原田海、新たな世界王者に!/IFSCクライミング世界選手権2018【男子ボルダリング】
15日、オーストリア・インスブルックで開催中の世界選手権2018で男子ボルダリング決勝が行われ、日本の原田海が世界選手権初出場にして初優勝の快挙を成し遂げた。これで男子ボルダリングは前回大会の楢崎智亜に続き2大会連続での日本人優勝となった。2位はチョン・ジョンウォン(韓国)、3位はグレゴール・ヴェゾニック(スロベニア)という結果となり、その他の日本勢では渡部桂太が4位、藤井快が5位に終わった。
今シーズンのボルダリングW杯年間王者であるイェルネイ・クルーダー(スロベニア)や同2位の楢崎智亜が敗退するなど、ハイレベルな戦いとなった準決勝を日本勢から原田、渡部、藤井の3人が勝ち上がった。誰が優勝するかまったく予想のつかない最終ラウンドの第一課題。先頭のネーサン・フィリップス(イギリス)が、ダイナミックに横移動するコーディネーション系のムーブを決めてゾーンを獲得。5トライ目で完登するとあとの5人全員がそれに続き、一撃したチョンがアテンプト数で一歩リードした。
第2課題ではスラブ壁の足場の悪いフットホールドを横移動でゾーンが掴めるかがポイントとなった。それを最初に攻略したのが、スラブを得意とする2番手の渡部。1トライ目は失敗するが、2トライ目で軽やかにゾーンに飛びついてそのまま完登した。その後に原田が一撃で続くと、ヴェゾニック、チョンもアテンプトを重ねながらTOPまでたどりつき、4人が2完登で並んだ。一方、フィリップスと藤井はゾーン獲得もならず、上位から引き離される。
第3課題はゾーン獲得後のハリボテに付いた小さなホールドを止められるかが勝負を分けた。フィリップス、渡部が攻略の糸口も掴めずに終えると原田が魅せる。ハリボテのホールドにランジで飛びつくと、剥がされそうになるところで右足をうまく使って止め切り、3トライ目で完登。チョンと藤井も2トライで完登し、優勝の行方は3完登で暫定首位の原田と2位のチョン、それを2完登のヴェゾニック、渡部、藤井が追いかける展開となった。
そして最終課題。完登で優勝の可能性を残したい渡部だったが終了間際のゾーン獲得で終える。続く原田は1トライ目でゾーンを両手と左足をうまく連動させて止めると一撃。これで完登に要したアテンプト数の差でチョンに上回られることがなくなったため、原田の優勝が確定。新たな世界王者となった19歳は、壁から降りると顔を両手で覆い、大粒の涙を流した。その後、4番手のヴェゾニックが完登して3位、ゾーンを獲得したチョンが2位となった。
国内外含め、シニアの公式大会では表彰台に乗ったことのなかった原田が、この大舞台でただ一人4課題を全完登し、初優勝で世界チャンピオンという偉業を成し遂げた。
原田海コメント
「まだ実感が湧かなくて、今の状況を把握できていない感じです。最終4課題目を登った後は、何かが頭をよぎったということではなく、ただただ涙が溢れてきました。アテンプト勝負になることはわかっていましたが、あまり意識をし過ぎずに『いつも通りに』と自分に言い聞かせて、目の前の課題を登ることに集中するようにしました。今まで苦労ばかり掛けてきたお母さんにありがとうと伝えたいです」
渡部桂太コメント
「今シーズンのベストパフォーマンスになりました。ファイナルに残れたことはとても嬉しいです。第4課題、がむしゃらに挑んでゾーンが獲れたシーンは、完登にこそ繋がりませんでしたが、大きな収穫になったと感じています」
藤井快コメント
「準決勝にピークが来てしまったかもしれません。ファイナルは第2課題のスラブにまったく対応できなかったのがすべてです。今後に向けてトレーニングすべき課題を見つけることができました」
楢崎智亜コメント(準決勝敗退)
「体も動いていて調子は良かったので、悔しいです。3課題目のゴール獲りにハマってしまいました。この結果を受け止めて、しっかりとコンバインドに繋げていきたいです」
安井博志ヘッドコーチコメント
「原田は試合前に私に『僕がメダルを獲りますよ』と言ってくれました。タイミングよく体を動かすことが求められる決勝でしたが、彼はすべてがピタッとハマった。見ている我々も登っている本人も気持ちがいいクライミングで、まさに『神ってる』状態ですね。日本チーム最年少の彼が躍動したことで、明日の複合に向けて大きなモチベーションをもたらしてくれました」
<決勝リザルト>
1位:原田 海(19)/4t4z 7 6
2位:チョン・ジョンウォン(22/韓国)/3t4z 9 10
3位:グレゴール・ヴェゾニック(23/スロベニア)/3t4z 9 17
4位:渡部 桂太(25)/2t4z 6 10
5位:藤井 快(25)/2t2z 5 4
6位:ネーサン・フィリップス(24/イギリス)/1t2z 5 6
―――――
7位:楢崎 智亜(22)※準決勝進出
15位:緒方 良行(20)※準決勝進出
23位:高田 知尭(23)
27位:杉本 怜(26)
37位:楢崎 明智(19)
※左から氏名、年齢、所属国、決勝成績
※決勝成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数
リザルト詳細は国際スポーツクライミング連盟/大会ページから
日本代表出場選手、大会スケジュールなどはコチラから
CREDITS
取材・文 篠幸彦・編集部 / 写真 窪田亮