森秋彩「もっと強いクライマーになれるように」【ボルダー&リードジャパンカップ2023】女子決勝後の選手コメント
1、2位がスポーツクライミングの世界選手権代表に内定するボルダー&リードジャパンカップ(8、9日=鳥取県立倉吉体育文化会館/倉吉スポーツクライミングセンター)。女子は19歳の森秋彩(あい)が前身大会のコンバインドジャパンカップ2022に続く2連覇を成し遂げ、2位の松藤藍夢とともに世界選手権代表に内定した。同選手権のボルダー&リード種目で表彰台に上がるとパリ五輪の出場権を手にできるため、2人はパリ行きが一歩近づいた形となった。
一方、東京五輪銀メダリストの野中生萌、今年のボルダージャパンカップ(以下BJC)を制した伊藤ふたばは今大会での世界選手権代表内定はならず、今後2種目のW杯に出場し、その成績で残り3つの同選手権代表枠を争うこととなった。以下、女子決勝を戦ったファイナリスト8人のコメント一覧。
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森秋彩(優勝)
「ボルダリングでいいパフォーマンスができなかったけど、得意のリードで挽回できた。リードは壁の形状が最後に緩くなっていて、珍しく上部で腕への負担が減ると思った。自分は緩傾斜のバランシーな動きが得意なので、完登できるかなと思っていた。最終面に入る前の一手が少し遠くて疲れたけど、その上でうまく重心移動してプッシュしながら休めたので、腕の疲労感をあまり感じずにゴール取りの遠い一手を全力で出せた。腕の余力的に限界ではなかった。最後は風もあって気持ち良かったし楽しかったし、ゴールを取れた時は安心してうれしかった。最終面に入ってから、一手一手すごく歓声が大きくなっていって、ここはまだ誰もたどり着いていないところなんだなと気付いた。この大会の最後の最後だったし、完登で気持ちよく締めたいと思っていた。応援が力になった。
世界選手権の切符を手に入れられたので、そこに向けてリードは持久力を伸ばしつつ、苦手なダイナミックな動きを克服して、そこで身に付けた突破力を生かしてもっと強いクライマーになれるようにトレーニングしたい。(大学に通う中で4月からのW杯はどう参戦していく?)なるべく授業は休みたくないので、できれば休みに重なればいいけど、今のところは八王子、ソウル、インスブルック、あとは大学が7月後半から9月まで休みなので、その間の大会はなるべく出られたらと思っている」
松藤藍夢(2位)
「ボルダーでポイントを稼ごうと思っていて、実際に全完登できたので良かった。今年はBJCの決勝の舞台であまり自分の実力が出せず悔しい思いをしたので、今回4完登という力を見せられたので良かったと思う。表彰台に乗れるとは思っていなかったので今は正直びっくり。世界選手権に出られることにも驚いている。ボルダーで勝ちたいと思っているので、ボルダーしか練習しておらずリードは持久力がまったくない。これからはリードの練習量も上げて両種目強くなれればいいなと思う。(リードでも争う今大会への出場のきっかけは?)そもそも大会経験が少なく、どんな大会でもいいからボルダーで実力を出せる大会を増やしていきたかった。正直、世界選手権のことは全然考えていなかった」
野中生萌(3位)
「日本独自の選考ルールで2位までが世界選手権の枠を手にできる中、そこを逃してしまい、とても複雑な気持ちだが、すべてのジャパンカップで表彰台に上がれたことはポジティブに受け止めているので、国際大会で爆発したいという思い。(W杯初戦の)八王子からいい流れを作って世界選手権に向かっていきたい。これまで低いところから上がっていった経験もあるし、あまり不安に思わずにしっかりできることを1大会1大会繋げていって世界選手権に繋がればいいなと思う。
(ボルダー第3課題の完登後に大きなガッツポーズが出たが?)2課題目でずっと足のスリップで落ち続けてしまい、リードにうまく繋げるにはうまくこなしていかないといけない状況で(得意の)フィジカルの課題、難易度の高い課題を落とせたのがうれしくてあの反応になった。(最近のリード課題はランジが減るなどの変化を感じるが?)リードは淡々と持久力で勝負する課題が出てきている。今回は前腕で絞り出せる体力が残っているところムーブで落ちてしまった感じがあり悔しかったが、練習成果の手ごたえは感じているので引き続き頑張りたい」
伊藤ふたば(4位)
「世界選手権の出場権が懸かっていた大会でそこを狙っていたが、リードで出し切る前に落ちてしまい、今は悔しい気持ちでいっぱい。リードの落ちた一手は前腕的にはまだ余力があったが理不尽な足位置で、うまく引けずに取り先もガチャガチャしてしまいうまく取れなかった。ムーブで振り落とされてしまった印象で、まだ行けたなと感じていて悔しい。(世界選手権出場のために2種目のW杯にどう出場していく?)ボルダーはほぼフル参戦する予定で、リードは(7月7~9日の)シャモニーまでが(日本における世界選手権出場の)選考対象なので、そこまでは出ようかなと思っている」
小池はな(5位)
「今大会は決勝に残ることが難しいくらいのメンツだったので、『失敗してもとりあえず頑張ってみよう!」というスタンスで臨んだ。でも心の隅には『決勝に残りたいし、2ラウンド楽しみたい』という気持ちが少なからずあった。出場するにあたり膝のケガが悪化していく一方で、できないことも多かったため棄権するか2回ほど悩んだが決勝で戦えてとても楽しかった。満足はできないけど出るという決断をして本当に良かった。ケガのせいにはしたくないので、今回の結果は自分の実力不足として捉えてW杯までに計画的にトレーニングをしようと思う。
(感じた手ごたえと課題は?)リード決勝の上部で自分特有の粘りが良い感じに出たなと思う。けれどもっと出し切れたはずなので、そこが自分がさらに伸ばすべき点だと感じた。(今後の目標は?)今シーズンもボルダーとリードともに代表入りすることができてひとまずホッとしている。今年はリードW杯メインで頑張りたいけど、世界選手権がある年なので、ボルダーも上手にトレーニングに組み込みながら、昨シーズンよりも良い結果を残したい」
中川瑠(6位)
「今大会は世界選手権の出場権を取るつもりで出場していたので、大会を終えて悔しい気持ちが強い。けれどリードでは最近粘って手を出す登りができていなかったところ、今回は粘って限界から数手伸ばすことができて成長を実感できた。ボルダーでは強度の高い課題になると何もさせてもらえないことが多く、特にボディで抑える課題はまだまだ足りないところが多いと思った。今後はボルダーもリードもW杯には参戦できるので、決勝でトップ選手たちと戦っていきたいし、両方でしっかり結果を残して世界選手権を狙っていきたい」
久米乃ノ華(7位)
「今大会には世界選手権の出場権獲得を目指して臨んでいたが、決勝ではボルダー、リードともにムーブの選択ミスが目立ってしまった。最近同じ負け方をすることが多いので、足りない部分の強化を図っていきたい。手ごたえを感じる登りはできなかったけど、ボルダーの最終課題を登れたことはその後のリードに向けてメンタル的にも大きかった。今年は初めてW杯に出場できそうなので、成績を残せるように頑張ります」
永嶋美智華(8位)
「BJCはいい結果が出た感じだったけど、LJC(リードジャパンカップ)は予選でミスをして準決勝にすら行けなかったので、この大会で悔しさの埋め合わせというか、リベンジができた感じがして、出て良かったなと思う。コンペのルートはコンペでしかできない貴重な体験なので、今回のルートも登ることができて良かった。
(ボルダリングとリードどちらが得意?)練習はほとんどボルダリングをしているが結果を見るとリードのほうが得意な気がする。(得意と苦手なムーブは?)カチなど指先を使う動きが好きで、距離を出したり、ボリュームのあるホールドが苦手。(実力が上がってきている感じる部分はある?)大会の雰囲気がユースとはまた違っていて、その中で自分をコントロールできるようになってきた気がする」
CREDITS
取材・文 編集部 / 写真 窪田亮