第3回スピードジャパンカップのビッグファイナルで5.727秒(公式記録上は5.72秒)を計測した楢﨑智亜

楢崎智亜の「5.72秒」。スピードクライミングで日本人初のメダル獲得も

 3月6日に行われたスポーツクライミングの第3回スピードジャパンカップで、東京五輪代表の楢崎智亜が5.72秒の日本新記録を樹立した。このタイムは、国際大会ではどれほどの位置につけるのか。2019年のW杯、世界選手権のデータに当てはめて比較した。

 コロナ禍前の2019年、W杯(6大会)と世界選手権(1大会)でスピード種目は計7大会が実施された。スピードの公式戦では、タイムレース方式の予選上位16名が決勝に進めるが、決勝進出の基準となる予選16位だった男子選手の7大会平均タイムは約6.173秒。最高でも6.057秒で、楢崎は日本男子初の決勝進出に十分すぎる数字を叩き出したことになる。

 目の前の相手との対人戦となり、より熾烈な戦いが繰り広げられるトーナメント方式の決勝では、1大会で16レース、計32回のタイム計測がされることになるが、7大会の全224回中、5.72秒より速かったのは19回。確率は約8.5%で、スピード専門選手であっても計測が難しいタイムだということがわかった(なお世界記録は5.48秒、2019年の世界最速は5.49秒)。表彰台に上がる可能性も大いにあるだろう。

スピード専門選手の少ない東京五輪でもこれほどの好タイムをマークできれば、金メダルを争う上で大きなアドバンテージになる。

 「トモアスキップ」のようにホールドをショートカットするムーブをさらに2つ取り入れた上、ウエイトトレーニングによる脚力強化が実を結んでの日本新記録。楢崎本人によれば、このコロナ禍に海外勢もタイムを上げ、5.3秒、中には5.1秒を練習で計測している選手がいるという。しかし、スピードが単種目で実施される2024年のパリ五輪に向けて継続的に取り組んでいくと公言した楢崎も、「まだまだタイムは伸ばせる」と頼もしい。

 国内での普及が始まったのは数年前だが、日本人がスピードクライミングの国際大会でメダル獲得という快挙達成も、遠い未来の話ではなくなってきている。

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編集部 / 写真 窪田亮

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