金3、銀3、銅2 パラクライミング日本代表が世界選手権でメダル8個獲得
パラクライミング世界選手権の予選・決勝がスイス・ベルンで、8、10日に行われ、日本勢が男女を通じて金3、銀3、銅2のメダル8個を獲得した。
予選は8日に開催され、男女障がい別の17クラスに世界から183人のパラアスリートが集まった。このうち日本からは16人の選手が参加し、決勝には9人が進んだ。決勝は現地時間10日13時にスタート。4つのライン(ルート)が用意され、まず男子RP1の岡田卓也がラインDに挑んだ。身体を思うように動かせない岡田は、下部をスムーズにこなし、130度の傾斜帯でも壁から身体を離すことなく粘り強い登りをみせて3位となった。男子B1の會田祥は、多くの観客が注目する中でラインAに手をかけた。視覚障がいの會田は手足の感覚でデュアルホールドのフリクション面を探しながら上部へと進む。130度の傾斜帯を越え、トップまであと数手まで迫り1位を決めた。
女子B3の決勝進出者は3人のうち2人が日本人選手だった。この3人の勝敗は核心部となる29手付近で順位が決まった。江尻弓はスローパー気味の28手から手を出したが29手には届かず3位に。次に登場したインドのスニタは29手を保持し足をうまく拾って次への一手を出すが、30手目を保持することはできなかった。予選1位の前岡ミカは小柄ながら力強い登りで核心部へ迫り29手をホールド。しかしそこからムーブを起こすことはできず、スニタとの僅差で2位となった。
男子B2の濵ノ上文哉は、男子B1と同じラインAを登った。このラインの後半は厳しいムーブが連続するが、濵ノ上は最終セクションまで高度を伸ばす。2位となった英国のリチャードがフォールした35手で、濵ノ上は左膝をフットホールドにロックして36手まで身体を引き上げ1位を獲得した。
男子B3では蓑和田一洋がルーマニアのコスミンとともにラインBを完登。予選の結果から2位になった。男子AU3の安良岡伸浩が登ったのは完登者の少ないラインAとなった。安良岡の右手は親指しかないが、それを感じさせないスピードのある登りで130度の傾斜帯を越え、最終セクションへと入る。障がいのある右の手のひらをうまく使い、ゴールまであと2手ほどまで迫り2位となった。
日本人として最後に登場したのは男子RP3、左足を自由に動かすことができない高野正だった。高野が登ったラインBは4ライン中、もっとも難易度が高い課題だと思われる。高野はこの難しいラインの途中で観客に声援をアピールする余裕をみせるなどして上部へと進む。最終セクションに入った高野は「自分がどう登っていたのか思い出せない」と語るほどの集中力のある登りで優勝を決めた。
なお、世界選手権において會田は2012年のパリ大会以降5個目の金メダル、濱ノ上は2021年モスクワ大会に続く2個目の金メダルとなった。また本大会の国別順位で日本は米国に続く2位となり、日本のパラクライマー勢の強さをあらためて世界に印象付ける結果となった。
<日本人選手結果>
【視覚障がい】
[男子B1]
1位:會田祥(田中星司)
[男子B2]
1位:濵ノ上文哉(松田晶)
[男子B3]
2位:蓑和田一洋(蓑和田麻樹)
6位:江尻元洋(宮本容幸)
[女子B2]
7位:青木宏美(小島理瑚)
[女子B3]
2位:前岡ミカ(小島理瑚)
3位:江尻弓(伊藤勝啓)
※()内はサイトガイド
【機能障がい】
[男子AU3]
2位:安良岡伸浩
[男子AL1]
5位:平井亮太
7位:畠山直久
[男子AL2]
6位:結城周平
[男子RP1]
3位:岡田卓也
10位:大谷武彦
[男子RP3]
1位:高野正
[女子AL2]
9位:渡邉雅子
[女子RP1]
14位:加藤あすみ
CREDITS
文 蓑和田一洋(パラクライマー) / 構成 編集部 / 写真 © Lena Drapella/IFSC