野中生萌、野口啓代との接戦を制し初の年間女王に輝く/ボルダリングW杯2018最終戦 ミュンヘン大会
17・18日、ボルダリングW杯2018の最終戦となる第7戦がドイツ・ミュンヘンで行われた。女子はヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)が第2戦以来の優勝。野中生萌が2位、野口啓代が3位となり、野中が初の年間女王の座に輝いた。男子はグレゴール・ヴェゾニック(スロベニア)が初めてW杯を制し、2位のイェルネイ・クルーダー(スロベニア)は野中と同じく初の年間優勝を果たした。クルーダーを4ポイント差で追っていた楢崎智亜は9位に終わり、年間2位に終わった。
女子決勝には年間優勝の行方をこの一戦にかける野口、野中の2人が揃って進出を決め、第3戦以降を欠場していたガンブレットもファイナリストに名を連ねた。そして第1課題からこの3人による熾烈な完登劇が繰り広げられた。まずは野口がスタート直後のスラブの難しいムーブを3トライで完登すると、続く野中が2トライで攻略してみせる。しかしガンブレットがこれを一撃し、わずかなアテンプト差で首位に立った。
第2課題をエカテリーナ・キプリーアノワ(ロシア)以外の5人が一撃し、迎えた第3課題。前を登るキプリーアノワ、カーチャ・カディッチ(スロベニア)がゴール取りに苦戦してゾーン獲得で終えると、野口は保持力の強さを見せて2トライで完登。会場の歓声も一気にボルテージがあがった。しかし、野中とガンブレットが一撃で攻略し、さらにアテンプト差を広げ、ハイレベルな優勝争いは最終課題に委ねられた。
ここでの優勝だけでなく、年間優勝をするためには野中を上回り、最低でも2位以上が必要な野口は、アテンプト差を考えると一撃したい場面。スタートから慎重にゾーンを掴むと、3連続のスローパーを力強く止めて見事に一撃する。野口の渾身のトライで、野中は年間優勝に2アテンプト以内の完登が必要となった。しかし、野中はプレッシャーを感じさせない安定した登りで一撃。初の年間優勝をたぐり寄せ、完登後は涙があふれ出る感動的なシーンとなった。その後、ガンブレットが決勝4課題すべてを一撃というパーフェクトな登りで優勝をものにし、3人が4完登で並ぶという名勝負を締めくくった。
熱戦の余韻が残るなか行われた男子決勝だが、楢崎智亜が準決勝で敗退し、クルーダーが決勝に残ったことで年間優勝はクルーダーに決定。ファイナルへは日本勢からは緒方良行と初のW杯決勝となる藤脇祐二が進出した。最終ラウンドは第1課題から局面が動く。先頭のヴェゾニックがいきなりの一撃で会場を湧かし、あとを登る5人もこれに続くと思われた。しかし、なんと5人ともゾーンも獲得できず。ヴェゾニックが大きなアドバンテージを得る。第2課題、ヴェゾニックがゾーン獲得で終えると、ヤコブ・シューベルト(オーストリア)とクルーダー、緒方がアテンプトを重ねながらも完登し、4人が1完登で並んだ。
第3課題は5人がゾーン獲得で終わる中、ここまでゾーンも掴めていなかった藤脇が一人完登を記録して準決勝1位通過した実力をみせる。そして最終課題、完登できれば初優勝が決まるヴェゾニックが一撃。TOPを掴んだ直後、嬉しさから思わず泣き崩れた。最終的に全員が完登し、クルーダーが2位、シューベルトが3位で表彰台に上がった。そして緒方は惜しくも4位、藤脇も初の決勝で2完登し、5位で終えた。
これでボルダリングW杯の2018シーズンが終了。女子では年間順位で野中、野口がワンツーフィニッシュという素晴らしい成績を残し、16歳の伊藤ふたばもW杯初参戦ながら年間8位と健闘した。男子は楢崎智亜が2位、杉本怜が初の年間表彰台となる3位に入った。
<女子決勝>
1位:ヤンヤ・ガンブレット(19/スロベニア)/4t4z 4 4
2位:野中 生萌(21)/4t4z 5 5
3位:野口 啓代(29)/4t4z 7 6
4位:ファニー・ジベール(25/フランス)/1t4z 1 8
5位:カーチャ・カディッチ(23/スロベニア)/1t2z 1 5
6位:エカテリーナ・キプリーアノワ(28/ロシア)/0t3z 0 5
―――――
7位:伊藤 ふたば(16)※準決勝進出
10位:中村 真緒(18)※準決勝進出
11位:小武 芽生(21)※準決勝進出
19位:倉 菜々子(18)※準決勝進出
23位:尾上 彩(22)
31位:杉村 紗恵子(25)
33位:金子 桃華(18)
35位:菊地 咲希(15)
<男子決勝>
1位:グレゴール・ヴェゾニック(23/スロベニア)/2t4z 2 13
2位:イェルネイ・クルーダー(27/スロベニア)/2t3z 9 7
3位:ヤコブ・シューベルト(27/オーストリア)/2t3z 9 11
4位:緒方 良行(20)/2t3z 11 13
5位:藤脇 祐二(22)/2t2z 5 5
6位:ミカエル・マウェム(28/フランス)/1t2z 1 3
―――――
7位:藤井 快(25)※準決勝進出
8位:杉本 怜(26)※準決勝進出
9位:渡部 桂太(24)※準決勝進出
9位:楢崎 智亜(22)※準決勝進出
13位:石松 大晟(21)※準決勝進出
17位:高田 知尭(23)※準決勝進出
19位:波田 悠貴(21)※準決勝進出
27位:土肥 圭太(17)
35位:原田 海(19)
57位:村井 隆一(24)
※左から氏名、年齢(大会初日時点)、所属国、決勝成績
※決勝成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数
リザルト詳細は国際スポーツクライミング連盟/大会ページから
ボルダリングW杯2018年間ランキング
【女子】
1位:野中 生萌(20)/500pt
2位:野口 啓代(28)/495pt
3位:ファニージベール(25/フランス)/320pt
4位:ヤンヤ・ガンブレット(19/スロベニア)/280pt
5位:カーチャ・カディッチ(23/スロベニア)/246pt
【男子】
1位:イェルネイ・クルーダー(27/スロベニア)/453pt
2位:楢崎 智亜(21)/400pt
3位:杉本 怜(26)/334pt
4位:アレクセイ・ルブツォフ(30/ロシア)/296pt
5位:グレゴール・ヴェゾニック(23/スロベニア)/280pt
ボルダリングW杯2018国別ランキング
1位:日本/2269pt
2位:スロベニア/1344pt
3位:フランス/823pt
4位:オーストリア/735pt
5位:ロシア/591pt
※国別ポイント=W杯全戦の国別男女各上位3選手の合計ポイント
CREDITS
文 篠幸彦 / 写真 IFSC/Sytse van Slooten