野口啓代が「瀬戸内JAM」に参加。東京五輪のエピソードなど語る ボルダリングの聖地「王子が岳」視察も

 “ボルダリングと音楽の祭典”として岡山県玉野市などを舞台に例年開催されている「瀬戸内JAM」が2月23日、瀬戸内海に面する同市の宇野港で行われ、東京五輪スポーツクライミング女子複合銅メダリストの野口啓代がゲストとして登場。トークセッションとミニボルダリング教室に参加した。

 2018年にスタートした瀬戸内JAM。第4回を迎えた今回は、地産地消の飲食や物販を楽しめるマルシェ、岡山県出身アーティストらが出演する会場ステージが設けられ、入場時の検温やアルコール消毒などのコロナ感染対策が施された上で実施された。この日の注目ゲストとして招かれた野口は、午前のトークセッションに瀬戸内JAMをプロデュースするCS放送スカイAの小田部拓氏、岡山県内にクライミングジム2店舗を展開する「rocks CLIMBING GYM」代表の柳瀬昭史氏、司会を務める「一般社団法人デスティネーションせとうち」の小林弘昌氏と登壇。はじめに東京五輪のメダルを披露し、集まった大勢のギャラリーから労いの拍手を受けた。

東京五輪のメダルを披露する野口

 その五輪について野口は「一番得意なボルダリングでうまくいかず、メダルは絶望的だと思ったが、今まで頑張ってきたものすべてを出し切り後悔なく終わりたいという気持ちで(最終種目リードを)登り、逆転することができた。競技人生の集大成の場で最後まであきらめない気持ちを出せたので、すごく良かったと思う」と振り返ると、2014年からクライミングの大会放送などを手がける小田部氏は「コロナの影響で五輪開催が危ぶまれた中でもずっとモチベーションを保ち続けたこと、苦手なスピードやコーディネーション課題を克服した対応力。この2つがメダル獲得の原動力になったのでは」とレジェンドの“強さ”を称えた。

野口は司会の小林氏(ステージ上の左から1人目)、小田部氏(同3人目)、柳瀬氏(同4人目)とともに登壇した

 「少しの工夫で、今まで登れなかった課題を登れるようになる」とクライミングの魅力もアピールした野口は、最後に未来ある子どもたちに向けて「子どものうちはいろんなものに出会う幅が広い。今日のようなボルダリング体験から五輪の金メダリストが生まれる可能性もある。たくさんのことに挑戦してほしいし、自分の好きなもの、『これだけはあきらめられない』というものを見つけて、頑張ってほしい」とメッセージを送った。

 野口が加わった午後のミニボルダリング教室は、彼女の参加時間に対する申込受付にイベント開始10時から長蛇の列ができるなど注目度が高く、野口は日本代表・渡部桂太とともに「先に足を上げて」「手を持ち替えよう」などと声をかけながら、子どもが中心となった参加者に休む間もなく親切丁寧な指導を行った。ボルダリング体験会は終始人気で、野口の教室時間前後も仮設壁には絶えず人だかりができ賑わっていた。

 盛況のうちに終了したイベント前の当日朝、野口は前出の柳瀬氏の案内のもと、玉野市と倉敷市にまたがる「王子が岳」を視察。優れた景観と環境、そして40年以上前から登られていることから「ボルダリングの聖地」と呼ばれる岩場を訪れた。市街地から車で30分ほどで到着できる同エリアでは、眼下に瀬戸内海の絶景が広がる中でクライミングを楽しめる。

王子が岳からの瀬戸内海の絶景を望む野口

 シンボルである「ニコニコ岩」や初めてこの地に作られた課題「ムーンライトエプロン」(5級)などを巡った野口は「日本に海岸の岩場はあるが、山の岩場で近くに海がある場所は珍しい。アプローチしたり、岩を見ていたりするだけでも気持ちが良い」とそのロケーションを絶賛した。

普段から王子が岳を訪れているという柳瀬氏(右)がガイドを務めた

渡部と王子が岳のシンボル「ニコニコ岩」の頂上で

 ジムに通うお客さんを募り、普段からこの場所を訪れているという柳瀬氏によれば、王子が岳には200本ほどの課題が点在。「今日クライミングを始めたという方でも楽しめる課題があるし、近年開拓された三段や四段という高難度課題も登れる。幅広い層のクライマーにおすすめできる」と話した。岩質は花崗岩で、「1つ1つの粒子が大きくて、こんなに粗い花崗岩を見たのは初めて」と花崗岩が好きだという野口も驚きの表情。駐車場から各スポットまでの距離は短く、また遊歩道は整備され、アプローチも快適。野口は「遠征してでも来る価値があると思う。次に来た時は絶対に登りたい」と、短時間滞在となった王子が岳との別れを名残惜しんでいた。

野口は「粒子が粗い分、指皮にはやさしくないけれど、足の踏み位置は見つけやすい」と次回の訪問を待ち遠しそうに話した

整備された遊歩道。トイレも設置された駐車場から課題のある各スポットまでの距離も短い

 今回の瀬戸内JAMでは、この王子が岳のガイド付きハイキングツアーも企画された。多くの人がクライミングに触れる機会を提供している瀬戸内JAMの、今後の開催も楽しみだ。

「瀬⼾内JAM」公式サイト
https://setouchi-climbing.com/

CREDITS

取材・文 編集部 / 写真 窪田亮

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