「最後まで粘り強く登ることができた」。決勝後の選手コメント一覧/第32回リードジャパンカップ
3、4日に行われたリードの国内王者を決める「第32回リードジャパンカップ」。多くの実力者たちがしのぎを削る混戦模様となった大会を制したのは、女子が大会7度目の戴冠に輝いた野口啓代、男子が国内のリード種目初優勝となる藤井快だった。以下、決勝を戦った選手たちのコメント一覧。
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野口啓代コメント(女子優勝)
「決勝は中間部でフリーズしてしまって、オブザベーションの段階ではそこが難しいと思ってはいなかったので予想外の展開でした。体も頭も疲れてしまって、そのあとかなりガタガタのクライミングになってしまいましたが、なんとか終了点近くまでいけて、優勝できてよかったです。以前までは中間点でミスをしたら終了点付近にいくほどの持久力がなかったと思うんですが、今大会に向けて比較的登る時間をたくさんとれたので、最後まで粘り強く登ることができました。今年は本当に世界選手権(8月・東京)に目標を絞っているので、そこまでに自分の登りを修正して、さらに自信をつけて挑んでいきたいです」
森秋彩コメント(女子2位/昨年優勝)
「下部からダイナミックな感じで緊張したんですけど、『おもい切ってやろう』と思いました。でも最後(のパート)のオブザベーションがよくできていなくて、右手のカンテ(壁の角)のホールドを見落としてしまいました。最後だけすごく遠いなと思っていて、落ちたあとに横を見たら右手があったことに気がつきました。なので余力はあったんですけど、出し切ることができなかったです。準決勝は完登者が結構いて、予選のカウントバックで順位が落ちてしまった。予選でミスをしてしまったのが2位になった理由ではあるんですけど、オブザベーションはずっと課題にしていて、また同じミスを繰り返してしまった。そこがすごく悔しいです」
平野夏海コメント(女子3位)
「日本で3位になれたのはすごく嬉しいんですけど、優勝したかったので悔しいです。自分は持久力の方が自信があるので、ランジ(ジャンプ)などのボルダームーブが出てくると落ちちゃうなってイメージがあります。決勝は苦手系だったので不安だったんですけど、気持ちで負けずに行くことができました。(昨季W杯クラーニ大会で決勝に進出。その後ボルダリングジャパンカップ(BJC)でも4位と好調だが)今までは勝ちたいと思い続けてて、それで空回りして自分の登りが上手くできていませんでした。でもW杯では自分が最年少で何もプレッシャーを感じなくて、クライミングを始めた時のような気持ちで登れて、楽しむことが一番大事なんだということを学べました。それからはもちろん優勝は狙っているんですけど、そういう気持ちは少し抑えて、勝ちたいというより、楽しんで勝てたらいいなって思うようにしたことが大きいのかなと思います」
野中生萌コメント(女子7位)
「ユースでも強い選手がたくさんいるので優勝は厳しいと思っていましたが、目標にしていたファイナルにしっかりと進めたので嬉しいです。リードは筋持久力の戦いで、ボルダー、スピードとはやはり違う。私はメインがボルダーなので、持久的な動きをそれほどしていないことに問題があると思います。一定の力を出し続けることがまだ得意ではないですね。決勝に行けたのはボルダー力で補えた部分があるのかなとも思いますが、大会前にはリードの練習量をもっと増やしていきたいと考えています」
藤井快コメント(男子優勝)
「決勝の課題は下部からダメージを負ってしまって、最終局面に入る前に休むことができたんですけど、そこでしっかりと休んで完登する準備ができたのがよかったです。いつもは順位を気にしていたんですけど、今回は自分と向き合って試合をすることができました。(リード初優勝に関して)まさかという感じですね。BJC4連覇を逃して、それは仕方のないことかなと思っていたんですけど、リードにシフトしていきたいと思っていた矢先に勝てたので嬉しく思います。リードで表彰台というのは国内の大会ではなかったんですけど、順位は気にせず自分の普段通りの実力を発揮できればいいなと思っていました」
楢崎智亜コメント(男子2位)
「2年連続2位だったので、優勝をと思っていましたが、最後の最後で詰めが甘くて、手が抜けてしまいました。予選から準決勝までかなり調子が良くて、流れで登れていましたが、調子がいいとこういったミスがでてしまう。次はミスをしないようにしたいと思います」
清水裕登コメント(男子3位)
「リードをメインにしているので優勝したかったんですけど、及ばずという感じで悔しいです。(昨年のW杯で決勝を経験したが)やっぱり自信には繋がりましたね。緊張感も抑え込めるようになったというか。今までは緊張すると動きが硬くなってミスしたりというのがあったんですけど、そこを越えられるようになったと感じています。リードはテクニックも重要ですが、メンタルもかなり大事だと思っているので、焦らずに自分の登りをしようと心掛けました。今後は距離のあるムーブなどにも耐えられるようにフィジカルも上げていきたいです。今年は世界選手権に出場したいので、そこを目標にまずはW杯で成績を残していきたいと思っています」
楢崎明智コメント(男子4位)
「準決勝、決勝ともに攻めどころで攻めきれないという自身の課題がわかりました。決勝は自分に合っていたルートで、みんなが使えない足を使って休むなど身長を生かした登りができました。でも最後の強傾斜に入るときにピンチ(ホールドの持ち方の一種)があって、自分としてはそこが核心だと思っておもい切り力を出していったんですけど、思ったよりも簡単に止まってしまって。そこの攻めどころを見誤りました。(準決勝、決勝ともに1番手で登ったことについて)新鮮でした。大会をかき乱すというか、自分が1番手でいって上までいくことによって後の人は僕の高度までいくのが普通なんじゃないかと思うじゃないですか。そういうことができてよかったですね。楽しかったです」
杉本怜コメント(男子5位)
「これで3つのジャパンカップすべてで決勝に残ることができました。ただ、BJCは年々ライバルが増えていて、決勝でのパフォーマンスが課題だと感じています。スピードは決勝トーナメントの戦いは初めてでしたし、他の選手との実力の差を見せつけられました。今日のリードで5位という結果には手応えを感じています。自分としては出し切ることができました。決勝に残ることを目標にしていたので、通過点としては非常に良かったと思います」
是永敬一郎コメント(男子6位/昨年優勝)
「(昨年5月に左膝を負傷したが)戦えるぐらいには回復してきています。ただ可動域がまだ完全には戻っていません。足を曲げて力を入れるのがまだ嫌で、(ヒールをかけずに)下足での動きが多くなってしまっています。膝をかばう動きも入るのでパンプしやすくなっているのかもしれません。決勝は体力的にもきつかったので出来る範囲で頑張ろうと臨みました。今の膝の状態だと世界とはまだ戦えていないと感じたので、まずは膝を直すところが目標ですね。(久々の大会出場となったが)元々日本の選手はみんな強いと思っていましたけど、さらにパワーアップしてきているので負けられないなと思いました」
CREDITS
取材・文 編集部・篠幸彦 / 写真 窪田亮