野口啓代が世界2位に輝く/IFSCクライミング世界選手権2018【女子ボルダリング】
14日、オーストリア・インスブルックで開催中の世界選手権2018で女子ボルダリング決勝が行われた。優勝はヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)で、前回大会のリードに続きボルダリングでも世界選手権を制覇。続く2位には野口啓代が入り、3位はスターシャ・ゲヨ(セルビア)という結果となった。同じく決勝に進出していた野中生萌は5位に終わった。
世界女王を決める決戦には、完登者が少なく、厳しい課題が続いた予選、準決勝を勝ち抜いた6名が進出。準決勝首位通過のガンブレット、今大会でリード優勝のジェシカ・ピルツ(オーストリア)、前回大会女王のペトラ・クリングラー(スイス)らが顔をそろえ、日本の野口、野中の2人も期待通りに決勝へ駒を進めた。
最終ラウンドも第1課題から高難度課題となった。スタートから連続した動きが続くコーディネーション系の難しいムーブを求められると、先頭の野中はゾーンも掴めずに終える。次のゲヨが5トライ目でゾーンを掴んだが、後続は軒並みゾーンまでたどり着けず。そんな中、最後に登場したガンブレットは2トライ目に華麗なムーブからTOP目前まで迫ると、3トライ目に攻略しこの課題唯一の完登者となった。続く第2課題もキャンパから頭上に足先をかける序盤が難関となり、完登者は出ずに唯一ゾーンを獲得したガンブレットがさらにリードを拡げた。
続くスラブ壁の第3課題では、ここまで一つのゾーンも掴めていない野中が3トライでゾーンを獲得。しかし、TOP手前のクレーターを止められず、完登はならなかった。すると次のゲヨがそのクレーターを止めて一撃し、難所続きの展開から圧巻の一撃で会場を一気に盛り上げた。そこに続いたのが野口だった。野口は1トライで野中と同じく決勝初のゾーンを獲得すると、2トライ目で完登。上位争いに踏みとどまったが、暫定首位のガンブレットも完登を記録したため、最終課題で完登したとしてもゾーン獲得数の差で及ばない野口の優勝の可能性は潰えた。
女王の座はガンブレットとゲヨの2人に絞られて迎えた最終課題。一つでも完登を記録したい野中だったが、1トライ目のゾーン獲得で力尽きる。W杯年間女王として臨んだ今大会だったが、リード予選で痛めたという肩の負傷の影響もあり表彰台に上がることはできなかった。優勝の可能性を残すゲヨは、ここまでで力を使い果たしたのか、精彩を欠いてゾーンも獲得できず。この時点でガンブレットの優勝が確定した。野口は優勝こそ逃したが、完登できれば銀メダル獲得というトライ。持ち前のしなやかさと保持力の強さで見事に2トライで攻略し、銀メダルを手中に収めた。優勝を決めたガンブレットはゾーンまでたどりつけなかったものの、最終トライを終えるブザーがなった瞬間に歓喜のあまり泣き崩れ、観客はスタンディングオベーションで祝福した。前回大会でリード制覇を成し遂げたガンブレットは、ボルダリングでも世界女王の座につくこととなった。
野口啓代コメント
「ファイナルの課題は今年のW杯では体験したことのないレベルの難しさで、オブザベーションをした時点では4本とも登れるイメージが持てませんでした。第1課題、第2課題でまったく対応できず、気持ちが切れてしまいそうになりましたが、ここまでタフなシーズンを戦ってきた自分を信じて、何とか立て直すことができました。過去2回の世界選手権では3位だったので、順位を上げることができて嬉しいです。ヤンヤはすべての課題、コンペに全力で挑んでいて尊敬している。私は彼女を追う立場なので、少しでも追いついていきたいです」
野中生萌コメント
「リードの予選で肩を痛めてしまい、ボルダーが始まった時にはファイナルをイメージするのが難しいくらい状態は良くなかったです。それでもファイナルでは諦めることなく最後に順位を一つ上げることができました。今の自分にできることはすべて出し切れたと感じています。ただ望んできた結果ではなかったので、本当に悔しいです。怪我をしたこと、その状況のなかでも勝負をしたこと、すべてが次に繋がると信じています」
<決勝リザルト>
1位:ヤンヤ・ガンブレット(19/スロベニア)/2t3z 7 7
2位:野口 啓代(29)/2t2z 4 3
3位:スターシャ・ゲヨ(20/セルビア)/1t2z 1 6
4位:ジェシカ・ピルツ(21/オーストリア)/0t2z 0 4 ※準決勝4位
5位:野中 生萌(21)/0t2z 0 4 ※準決勝6位
6位:ペトラ・クリングラー(26/スイス)/0t0z 0 0
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25位:小武 芽生(21)
※左から氏名、年齢、所属国、決勝成績
※決勝成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数
リザルト詳細は国際スポーツクライミング連盟/大会ページから
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CREDITS
文 篠幸彦 / 写真 窪田亮