの場面で力を余分に使ってでも最も安全なムーブを探り出し、思慮深くいけていたら……。決勝で戦う姿を見たかった。そこに尽きる。
宙斗はトウフック先行のムーブでそのスリップポイントを突破した。この辺りのムーブチョイス、リスクマネジメントは宙斗らしく、クライミングIQの高さが光った。ダメージも最小限で、その後ヤコブ(・シューベルト)、コリン(・ダフィー)などリードの実力者が落ちたポイントでも余力を感じさせる登り。最後はリード首位のアルベルト(・ヒネス・ロペス)の高度に迫ったが惜しくもフォール。ここでもまだ余力は感じられたので、決勝での登りにも期待できる。
決勝メンバーはポール(・ジョンフ)、ハミッシュ(・マッカーサー)以外は明らかにリードが得意な選手だと思う。準決勝からわかる通り、リードが順当にいくと点差は生まれにくい。だからこそボルダーでの各選手の点差が間違いなくカギになる。ボルダーで頭ひとつ抜けている宙斗には日本人として期待せずにいられない。のびのびとした最高の登りを見せてほしい。智亜の分も、そして日本中の想いをのせて金メダルに向かって頑張れ、宙斗!
CREDITS
文 宮澤克明、編集部 / 写真 © Drapella/Virt/IFSC