藤井快が1位、楢崎明智が3位/五輪予選大会【男子決勝】
現地時間30日、東京オリンピック出場をかけた五輪予選大会(フランス・トゥールーズ)で男子決勝(コンバインド種目)が行われ、この日27歳を迎えた藤井快が自ら誕生日を祝う優勝を決めた。楢崎明智も3位となり、日本勢が2つのメダルを獲得した。
22名による予選を勝ち抜き、8名で争われる決勝に駒を進めていた2人。第1種目のスピードは、初戦で藤井が敗れる一方、楢崎は僅差で勝利する。しかし楢崎はその後2敗して4位に、藤井は敗者によるトーナメントで2勝して5位スタートとなった。この種目1位はファイナリストで唯一スピードを得意とするバッサ・マウェム(フランス)で、3つのレースでいずれも5秒台をたたき出した。
続くボルダリングは、先頭で登場したアダム・オンドラ(チェコ)がスピードでの最下位を取り戻すべく第1課題を2トライ目に完登する。その後、不安定な足場によりゾーン獲得から先に進めない選手ばかりだったが、5番手の楢崎は長身を生かして軽々と一撃。その後完登者は現れず、完登に要したトライ数の差で楢崎が1位発進となった。
第2課題は藤井の独壇場に。スタートからの一手を止められずゾーン獲得でさえ苦労する選手が続く中で、藤井は3トライ目に難所を突破すると、パワーとテクニックを駆使してTOPまで到達。喜びをかみしめるようにガッツポーズを繰り返し、結果的にこの課題唯一の完登者となった。
2つのダイナミックなムーブが続いた最終第3課題は、藤井が9トライ目に、楢崎が4トライ目に片手でのゴール取りを成功。オンドラが攻略に失敗していたため、ボルダリングは楢崎が1位、藤井が2位となり、総合でも楢崎が4ポイントで1位、藤井が10ポイントで3位に浮上した。
雌雄を決する最終種目のリードは、ここまで総合6位のオンドラがTOPに迫る高度34に到達。暫定ながら総合首位に立った。オンドラの記録が破られないまま、6番手の藤井が登場。最近はリードに力を入れているという藤井は、慎重に高度を上げていくと高度33/34のホールドに到達。右手で掴んだあと、左手で取りに行くところでフォールしてしまい、記録は33+。この種目でオンドラに勝利することはできなかったが、総合順位ではオンドラを上回ることに成功した。そしてマウェムが高度16+に終わったため、リードで5位以上になれば優勝が決まる状況で最後の順番が回ってきた楢崎。しかし26+で力尽きてしまい、結果は7位に終わった。
これで総合順位が確定。ボルダリングとリードで2位を確保した藤井が20ポイントで優勝し、オンドラが24ポイントで2位、楢崎が28ポイントで3位となった。日本出発時に「優勝を目指して練習してきた」と話していた藤井が、27回目の誕生日を迎えたこの日、有言実行の金メダルを獲得した。
この大会は2つ目の五輪選考大会として実施され、上位6名には五輪出場枠が与えられることになっているが、国際スポーツクライミング連盟(IFSC)が10月に内部書面で示したという五輪代表選考方式の“新解釈”では、すでに8月の世界選手権で2枠を獲得した日本勢はこれ以上枠を得られないとされている。現に、IFSCは男子決勝後に公開したリリースで、日本勢を除いたファイナリスト6名が出場枠を暫定的に獲得したと記載している。
この解釈変更を不服として、日本山岳・スポーツクライミング連盟(JMSCA)はスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴している。JMSCAは大会が終了する1日までの判断を求めていたが、迅速に手続きを進めることにIFSCが同意しなかったとして、それが困難になったと11月29日付で発表。提訴と併せて解釈の変更を仲裁判断が出るまで一時的に停止する措置も求めていたが、CASがこれを認めなかったという。
先の見えない状況が続くが、いずれにせよそのような中で1、3位に輝いた藤井、楢崎の健闘は称賛に値する。あとはCASの判断を待つほかないだろう。なお、森秋彩、伊藤ふたばが出場する女子決勝は、日本時間1日の22時から行われる。
<男子決勝>
1位:藤井 快
20ポイント(S 5位/B 2位/L 2位)
2位:アダム・オンドラ(CZE)
24ポイント(S 8位/B 3位/L 1位)
3位:楢崎 明智
28ポイント(S 4位/B 1位/L 7位)
4位:バッサ・マウェム(FRA)
64ポイント(S 1位/B 8位/L 8位)
5位:ヤン・ホイヤー(GER)
70ポイント(S 2位/B 7位/L 5位)
6位:パン・ユーフェイ(CHN)
72ポイント(S 3位/B 4位/L 6位)
7位:アルベルト・ヒネス・ロペス(ESP)
105ポイント(S 7位/B 5位/L 3位)
8位:ナサニエル・コールマン(USA)
144ポイント(S 6位/B 6位/L 4位)
リザルト詳細は国際スポーツクライミング連盟/大会ページから
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CREDITS
文 編集部 / 写真 IFSC/René Oberkirch