日本勢が3年ぶりに表彰台から姿消す。ガンブレットは史上初の全勝優勝に王手/ボルダリングW杯2019第5戦 ミュンヘン大会
18・19日、ボルダリングW杯第5戦がドイツ・ミュンヘンでおこなわれ、男子では世界選手権2018リード覇者のヤコブ・シューベルト(オーストリア)が最終課題での逆転で、2013年以来3度目のボルダリングW杯優勝を果たすと、女子では年間女王が確定したヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)が無類の強さを発揮して開幕5連勝。ボルダリングW杯史上初の全戦優勝に王手をかけた。
日本勢は楢崎智亜、野口啓代らの主力が25・26日に開催されるコンバインドジャパンカップに向けた国内調整のため欠場となり、男子は緒方良行の15位、女子は倉菜々子の14位が最高で、男女とも表彰台に日本勢の姿がないのは2016年4月の開幕戦・マイリンゲン大会以来、25大会ぶりの出来事となった。
先に行われた男子決勝は、準決勝をただ1人全4完登して首位通過したアダム・オンドラ(チェコ)が第1課題から魅せる。それまでの5人がゾーン以降のムーブに苦戦した体力を奪っていく強傾斜課題を抜群の身のこなしでただ一人完登。一撃というおまけ付きで、喜びを爆発させる。
勢いの止まらないオンドラは第2、第3課題も一撃し、最終課題でゾーンさえ獲得すれば優勝という大きなリードをつかんで最終課題に進んだ。しかし、その第4課題は思いがけない展開に。まずは3番手のシューベルトが、それまでの2人がゾーン獲りのためにファーストトライで選択した動きとは異なる連続ムーブをチョイスすると、3トライ目にゾーン獲得。そのまま登り切ってこの課題の初登者となり、3完登4ゾーンでわずかにオンドラを上回り暫定首位に立った。
最後に登るオンドラは、最初のトライからシューベルトと同じコーディネーション系のムーブを選択したが、ゾーンを掴み切れずに時が進む。残り30秒を切った最終トライでムーブを変更するも、最後までゾーンにたどりつくことができず。圧倒的不利な状況からの逆転で、シューベルトの6年ぶりのW杯優勝が決まった。2位にはオンドラ、3位には最終課題を一撃した地元ドイツのヤン・ホイヤーが入った。日本勢は第1グループで首位に立った緒方良行など4人が予選を通過したが、準決勝では苦戦が続き、緒方の1完登がやっとだった。
女子では、野口啓代の欠場により今季年間女王の座がすでに確定していたガンブレットが出色のパフォーマンスをみせる。予選の第1グループはただ1人の全5完登で首位通過すると、準決勝では3位以下が0完登、2位が1完登と極端に完登者が少ない展開の中で、すべての課題を落としていく。
迎えた決勝では、第1、第3課題を一撃で沈めると、最終課題も一撃で仕留め、全完登で追いすがるファニー・ジベール(フランス)をアテンプト差で2位に追いやった。これでガンブレットは開幕5連勝。圧倒的な力をミュンヘンに集まった大観衆の前でみせつけ、1999年にボルダリングW杯が始まって以来、男女を通じて史上初となる全戦優勝まで残り1勝とした。
これで2019年のボルダリングW杯は最終戦を残すのみとなった。その第6戦は6月7・8日にアメリカ・ベイルで行われ、今回欠場した楢崎、野口ら日本の主力選手たちも出場予定。オンドラを24ポイント差で追う楢崎には、3年ぶり2度目となる年間優勝の可能性が残る。
<決勝>
[男子]
1位:ヤコブ・シューベルト(AUT)/3t4z 7 8
2位:アダム・オンドラ(CZE)/3t3z 3 3
3位:ヤン・ホイヤー(GER)/2t4z 4 14
4位:アレクセイ・ルブツォフ(RUS)/2t3z 5 6
5位:アンゼ・ペハルク(SLO)/1t4z 3 6
6位:チョン・ジョンウォン(KOR)/1t3z 5 9
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15位:緒方 良行 ※準決勝進出
17位:井上 祐二 ※準決勝進出
18位:高田 知尭 ※準決勝進出
20位:石松 大晟 ※準決勝進出
25位:渡部 桂太
39位:島田 蒼也
[女子]
1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/4t4z 5 5
2位:ファニー・ジベール(FRA)/4t4z 8 7
3位:ミア・クランプル(SLO)/3t3z 9 9
4位:ジュリア・シャヌルディ(FRA)/2t2z 5 5
5位:エフゲニア・カズベコワ(UKR)/1t3z 3 7
6位:カーチャ・カディッチ(SLO)/1t2z 1 6
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14位:倉 菜々子 ※準決勝進出
23位:菅原 亜弥
63位:大河内 芹香
※左から氏名、所属国、決勝成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数
リザルト詳細は国際スポーツクライミング連盟/大会ページから
CREDITS
文 編集部 / 写真 Eddie Fowke – IFSC