忍者の里・伊賀市にスポーツクライミング3種目壁が常設の新アリーナ誕生 楢崎智亜・野口啓代夫婦が式典出席
スポーツクライミング3種目の壁を有する新施設「DMG MORIアリーナ」(三重県伊賀市)の開所式が13日に現地で行われ、パリ五輪代表に内定している楢崎智亜と東京五輪銅メダリスト・野口啓代さんの夫婦2人が出席した。
同アリーナは、三重県が所有していた「ゆめドームうえの」を工作機械メーカーのDMG森精機株式会社が取得および改修工事を行った屋内体育施設。健康づくりやスポーツ振興を図るとともに、地域の交流拠点として1600人の観客を収容できる第一競技場や第二競技場、トレーニング室などを備えており、改修に際して国内最大規模のスポーツクライミング施設などが併設された。オープンは9月30日を予定している。
第一競技場には高さ約14m、幅16mのリード壁が、第二競技場には高さ約15mのスピード壁を挟む形で高さ約5mのボルダー壁が建てられ、合計幅は約30m。新たな壁でデモンストレーションした楢崎は「国際大会基準のポテンシャル。リード壁でこれだけの幅があるのは国内だとなかなかない。課題の難易度は湿度や天気によってかなり変わるが、日本で室内施設は少ないので(こういう施設ができたことは)大きい」と喜んだ。
野口さんも「これだけしっかりとした3種目の壁が、観客が入るアリーナに常設されるのは国内で初めて。今後は国際大会や国内大会がここで行われていくのでは」と印象を述べた。以下、開所式に出席した2人の主な一問一答。
――実際に登ってみて
楢崎「壁のポテンシャルは国際大会基準。室内というのが大きい。課題の難易度は湿度や天気でかなり変わる。なかなか日本で室内の施設というのはない」
――選手強化という面でも大きなポイントになる?
楢崎「国内だとほとんどの選手が一般的な商業ジムで練習している。こういったところでルートセッティングを自由に変えさせてもらったりということがあると、より大会に近い練習ができるので、ユース世代を含めて選手はすごく強くなると思う」
――国際大会がこれから開かれてほしいという言葉があったが。
野口「これまで日本で開かれるW杯は仮設で壁を設置していた(ことが多い)。屋内で観客が何千人と入り壁が常設というところは日本では他にない。2019年の世界選手権では八王子のアリーナをお借りして壁を建てて、大会後には解体していた。今後はここで国際大会や国内大会が行われていくのでは」
楢崎「壁の幅もある。国内のリード壁は幅が狭いことが多く、そうなるとやっぱり“日本っぽい課題”になる。(幅が広いと)海外でのW杯のように大きなハリボテをたくさんつけて、横移動するといった動きができる。ヨーロッパでの課題はダイナミックであったりパワフルであったり。課題のテイストが変わると思うので楽しみ」
――その他印象に残ったことは?
楢崎「少し3Dというか、ただの“ツラ”というよりは、ちょこちょこ切り返しがあったりと多面で、複雑な動きになったりして面白そうだなと思う」
野口「私もやっぱりリード壁がすごいと思う。最終面の傾斜が(強く)なくて、ヨーロッパの壁にすごく似ている。日本には高さがありつつも最後に傾斜がない、ジワジワ動くような壁ってあまりない。そういった壁での練習はこれまで国内ではできなかったので、日本人選手がここでトレーニングできればW杯の対策にもなるはず」
――全国にクライミング施設が増えていくことについては?
楢崎「うれしい限り。以前は日本代表選手のほとんどが関東の選手ということもあった。今はいろんな地方から代表選手が出てきている」
野口「近年は大きなリード壁や3種目の壁が建ってきている。ボルダーだけでなくリードも、もっともっと練習しやすい環境になるんじゃないかなと思う」
――今後、この施設に期待することは?
楢崎「より大会に近いトレーニングができると思う。代表合宿や大会が行われるのがすごく楽しみ」
野口「ぜひ大会やイベントで一緒に盛り上げていきたい」
CREDITS
写真・取材 窪田亮 文 編集部