楢崎、野口が2位、杉本が3位/ボルダリングW杯2019開幕戦 マイリンゲン大会
4月5・6日、ボルダリングW杯2019シーズンの開幕戦がスイス・マイリンゲンで開催された。男子はチェコのアダム・オンドラが2010年ミュンヘン大会以来の頂点に立ち、2位に楢崎智亜、3位に杉本怜が入った。女子では世界選手権2018の女王、スロベニアのヤンヤ・ガンブレットが優勝し、最後まで争った野口啓代が2位となった。
先に行われた男子決勝には、楢崎、杉本のほか、藤井快、高田知尭の4人が進出し、半数以上を日本勢が占めた。第1課題は先頭の高田がいきなり一撃で落とすと、藤井を除く5人が完登で並ぶ。第2課題では高田と韓国のチョン・ジョンウォンがゾーンを逃すと、他の4人は完登で続いた。
明暗が分かれたのが第3課題。スタート直後のスラブ(緩傾斜壁)が難所となり、4人目の杉本まではゾーンを獲得するにとどまる。すると楢崎とオンドラはこれを一撃。優勝争いは3完登3ゾーンの楢崎とオンドラ、2完登3ゾーンの杉本に絞られる。
迎えた最終課題はゾーン手前のジャミング(手をホールド間に挟みこむムーブ)がポイントとなった。ここを飛ばしたチョンのみがゾーンを獲得するも、楢崎までの他の4人は攻略することができず。すると最後に登場したオンドラは、いとも容易く高度を上げていく。難所もしっかりと手中に捉えると、勝利を確信したのか観客を煽り、大歓声の中を一気に登って一撃を決めた。
オンドラは、近年は岩場での活動に専念し次々と高難度課題を攻略してきた“世界最強”のクライマーの1人。来年のオリンピックに向けて本格始動し、今年春にはボルダリングのトレーニングのために日本も訪れていた。そして4年ぶりの出場となったボルダリングW杯で、ただ1人予選から決勝までの13課題を全完登し、見事に頂点に立ってみせた。
続いて行われた女子決勝。昨シーズン年間王者の野中生萌が大会前の怪我の影響により欠場する中、日本からは野口が進出を果たした。立ち上がりは野口、ショウナ・コクシー(イギリス)のみが完登し、ガンブレットがゾーン獲得にとどまるも、一転して第2課題では野口、コクシーの2人が完登を逃し、他の4人が完登する意外な展開に。
全員が1完登で並んだ第3課題。4人目のコクシーのみが完登という第1課題と同じ流れとなるが、5人目のガンブレットは一撃。最後の野口も4トライ目で完登し、優勝の可能性を残すのは2完登3ゾーンのコクシー、ガンブレット、野口の3人となった。
勝負を決める最終課題で最初に脱落したのはコクシーだった。大きなクレーターのハリボテが3つ並ぶ難所を攻略できず、ゾーンも獲得できずに競技終了。その難所をガンブレットは3トライで攻略して完登した。この時点で野口が一撃してもアテンプト数で届かず、ガンブレットの優勝が確定。野口は3トライで完登し、コクシーを抑えて2位となった。
男女ともに優勝には届かなかったが、合わせて3人が表彰台に上がる結果を残した日本勢。とりわけ男子は出場10人中7人が準決勝に進み、今年も初戦から層の厚さを世界に示している。女子は野中を欠く中で、森秋彩、平野夏海のW杯初出場組など、新たな世代の活躍に期待したい。第2戦は来週13・14日にロシア・モスクワで開催される。
<決勝>
男子
1位:アダム・オンドラ(CZE)/4t4z 10 9
2位:楢崎 智亜/3t3z 7 6
3位:杉本 怜/2t3z 6 7
4位:藤井 快/1t3z 3 5
5位:チョン・ジョンウォン(KOR)/1t3z 3 8
6位:高田 知尭/1t1z 1 1
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8位:緒方 良行 ※準決勝進出
9位:石松 大晟 ※準決勝進出
10位:土肥 圭太 ※準決勝進出
21位:川又 玲瑛
21位:原田 海
29位:楢崎 明智
女子
1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/3t4z 6 6
2位:野口 啓代/3t4z 9 12
3位:ショウナ・コクシー(GBR)/2t3z 3 4
4位:ファニー・ジベール(FRA)/1t2z 4 2
5位:ペトラ・クリングラー(SUI)/1t1z 1 1
6位:オセアニア・マッケンジー(AUS)/1t1z 2 2
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9位:伊藤 ふたば ※準決勝進出
25位:倉 菜々子
27位:森 秋彩
35位:平野 夏海
51位:中村 真緒
※左から氏名、所属国、成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数
リザルト詳細は国際スポーツクライミング連盟/大会ページから
CREDITS
文 篠幸彦 / 写真 Ryu Voelkel/アフロ