ボルダリングで獲得した銀メダルを掲げる野口啓代

【選手・コーチコメント】世界選手権を終え、野口啓代らが帰国

 18日、オーストリア・インスブルックで開催された世界選手権2018を終え、野口啓代、小武芽生、楢崎智亜らが帰国。到着した羽田空港で取材に応じた。選手たちは世界最高峰の舞台で得た収穫や課題を挙げ、「今はヤンヤとジェシカに勝てる実力がない。本当に冬場のトレーニングが勝負」(野口)、「練習量を今年の冬は増やしたい。特にリードの持久的な練習が足りていない」(楢崎)と話すなど、早くも来シーズンを見据えているようだった。

 
【小武芽生コメント】
― 初出場の世界選手権でリード4位に入りました。
「今年一番狙っていた大会でトレーニングの成果を出すことができて嬉しかった気持ちと、メダルが欲しかったという悔しさがあります。決勝では腕がパンプして全身が疲れるくらい力を出し切れたので、『あぁ、良かった』って自然と笑顔になれました」

― 今年リードの調子が良いですが、要因は?
「大きくトレーニング内容を変えたわけではなく、7月にインスブルックで練習をした時すごく壁が大きくて、いつものペースだとすぐ疲れて登りきれなかったんですね。もともとタイムオーバーになるくらい登るのが遅かったので、どんどん突き進んでいくことを意識してトレーニングするようにしました。そしたら大会でもテンポよく無駄なレストや動きがなく登れるようになって、結果にも繋がっているのかなと思います」

― 今後に向けては。
「ボルダリングだと自分の得意な課題に全部ハマったらそれで順位が良かったりするんですけど、リードは本当に実力次第なので、またトレーニングを重ねて来年も頑張りたいと思います」

 
【野口啓代コメント】
― 世界選手権を終えて。
「2週間すごく長かったですね。各種目に出たので、大会に4つ出ているような感覚でした。今シーズンの疲労が溜まってきていて、パフォーマンスがちょっと下がっている状態での世界選手権になってしまったんですけど、過去2大会の3位から少しでもリザルトを上げられたことは良かったと思っています」

― 複合では4位でした。
「表彰台には確実に乗りたいと思っていたんですが、1種目めのスピードでヤンヤ(・ガンブレット)よりも良い順位を取らないと優勝のチャンスがないんじゃないかと思っていたので、攻めにいった結果フォルススタートしてしまいました。ミスにはなりましたが、優勝を狙って攻めることができたのはすごく良かったと思っています」

― はじめて世界の選手と国際大会で戦いました。
「ヤンヤはボルダーとリードの強さで優勝しましたし、まだ世界的に見たら3種目万能の選手はいなくて。ただ2位の(サ・)ソルは(8月下旬に開催された)アジア競技大会に向けて3種目のトレーニングを冬場からやってきていると言っていて、韓国はトレーニングがしっかりできているなと感じました。リードはヤンヤ、ジェシカ(・ピルツ)がすごく強い。リードで強い選手に勝つためにはトレーニングにかけてきた時間だったり、技術的なものが大きいので、調子が良かったから勝てる種目ではなく、練習の積み重ねが本当に大事になってきます。今の状態ではトップの2人にはどういったタイプの課題が来ても勝てる実力がないと感じているので、本当に冬場のトレーニングが勝負だなと思っています」

 
【楢崎智亜コメント】
― 世界選手権を終えて。
「今年一番目標にしていた大会で、表彰台に立てずに終わってしまったのですごく悔しいです。コンバインドはスピードでのフライングがめちゃくちゃ痛かったですね。ヤコブ(・シューベルト)とアダム(・オンドラ)がいたので、リードでの1、2位を狙いづらい状況の中でスピード6位ではもう優勝はなくなったというか。表彰台も厳しいんじゃないかという気持ちになってしまいました」

― フライングは焦りがあった?
「若干音を勘違いしているとこがあって。いつもカウントダウンで『プップップ』の最後のプが鳴ったら(スタートしても)okなんですけど、今回はその音が消えてから出ないとダメで、それを知らなくて(笑)。もっとゆっくり出ても勝てる相手ではあったんですけど、変にタイムを狙いにいったところがいけなかったんだと思います。スピードの選手は自分の6割だったり8割だったり、力を調整して登る技術を持ってるんですけど、まだ自分にそこまでの技術がない」

― 今後の強化については。
「もともと3種目それぞれの練習量を今年の冬は増やしたいと思っていて、中でもリードの持久的な練習が全然足りないなと思いました」

 
【安井博志ヘッドコーチコメント】
― コンバインドはメダルなしとなりました。
「悔しさが残る大会となりました。最終日までは予定通りで、コンバインド決勝も男子が3名、女子が2名進んだ。特に男子はできすぎなくらい。でも、まさかスピードであんなに躓くとは思わなかったですね。まずはスピードからリズムを作ろうとミーティングも重ねてきましたので。あれだけの歓声を受けても落ち着いて登れることや、スタートのタイミングの取り方がまだ足りておらず、細かい部分がまだまだだと思います。

 その後の選手からは、得意なボルダリングでいつもと違った感じが見受けられました。印象的だったのが(第3課題の)スタートで4点支持をしてからスタートしなきゃいけないところを、楢崎が3点支持でパッと行ってしまって。今シーズン彼のこのようなシーンは一度も見たことがなかったので、思ったよりも気負っているなと」

― ボルダリング単種目では原田海選手が世界王者となりました。
「まだまだ若いので波が大きいんですけど、世界選手権に対する思いが元々強かったですし、(8月の)世界ユースで本当に悔しかったと彼は言っていた。その悔しさを受けていかに行動を変え、結果に繋げるかというミーティングを重ねてきました。世界ユースで流したその悔し涙が、次は嬉し涙に変わり私もすごく嬉しくなりましたし、チーム全体が祝福した素晴らしい瞬間でしたね」

CREDITS

取材・文・写真 編集部

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