子どもたちによる白熱の戦い。第3回ボルダリング小学生競技大会が開催

 「オリエンタルバイオ Presents 第3回ボルダリング小学生競技大会」が東京都の「葛飾区東金町運動場 スポーツクライミングセンター」で7、8日に開催され、全国から参加した小学生たちがシニア大会さながらの環境下で日ごろの練習成果を競い合った。

 第3回大会の会場は、自然あふれる都内最大級の水郷公園、都立水元公園内で今年6月にオープンしたスポーツクライミングセンター。様々な傾斜のあるボルダリング壁は高さが5m、幅が30mあり、国際大会の開催も見込んでいる施設だ。昨年までのセッション方式とは異なり、今大会では新型コロナウイルスの感染防止のために密を避ける意図もありベルトコンベア方式を導入。5・6年生の男女決勝では1つの課題に対して順番に競技を行っていくW杯決勝方式が採用された。審判員は東京都山岳連盟が、ルートセットは伊東秀和や永田乃由季などの著名クライマーが担当するなど、シニア大会と比較しても遜色のない舞台が用意された。

ベルトコンベア方式で課題に挑む3・4年生たち。会場は国際大会の開催も想定している「葛飾区東金町運動場 スポーツクライミングセンター」。

 伊東氏が「レベルの高い課題で攻めたが、想像より男女ともついて来てくれた」と話した通り、各カテゴリーでは大人顔負けのムーブが連発。コロナ禍により観客数は制限されたが、子どもたちの最後まで諦めないひたむきな姿勢に会場も白熱した。

 2日で5課題ずつ、計10課題の成績で順位を決める男女混合の3・4年生カテゴリーでは、全完登者が5名現れ、中でも様々な傾斜の課題をすべて一撃で仕留めた斎木猛斗(さいき・たけと)、石田奏(いしだ・はく)の4年生2人が同着で優勝した。

5・6年生の決勝オブザベーション。周りの選手と相談する様子は、子どもも大人と変わらない。

ハイレベルな課題に対し、渾身のトライが続いた。

 5・6年生の男子決勝は、真っ向系の第1課題で完登者は出ず、出だしからランジするダイナミックな第2課題もゾーン到達すら厳しい難関となったが、4番手の竹柴勇吹(たけしば・いぶき)が一撃してみせ、優勝に一つ前進する。最終第4課題もゾーン取りの一手が中々止まらない展開となり、最後に登る笹原蓉翠(ささはら・ようすい)が初めてゾーンを止めるなどして優勝への可能性を繋いだが、最後は力尽き、唯一の2完登となった竹柴が逃げ切って金メダルを獲得した。

5・6年生男子カテゴリー優勝の竹柴勇吹。将来は「強くて、優しい選手になりたい」。

5・6年生女子カテゴリー優勝の山根嘉穂。憧れは同じ茨城県出身の野口啓代だとか。

 5・6年生女子決勝では、全員が完登した第1課題を経て、第2課題でただ一人ゴール取りに成功した山根嘉穂(やまね・かほ)が首位に立つ。第3課題は再び全員が完登すると、パワーが求められる最終課題は多くの選手が見事な修正力を発揮し、3~5トライでTOPホールドへ。最後の力を振り絞ってパワフルな一手を止める姿にはMCも務めた伊東、永田の両氏とも思わずのけ反るほど。首位の山根も登り切り、1位をキープしたままフィニッシュとなった。


伊東秀和(セッター・MC/写真左)コメント
「今年は楽しい雰囲気の緩いセッション方式から、ベルトコンベア方式というピリッとした感じに変わったので、セットもそこに寄せてレベルの高い課題で攻めてみました。どちらかというと(ホールドを)持てていないと登れないとか、引けないと取れないとか、フィジカル的な強さが試されるような内容でした。選手がどこまで対応してくれるのか未知数でしたが、よくやってくれたという感じでしたね。この時期にどこまで深くクライミングを楽しめるか、好きになれるかというのは、大人になってからの成長に大きく左右する部分だと思います。この大会がクライミングの楽しさを広げるきっかけとなれば私たちも嬉しいですね」

永田乃由季(セッター・MC/写真右)コメント
「毎年になりますが、今年も感動させてもらいました。『選手、セッター、応援してくださった方、ありがとう!』という感じです。去年よりもみんな強くなっているという印象でした。また来年もやりたいので、子どもたちはそれに向けてよりレベルアップしてほしいですし、何よりも楽しむことを忘れずにやってほしいと思います。お父さんお母さんも『楽しく』ということを忘れずにいてもらいたいですね」
 

<小学3・4年生男女混合>


1位:斎木 猛斗(さいき・たけと)/10t10z 10 10
1位:石田 奏(いしだ・はく)/10t10z 10 10
3位:長崎 莉央(ながさき・りお)/10t10z 11 11
 

斎木猛斗(優勝/写真左)
「クライミングは初めて2年くらいです。大会にはこれまで何度か出たことがありますが、またこの大会で優勝したいです」
 
石田奏(優勝/写真右)
「リードでは優勝したことがあるけど、ボルダーでは勝ったことがあまりないので嬉しいです。課題は難しいところもありましたが、ゴールした時は気持ちよかったです」

<小学5・6年生男子>


1位:竹柴 勇吹(たけしば・いぶき)/2t3z 7 10
2位:笹原 蓉翠(ささはら・ようすい)/1t4z 3 8
3位:波多野 英傳(はたの・えでん)/1t3z 2 5
 

竹柴勇吹(男子優勝)
「まず一番最初に思うのは楽しかったということです。第4課題が一番難しくて、ゾーン取りを頑張ったんですけど、中々止められなくて、そこは悔いが残ってしまいました。よく『LAGO』(東京都杉並区)で登っています。いつも『こういうふうにしたらどう?』ってアドバイスをしてくれるので、すごくありがたいと思っています。クライミングが大好きなので、これからも続けていきたいです。すごく強いけど、誰にでも対等でいて、優しい選手になりたいです」

<小学5・6年生女子>


1位:山根 嘉穂(やまね・かほ)/4t4z 10 6
2位:麦島 心花(むぎしま・こはな)/3t4z 5 4
3位:岡 みひろ(おか・みひろ)/3t4z 6 7
 

山根嘉穂(女子優勝)
「優勝はうれしいんですけど、トライ数がかかってしまったのは少し残念でした。ふだんは『アオロク』(茨城県鹿嶋市)や『スポーレ』(同つくば市)とかに登りに行っています。ベルトコンベア方式は他の大会でも経験していたので、そこまで難しくなかったです。もっと強くなって(同じ茨城県出身の)野口啓代選手みたいになりたいです」

※順位表は左から氏名、決勝成績(小学3・4年生は予選総合成績)
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

「オリエンタルバイオ Presents 第3回ボルダリング小学生競技大会」大会公式ページ

大会の模様は、後日「LIVE-Link sports」YouTube公式チャンネルで配信されます。

CREDITS

取材・文 編集部 / 写真 大杉和広

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