左から2位の藤井快・伊藤ふたば、優勝の池田雄大・野中生萌、3位の抜井亮瑛・野口啓代

野中生萌が今年2つ目の国内制覇!男子はスピード専門の池田雄大が制する/第1回スピードジャパンカップ

 10日午後、モリパークアウトドアヴィレッジ(東京都・昭島市)で第1回スピードジャパンカップの決勝が行われ、女子は野中生萌、男子は池田雄大が優勝し、栄えある初代王者に輝いた。

 午前に行われた予選から約1時間30分をおいて実施された決勝トーナメントには、予選上位の男女16名ずつが進出し、有力選手が軒並み顔をそろえた。女子では、日本ランキング1位の実力通りに予選を首位通過した野中生萌がここでも順調に勝ち進んだ。1回戦、準々決勝ともに危なげない展開でベスト4に1番乗りすると、中村真緒、伊藤ふたば、野口啓代もそれに続いた。先々週に終えたボルダリングジャパンカップ(BJC)のファイナリストによる戦いとなった準決勝は、まずは野中が9秒620で中村に勝利し決勝へ。伊藤と野口の一戦は終盤で野口を突き放した伊藤に軍配が上がり、野中の待つ決勝に駒を進める。

 迎えた決勝では、伊藤がこの日1番の好スタートを切るも、野中も負けじとゴールへと突き進み、ファイナルに相応しい好レースに。勝ったのは最後まで勢いが衰えなかった野中。タイムは野中が9秒388、伊藤が9秒658で、激しいデッドヒートを制した野中がBJCに続く「ジャパンカップ」連覇を決めた。3位には野口啓代が入った。

9秒台を並べ、下馬評通りに優勝を決めた野中生萌。

ファイナルでこの日一番のタイムを残すなど、巧みな試合展開も光った伊藤ふたば。

野口も表彰台に入り、女子のトップ3は1月のジャパンカップと同じ顔ぶれとなった。

 一方の男子では、トーナメント1回戦から波乱の展開に。6秒935を計測して予選1位の緒方に相対したのは、通過ラインぎりぎりの16位で決勝に進出した藤井快。緒方有利に思われたが、藤井は予選でのミスを取り返す登りで自己ベストを更新する7秒011をマークし、7秒328の緒方に勝利する。勢いに乗った藤井は、準々決勝で杉本怜を、準決勝で15歳ながら6秒960の自己ベストを持つ抜井亮瑛を6秒920の更なる自己ベスト更新で打ち負かし、見事にファイナルまでたどり着いた。

 トーナメントの反対の山では、序盤のホールドを飛ばして登る「智亜スキップ」を編み出し日本ランキング1位を走る楢崎智亜と、国内で唯一スピードに専念する同ランキング3位の池田雄大が準決勝で激突した。今大会に向けて一緒に練習してきたという2人の戦いは、快調に飛ばした楢崎が大きなリードを保ってゴールに迫る。しかしゴール直前で足を滑らせると、持ち直そうとした足も再度スリップ。その間に前に出た池田が、決勝への切符を手にした。

 最終決戦は、途中までリードする藤井にミスが出て、反対に大会を通し最後まで大きなミスが出なかった池田が悠々とゴールタッチ。大会前には「初代王者になりたい」と意気込んでいた日本スピード界の先駆者が、他にはない安定感で大会を制した。3位決定戦では再びゴール前でミスを犯した楢崎に勝利した抜井が、国内シニア大会初の表彰台を決めている。

 スピード種目初の国内公式戦は厳しい寒さでの開催となったが、決勝には入場口付近まで膨れ上がるほどの観客が詰めかけるなど盛況に終わり、国内普及に向けた確かな一歩を踏み出してその幕を閉じた。そして3週間後の3月2、3日には、今年3度目のジャパンカップ、リードジャパンカップが控えている。

ファイナルを登り終え、優勝の味をかみしめる池田雄大。

池田は2位となった藤井快と健闘を称え合う。

楢崎智亜は準決勝、3位決定戦と続いてゴール手前でのフォールとなってしまい4位に終わった。

 

野中生萌コメント
「とても寒くて悪い条件でしたが、優勝したいという思いで臨んだ大会なので、実際に優勝することができて嬉しいです。ミスをしなければ勝てるという自信は付いてきました。でも決勝では序盤でミスが出てしまい焦りましたが、なんとか巻き返せてよかったです。ボルダリング、スピードと幸先のいいスタートが切れました。次のリードは自分より強い選手がたくさんいますが、決勝に進めるように頑張りたいと思います」
 

池田雄大コメント
「スピード単種目の競技者として、これは(1位を)獲るべきだと思っていました。タイムはこれで優勝できるの?という結果だったと思いますが、隣の選手に『次は池田と当たるんだな』と多少なりとも圧は与えられていたと思います。相手がスリップした時に絶対に落ちない登りに切り替えるという面でも、日々の練習を活かすことができました。直近の目標は、日本のW杯派遣基準タイムでもあり、W杯で決勝トーナメントに進出できる目安の6秒2を出すことです」
 

<女子決勝>

1位:野中 生萌(21/XFLAG)/9秒388
2位:伊藤 ふたば(16/TEAM au)/9秒658
3位:野口 啓代(29/TEAM au)/10秒919
4位:中村 真緒(18/青山学院大学)/11秒342

<男子決勝>

1位:池田 雄大(21/千葉県山岳連盟)/8秒230
2位:藤井 快(26/TEAM au)/11秒469
3位:抜井 亮瑛(15/香芝市立香芝北中学校)/7秒211
4位:楢崎 智亜(22/TEAM au)/記録なし(フォール)

※左から氏名、年齢、所属、記録
※1・2位は決勝、3・4位は3位決定戦の記録

出場選手など詳細は大会特設サイトから

CREDITS

取材・文 編集部・篠幸彦 / 写真 窪田亮

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