女子表彰台に上がった(左から)グロスマン、ガンブレット、野中

ガンブレットが圧巻の全完一撃で完全復活 野中は銅メダル【ボルダーW杯2023 第6戦インスブルック大会】

 今シーズンのクライミングW杯ボルダー最終第6戦女子決勝が15日(日本時間16日)、オーストリア・インスブルックで行われ、4課題すべてを1アテンプトで攻略する圧巻のパフォーマンスを見せたヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)が優勝。日本勢は野中生萌、森秋彩、伊藤ふたばが決勝を戦い、野中が3位で銅メダルを手にした。

 14日の予選は野中、森、伊藤、青柳未愛の日本勢4人が通過。15日の準決勝は伊藤が2位、野中が3位、森が6位に入りファイナリストの半数を日本女子が占める形となった。その他の3人はブルック・ラバトゥ、ナタリア・グロスマン(いずれも米国)、ガンブレットで、いずれも決勝常連でハイレベルな戦いが予想された。

 決勝第1課題、先頭の森はスタート地点までのジャンプが中々届かず、7度目のアテンプトでようやくスタートを切り歓声が上がる。しかしゾーン取りに失敗してしまった。グロスマン、ガンブレットはスイングから始まる一連のムーブを難なく決めて一撃。4番手の野中も途中迷いは見せたがフラッシュで続いた。伊藤は1トライ目でゾーンに達するもマントルを返せず、高負荷のかかるこの課題で時間を要してしまい力尽きる。最後のラバトゥはスタートの4点支持が認められなかったものの3アテンプト目に完登した。

 緩傾斜の第2課題はスラブを得意とする森が細かいホールドや滑りやすい足場にも容易に対応して一撃。グロスマン、ガンブレット、野中は再びノーミスでスコアに完登を刻んだ。伊藤は足使いに苦戦する中で何とかゴール取りに迫るも最後の一手が決まらず。ラバトゥは2トライで完登した。

 第3課題。森は距離出しが足りず、またもランジが決まらずに第1課題同様ノーゾーンで終わってしまう。グロスマンも同じシングルダイノで失敗を重ねたが、左手を残しながらムーブを起こしたことで難所を突破。時間が迫る中、急いでトップホールドまで到達するもタイムオーバーで完登は認められず。微笑みから一転、表情を曇らせた。ガンブレットは両手を素早く駆使したコーディネーションで一気にゾーンまで進む驚異の身体能力を見せるとそのまま完登。3連続フラッシュと躍動した。野中はゾーン止まり、伊藤、ラバトゥはノーゾーンで、この結果ガンブレットが3完登で抜け出した。

 第4課題は全体的に距離のあるホールド配置。森は2トライ目にランジを成功させ、スイングからピタりと着地する非凡さを見せるも頂点には届かなかった。グロスマンはトップに迫るも落下。少ないトライでゾーンを獲得すれば優勝のガンブレットは1トライ目に悠々とその条件をクリア。ゴール取りの場面でも冷静に右のトウフックをかけ直し、高い位置を確保して着実にトップホールドを手中に収めた。東京五輪の女王はW杯シーズン前に左の親指を負傷。リハビリなどを経て第4戦で復帰すると銀メダルを獲得、そして今回ケガを乗り越えての優勝に涙を流しながら沸き起こる歓声に応えた。

 その後、野中、伊藤はゾーン止まり。野中が暫定3位の中、トリを飾る暫定4位のラバトゥは完登で2位に浮上する状況だったが失敗に終わり、野中の銅メダルが決まった。2位はグロスマン、4位はラバトゥ、5位は森、6位は伊藤だった。

 これで今シーズンのW杯ボルダー女子は全日程が終了。年間ランキングでは首位だったグロスマンが逃げ切って年間3連覇を達成した。2位には第5戦終了時の4位から浮上した野中がランクインしている。日本時間16日午後には男子の準決勝、同17日未明からは決勝が行われる。日本勢は予選各グループで首位発進した通谷律、楢崎明智など6人が準決勝に駒を進めている。

<決勝リザルト>

1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/4t4z 4 4
2位:ナタリア・グロスマン(USA)/2t4z 2 11
3位:野中 生萌(JPN)/2t4z 2 13
4位:ブルック・ラバトゥ(USA)/2t3z 5 11
5位:森 秋彩(JPN)/1t2z 1 3
6位:伊藤 ふたば(JPN)/0t3z 0 12
――――――
14位:青柳 未愛(JPN)※準決勝進出
21位:関川 愛音(JPN)
33位:松藤 藍夢(JPN)
64位:中川 瑠(JPN)

※左から順位、氏名、所属国、成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

CREDITS

編集部 / 写真 © Lena Drapella/IFSC

※当サイト内の記事・テキスト・写真・画像等の無断転載・無断使用を禁じます。

back to top