WORLDクラスを制したのは愛知県出身の佐野大輝と石井未来。「応援の声も力になった」と声援を送った観衆への感謝を口にした

佐野大輝、石井未来がCW-X協賛の関西ボルダリング新コンペで優勝【Baby game 2023 レポート前編】

 3月11日、滋賀県大津市の琵琶湖畔にあるボルダリングジム「ロックメイト大津店」で新コンペティション「Be a better you game 2023」(以下Baby game)が行われた。300人近くが参加した大会の模様などを前後編に分けてレポートする。

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 大会はロックメイトが主催し、下着会社ワコールの展開するコンディショニングウェアブランド「CW-X」が協賛する形で行われた。大会名にもなった「Be a better you(より良い自分に)」は、“一人ひとりが成長できるように”という想いが込められたCW-Xのスローガンで、それぞれの頭文字を取った「Baby game」が略称で使用された。会場内にはCW-Xの試着スペースも設けられた。

CW-Xの試着スペース

 延床面積が964㎡とボルダリングジムとして国内最大級の広さを誇る店内には、時長武史、笠原大輔、若宮京介、水口僚、野村真一郎の著名セッター5人を中心としたチームによる特別課題(予選65本、決勝20本)が付けられた。出場者は最上位の「WORLD」を筆頭に「EXPERT」「MASTER」「MIDDLE」「ROOKIE」「U-8」「U-10」などレベル別あるいは年齢別に用意された男女合計17の各クラスに参加。当日は子どもやその保護者、大人まで多くの一般クライマーが来場し、受付には長蛇の列ができるほどだった。大勢でにぎわう場内では、課題ごとに割り振られたポイントの合計点の高い上位3人がセッション方式の予選を勝ち抜き、2課題を登る決勝を戦った。

受付後、参加者たちはすぐに課題を見て回っていた

セッション方式の50分間×2ラウンド制で行われた予選

 今大会の特徴は「全カテゴリー共通の予選課題」「2ラウンド制の予選」「ボーナスタイム」にある。まずは「全カテゴリー共通の予選課題」について。他のコンペではカテゴリーで課題が分かれていたり、一部が重複していたりすることが多い。福本洋一郎店長に話を聞くと「課題を見渡した時に『あれ登ってみたい』と思うことってあると思います。それを制限したくなかったし、まったくできない課題に遭遇した時、他に選択肢が多いほうが気持ちが楽になるのではと考えました」とその意図を説明した。

 「2ラウンド制の予選」については「満足して帰ってほしいから」。50分間×2ラウンド制にすることで「壁にいる時間を少しでも長くして、しっかり疲れて帰ってもらう。それが満足度向上につながると考えています」と話した。WORLDクラス優勝の佐野からは「1ラウンド目が良くなかったけど、2ラウンド目が始まるまでに仲間たちと会話できて、うまく切り替えられたことで完登率も高くなった」という声も挙がっている。そして一部の時間帯は「ボーナスタイム」となり、獲得ポイントが倍になる。福本店長は「(同様のルールを導入したロックメイトのコンペで)意外な決勝の組み合わせになったり、まさかの順位になったりすることがあって、戦略的な要素が高まって面白い部分が大きいと思っています」とした。

コンペでは避けられがちなコーディネーション系課題にはCW-Xアドバイザリーパートナーであるイチロー氏の写真が付けられ、他課題よりも高いポイントが設定された

 競技の展開に目を向けると、決勝はクラスを問わずに歓声が上がり、最後に行われたWORLDクラスの男女決勝でこの日の盛り上がりは最高潮に達した。予選を勝ち上がったのは男子が清水裕登、杉本侑翼、佐野大輝、山口賢人(佐野と山口が3位タイ通過のため計4人)、女子が谷井菜月、中村真緒、石井未来で、シニアまたはユースで日本代表経験のある選手たちが最終決戦に臨んだ。

決勝はクラスを問わずに歓声が上がった

男子のWORLDクラスで首位通過した清水

 男子第1課題は下のクラスのEXPERT決勝第2課題に用いられ、完登ゼロに終わった難関。しかし先頭の佐野が序盤の遠い一手を止めると、フィギュア4を駆使するなどして登り切り、後続3人もそれに続いた。女子第1課題はルーフの背中側に飛び出す初手を石井が攻略してトップホールドに到達。その後、完登が遠い中村、谷井に対して大きな声援が送られ、苦戦する初手を最終トライで止めた谷井が最後のホールドにたどり着いた。

フィギュア4で足の置き所をつくった佐野

距離のある初手を捉える石井

女子予選1位の谷井が完登に迫る

 男子で最後に待ち受けていたのは、最も時間を要してセットされたという強傾斜課題。しかし佐野は高い保持力とプッシュ力で見事に完登。間近で見守っていた観客を沸かせると、その後の3人はいずれも失敗に終わり、唯一の2完登で優勝が決まった。佐野は「他の選手は足が切れていた中、自分は切らさないイメージで行けたこと、課題もプッシュ系で自分の得意系だったのが良かった」と同課題を振り返った。女子はゴール取りが難しく、何度か完登に迫るシーンが生まれたがすべて場内のため息に変わり、石井が1課題目の完登に要したアテンプト数の差で逃げ切った。石井は「優勝できたけど、2回もゴール落ちしてめちゃめちゃ悔しい」と苦笑いだった。

決勝第2課題を登る佐野。多くのクライマーが声援を送った

佐野は2連続完登で会心のガッツポーズを繰り出した

この後のゴール取りに失敗してしまったものの、石井が逃げ切って優勝した

 Baby gameの開催に向けて、ロックメイトは「当日をどれだけ楽しみにしてきてくれるか。そこを最初に考えました」という福本店長を中心に、YouTubeでのトレーニングドキュメント動画投稿、特設サイトでのコンテンツ制作など大会を盛り上げるために数々の施策を打ち出してきた。「クライミング界の発展のためにも、新たな企業を巻き込んでいくことが必要で、企業さんからの期待にも応えていかないといけない。今回そういうチャレンジができたのは大きかった」と話した福本店長。コロナ禍で長らくこうした大規模コンペは開催できなかったが、「盛り上がっている様子を見て、やって良かったなと。素直にそう思います」とひと言。コロナ前の熱気が、クライミング界にも徐々に戻ってきている。

決勝リザルト(WORLDクラス)


【男子】
1位:佐野 大輝
2位:杉本 侑翼
3位:清水 裕登
4位:山口 賢人


【女子】
1位:石井 未来
2位:谷井 菜月
3位:中村 真緒

「Be a better you game 2023」大会特設サイト
「CW-X」公式サイト

CREDITS

取材・文 編集部 / 写真 牛島寿人

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