安楽宙斗、楢崎明智がワンツー! 16歳がW杯初V、年間優勝も決める【ボルダーW杯2023 第6戦インスブルック大会】
クライミングW杯ボルダー最終第6戦の男子決勝がオーストリア・インスブルックで16日(日本時間17日)に行われ、1位に安楽宙斗、2位に楢崎明智が入り、日本勢がワンツーフィニッシュを果たした。16歳の安楽は出場6戦目で初優勝を遂げ、W杯初参戦のシーズンながらも年間優勝に輝く快挙となった。
15日の予選は通谷律がグループAを、楢崎明智がグループBを首位通過するなど日本勢6人が準決勝に進出。16日の準決勝は結果的に2完登すれば決勝行きが決まるという低い完登率の中で、3完登の楢崎明智が2位、2完登の安楽が6位でファイナルに駒を進めた。年間ランキングで上位につける楢崎智亜、イ・ドヒョン(韓国)、トビー・ロバーツ(イギリス)はいずれも準決勝で敗退したため、安楽は2位以上となれば年間優勝に届く状況で決勝を迎えた。
決勝第1課題は壁に背を向けたスタートからシングルダイノを繰り出す豪快なムーブが観客を沸かせる。先頭の安楽、チョン・ジョンウォン(韓国)は1アテンプト、ニコラス・コリン(ベルギー)、サム・アベズー(フランス)は2アテンプト、楢崎は1アテンプトと5人とも少ないトライで完登する。最後に登るシモン・ロレンツィ(ベルギー)は準決勝で唯一全4課題を完登する絶好調ぶりだったがスタートからのムーブに迷い予想外のノーゾーンに終わった。
第2課題、安楽は足の置き先がない中でうまく体を引き上げていき、1トライ目に完登直前まで迫る。これは失敗したもののうまく修正して3トライ目に完登した。後続の選手たちは見えづらい位置にあるゾーンホールドを何度もとらえようとするがつかみ切れない。単独完登となった安楽が他5人を突き放した。
第3課題は踏みにくい足場が続く緩傾斜壁で、体を観客側に一度反転、さらに反転させてゾーンを取りにいく内容。安楽はゾーンを取りにいくのが精一杯で、チョンは反転しないアプローチを選択し突破できない。すると4番手のアベズーが見事2トライ目にゾーン獲得、そしてトップホールドをつかみ取った。続く楢崎は残り10秒を切ってからゾーンを獲得し、残り時間わずかでトップホールドをマッチ。上位進出に向けて大きな完登となりガッツポーズを繰り出した。第3課題終了時点で3人が2完登で並び、アテンプト数の差で1位から安楽、アベズー、楢崎と続いた。
最後はスタートからゾーンまで一気に進むコーディネーション課題。安楽は徐々に感覚をつかんで7トライ目にゾーンに達すると、ゴール取りも冷静に決めて3完登目。表彰台は確定、メダルの色はアベズーと楢崎の成績次第となった。アベズーは6トライ以内の完登で安楽を抜くことができたが10回以上試技を重ねてもコーディネーションムーブは決まらず。安楽の2位以上、そして年間優勝が確定したあと、楢崎は優勝のための3トライ以内での完登を逃してしまったが、それでもゾーン獲得で2位という条件をクリアし、そのまま完登して自ら銀メダルという結果を手繰り寄せた。
これで日本人選手によるワンツーが達成された。W杯初参戦の安楽は初優勝、楢崎は2017年6月ベイル大会以来のW杯表彰台で自己最高タイの2位。JMSCA(日本山岳・スポーツクライミング協会)の五輪強化Sランクで8月の世界選手権代表にも内定している2人が最終戦で表彰台に並び、会場には君が代が鳴り響いた。そして安楽は楢崎智亜、イ・ドヒョンらを抜いて年間ランキングでも首位に立ち、ボルダーシーズンを締めくくった。現地時間翌日の17日9時(日本時間17日16時)からはリード第1戦男女予選が行われる。
<決勝リザルト>
1位:安楽 宙斗(JPN)/3t3z 11 9
2位:楢崎 明智(JPN)/3t3z 15 11
3位:サム・アベズー(FRA)/2t2z 4 3
4位:チョン・ジョンウォン(KOR)/2t2z 6 6
5位:ニコラス・コリン(BEL)/2t2z 7 7
6位:シモン・ロレンツィ(BEL)/0t0z 0 0
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7位:緒方 良行(JPN)※準決勝進出
11位:楢崎 智亜(JPN)※準決勝進出
12位:通谷 律(JPN)※準決勝進出
15位:藤井 快(JPN)※準決勝進出
25位:佐野 大輝(JPN)
50位:小俣 史温(JPN)
CREDITS
文 編集部 / 写真 © Jan Virt/IFSC