楢崎智亜、野口啓代が開幕戦に続く2位/ボルダリングW杯2019第3戦 重慶大会

 27・28日、ボルダリングW杯第3戦が中国・重慶で行われた。男子はフランスのマニュエル・コルニュが初優勝を果たし、ゾーンのアテンプト1差という僅差で惜しくも敗れた楢崎智亜は2位。女子はスロベニアのヤンヤ・ガンブレットが開幕から3連勝し、最後まで競った野口啓代が2位となった。

 先に行われた男子決勝。日本勢からは、半数が0完登という難関続きの準決勝を2完登で切り抜けた楢崎と藤井快が進出した。重慶への出発直前に風邪を引いてしまったという楢崎だが、力強い登りで第1、第2課題を連続完登。同じく2連続完登したコルニュに、第2課題を一撃した楢崎が僅差でリードをつける。

 バランシーなスラブの第3課題はコルニュが一撃で攻略すると、楢崎は既定のスタートポジションをとることができずにやり直しを求められてしまう。実質1トライ目となった2トライ目は軽々と完登したため、惜しまれるトライとなった。これでコルニュと楢崎は3完登3ゾーンで並んだが、ゾーンのアテンプト1差でコルニュが逆転で首位に立った。

 そして最終課題。ゾーン獲得前後のムーブで体力を消耗していく難関に、多くのクライマーが苦戦。先に登るコルニュは1トライ目でゾーンに到達するもそこから攻略できず、楢崎は完登できれば優勝というチャンスが回ってくる。しかし楢崎も足場の悪いハリボテとゾーンのスローパーに苦戦し、完登できずにタイムアップ。2人の順位は第3課題終了後から動かず、コルニュが参戦5年目にしてW杯初優勝を決めた。

 結果的に第3課題のスタートミスが大きく響いた楢崎だが、体調が万全ではない中での準優勝となった。そのほか、最終課題を唯一登り観衆を沸かせた準決勝1位通過のアンゼ・ペハルク(スロベニア)が逆転で初の表彰台に立ち、藤井は2完登4ゾーンを記録するがアテンプト差で6位となっている。

女子表彰台=(左から)野口啓代、ヤンヤ・ガンブレット、ジェシカ・ピルツ。

 続く女子決勝には、モスクワ大会を国内調整で回避した野口と、伊藤ふたばが2大会連続で進出を果たした。今大会も、開幕戦で1、2位だったガンブレットと野口が優勝を争う。第3課題を終え、ここまでの全完登はこの2人のみ。完登数のアテンプト差1でわずかにガンブレットがリードした。

 2人の接戦で迎えた最後の関門は、パワーが求められる強傾斜課題となった。先に登る野口だったが、真上に飛ぶスタートのダブルダイノを中々止められずに5トライを重ね、最後は完登したものの笑顔はなかった。そしてガンブレットは2トライ目で完登し、圧倒的な強さで開幕から3連勝を飾った。3位には近年ボルダリングの実力も伸ばしてきているリードの昨季世界選手権覇者ジェシカ・ピルツ(オーストリア)が入り、ボルダリングW杯初の表彰台。伊藤は1完登ながら自己最高の5位となった。

女子世界記録の7秒101をマークした中国のソン・イリーン。(写真=IFSC/Eddie Fowke)

 一方、26日に同地で行われたスピードW杯第2戦では女子世界記録が誕生した。開幕2連勝を決めた中国のソン・イーリンは準々決勝で7秒101をたたき出し、それまでの世界記録7秒32を更新。準決勝でも7秒110をマークするなど、女子未踏の6秒台に迫っている。男子はインドネシアのアルフィアン・ムハンマドが初優勝となった。日本勢では自身初の9秒台となる9秒694を記録した野口の30位、男子では日本新となる6秒620をマークした藤井の24位が最高だった。

 ボルダリング男子は今季も大会ごとに優勝者が変わる群雄割拠。その中でも安定して表彰台に上がる楢崎は次こそ頂点を狙いたい。女子は野口が好調ながらガンブレットの壁はまたも高かった。中国ラウンド2戦目となる第4戦・呉江大会は、今大会同様スピードW杯との同時開催で5月3~5日に行われる。

 

<ボルダリング>

[男子]
1位:マニュエル・コルニュ(FRA)/3t4z 5 5
2位:楢崎 智亜/3t4z 5 6
3位:アンゼ・ペハルク(SLO)/3t4z 10 10
4位:サッシャ・レーマン(SUI)/2t4z 3 10
5位:アレクセイ・ルブツォフ(RUS)/2t4z 4 11
6位:藤井 快/2t4z 7 9
―――――
7位:杉本 怜 ※準決勝進出
11位:原田 海 ※準決勝進出
13位:石松 大晟 ※準決勝進出
20位:村井 隆一 ※準決勝進出
21位:高田 知尭
23位:楢崎 明智
29位:緒方 良行
31位:土肥 圭太

[女子]
1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/4t4z 8 6
2位:野口 啓代/4t4z 12 9
3位:ジェシカ・ピルツ(AUT)/3t4z 8 11
4位:ペトラ・クリングラー(SUI)/1t3z 2 8
5位:伊藤 ふたば/1t2z 1 4
6位:カーチャ・カディッチ(SLO)/0t4z 0 10
―――――
16位:中村 真緒 ※準決勝進出
21位:森 秋彩
35位:平野 夏海
43位:倉 菜々子

※左から氏名、所属国、決勝成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

<スピード>

[男子]
1位:アルフィアン・ムハンマド(INA)/5秒970
2位:コスティアンティン・パウレンコ(UKR)/6秒315
3位:セルゲイ・ルキン(RUS)/6秒808
―――――
24位:藤井 快/6秒620 ※日本新
30位:楢崎 明智/6秒926
38位:原田 海/7秒123
29位:土肥 圭太/6秒831
42位:杉本 怜/7秒372

[女子]
1位:ソン・イーリン(CHN)/7秒673
2位:アレクサンドラ・ルジンスカ(POL)/fall
3位:ユリア・カプリナ(RUS)/8秒429
―――――
30位:野口 啓代/9秒694
38位:伊藤 ふたば/10秒094
50位:中村 真緒/11秒063
67位:森 秋彩/13秒025
72位:平野 夏海/14秒077

※左から氏名、所属国、成績
※1・2位選手の成績は決勝タイム、3位選手の成績は3位決定戦タイム

リザルト詳細は国際スポーツクライミング連盟/大会ページから

CREDITS

篠幸彦 / 写真 窪田美和子/アフロ

back to top