男子でも地元のオーストリア勢が優勝を決める。日本人最高は楢崎明智の4位/IFSCクライミング世界選手権2018【男子リード】
10日、オーストリア・インスブルックで開催中の世界選手権2018で男子リード決勝が行われた。優勝は地元・オーストリアのヤコブ・シューベルトで、2012年以来2度目の栄冠。日本勢のファイナリストでは楢崎明智が4位、高田知尭が6位、原田海が10位となった。
決勝の約4時間前まで行なわれていた準決勝には、日本勢から5名が進出。3種目での成績に期待がかかる楢崎智亜、今季リードW杯で躍進を遂げた田中修太の2人が敗退するも、智亜の弟である楢崎明智、原田、高田の3人が最終ラウンドへ進むことに成功した。また、同率5位に6人が並ぶ接戦となり、決勝は10人により争われた。
決勝戦の先頭を登る同大会初出場の高田は、終盤手前まで高度を伸ばすと30のホールドに右手を伸ばしたところで右足がスリップ。29+でフォールとなった。続いて登場したのは同じく初出場の原田だったが、トウフックから体を入れ替えるムーブのミスにより序盤の16+で終えてしまう。
そして4番手に大会2連覇中のアダム・オンドラ(チェコ)が登場すると、観客の大歓声で空気が一変する。会場の音楽に合わせて手拍子が湧き起こり、オンドラもそれに応えるように記録を伸ばしていく。最終的には高度36まで到達したのち、37のホールドに右手を伸ばすが掴みきれずにフォール。落下直後、雄叫びをあげて悔しさを爆発させるも、2位以下を大きく引き離す36+で暫定首位についた。
続くマルチェッロ・ボンバルディ(イタリア)、サッシャ・レーマン(スイス)が序盤で終了すると、7番手の楢崎に出番が回ってくる。日本出発の直前まで兄・智亜と持久力を高めるトレーニングを行い、世界選手権でまず初めに行なわれるリードに照準を合わせてきたという楢崎は、高田、コーンクニーの29+を通過し、高度32のスローパーに手を伸ばしたが止めきれずにフォール。悔しさに頭を抱えるも、緊張でガチガチだったという初出場の世界選手権パリ大会(29位)から2年、堂々の成績を残し暫定2位で競技終了となった。
8番手は7月のブリアンソン大会でリードW杯初優勝を果たしたアレクサンダー・メゴス(ドイツ)。メゴスは楢崎の高度を通過すると、オンドラの36+を目前に捉えながら33.5でフォールした。楢崎を抜く暫定2位の好記録に観客から惜しみない拍手が送られる。
そしてこの日一番の拍手で迎えられたのが地元のシューベルト。今季W杯で2度の優勝と好調のシューベルトは、前回大会の決勝ではオンドラに敗れて2位となっていた。地元でのリベンジに期待がかかるなか、シューベルトはメゴスの高度を通過し、オンドラと同高度の36を左手で掴むと歓声は最高潮に達する。そして37に伸ばした右手はホールドをかすめてフォール。準決勝のカウントバックでシューベルトがオンドラを抜いて暫定首位に立つ。そしてその後の最終競技者ドメン・スコフィッチ(スロベニア)が29+で終えたことで、女子のジェシカ・ピルツ(オーストリア)に続き、リードは男子も地元のシューベルトが世界王者となった。
<決勝>
1位:ヤコブ・シューベルト(27/オーストリア)/36+ ※準決勝2位
2位:アダム・オンドラ(25/チェコ)/36+ ※準決勝5位
3位:アレクサンダー・メゴス(25/ドイツ)/33.5
4位:楢崎 明智(19)/31+
5位:ドメン・スコフィッチ(24/スロベニア)/29+ ※準決勝1位
6位:ヤコブ・コーンクニー(19/チェコ)/29+ ※準決勝6位
6位:高田 知尭(22)/29+ ※準決勝6位
8位:サッシャ・レーマン(20/スイス)/23
9位:マルチェッロ・ボンバルディ(25/イタリア)/20+
10位:原田 海(19)/16+
―――――
13位:楢崎 智亜(22)※準決勝進出
17位:田中 修太(17)※準決勝進出
27位:藤井 快(25)
31位:緒方 良行(20)
73位:杉本 怜(26)
※左から氏名、年齢、所属国、決勝成績
リザルト詳細は国際スポーツクライミング連盟/大会ページから
日本代表出場選手、大会スケジュールなどはコチラから
CREDITS
文 篠幸彦 / 写真 アフロ