OnlineObservation Monthly Selection Vol.3「Nuremberg Bouldercup 2017 決勝課題(ドイツ)」
壁を3Dスキャンすることで、WEB上での課題閲覧を可能にした「OnlineObservation(オンライン・オブザベーション)」。OnlineObservationとのコラボレーションでお届けする本連載では、膨大なアーカイブの中から毎月厳選した魅力的な課題を紹介していく。このサービスを体感していただくことはもちろん、課題に込められたセッターの思いなども感じてもらいたい。
OnlineObservationって何だ?開発者インタビュー
今月のピックアップは、ドイツ・ニュルンベルクにあるボルダリングジム「Boulderhalle(ボルダーハレ)E4」で昨年開催された「Nuremberg Bouldercup 2017」の決勝課題。実際に同地を訪れたサービス開発者の筒井氏によれば、この壁は「日本でも目にする『隣の倉庫も借りました』的な感じで拡大オープンしたフロアにある、コンペウォール」で、そこにハリボテ(※)を左右対称のように配置し、同時に登らせるコンペ演出のテクニックが光る課題となっている。初見で最適なムーブを思いつけるか、さっそくクリックしてオブザベーションしてみよう。
※壁から出っ張っている大振りなホールド。海外ではボリュームと呼ばれることが多い。
Vol.3「Nuremberg Bouldercup 2017 決勝課題 in Boulderhalle E4」
店名:Boulderhalle E4
ウォール:コンペティション壁
セッター:Dirk Uhlig(ディルク・ウーリヒ)
グレード:7a(1級)
使用ホールド:Squadra、Voltomic
<3Dスキャン>
筒井氏はこのジムについて「パッと見てもわかるような巨大な壁面積はもちろん、併設されたカフェ、ショップ、交流が生まれるキッズエリア、ヨガ・レクチャールームなどなど、東京ではなかなか実現させにくい設備が集まりしっかりと機能していて素晴らしいですよね。ほかにも海外では国営ジムも増えつつあるなど、その幅も拡がってきています」と説明する。
左右対称的な本課題については「左が男性、右が女性の決勝課題でした。男ならやっぱりこういうデザインしますよね(笑)。ボテを縁取っているテープはブラックライト対応で、これもまた大会を盛り上げています」とその印象を話すと、話題はコンペ方式に及ぶ。「この課題の見た目のように、世界ではまったく同じ課題を2つ並べてタイムを競わせる『デュアル方式』や、足をホールドに乗せてはいけない『ノーフット』コンペ、ダイノ(ランジ)をフィーチャーしたものなど様々なコンペが行われています。デュアル方式だと、AdidasRockstarsのスーパーファイナルで採用されているのが有名です」
日本国内でもこのようなユニークなコンペを開催するジムが見受けられる今日。あなたも一風変わったコンペティションに参加してみてはいかがだろうか。
そして今回、筒井氏にセッターでありこのジムの共同オーナーであるディルク・ウーリヒ氏に話を伺ってもらった。ウーリヒ氏は、2月に強化合宿のために日本を訪れたドイツ代表チームに帯同した人物でもある。
―― このコンペ壁を建てた際のポイントは?
「ボルダー課題10個を配置するのに十分なスペースに、スラブから垂壁、傾斜まで4、5種類の壁をコンペティター全員に見えるよう直線的に並べました。ボテと壁だけで楽しめるようなギミックも取り入れたいと思っていました。もちろん観衆のためのスペースも忘れていません」
<コンペ壁丸ごとスキャン>
―― では、ルートセットをする上で一番こだわっている点は?
「コンペスタイルで、かつ普段なかなか目にすることのないような課題をセットしたいと思っています。日本で言えばB-PUMP荻窪のスタイルに近いかもしれません。よくジムにある普通のパルクール(コーディネーション)課題とは差別化を図っています」
―― 壁にはよく(コミックの)『トランスフォーマー』を模したデザインのボテ課題が登場していますね。どんな思い入れがあるのですか?
「私のこだわりは、全ての壁の形状をボテで変化させること。いつもそのアイデアが実現できるボテを探していて、仲の良いホールドメーカー『Voltomic』にボテを作ってもらったりしています。私にとって『トランスフォーマー』は変化のスピードが速い流行のシンボル。簡単にジム中の壁を移り回る様子は見ていて楽しいし、ルートセットはいつも自分にとっての新たな挑戦です」
―― 先月はドイツ代表合宿で日本にも来ていましたね。日本の読者に向けて一言どうぞ!
「ドイツチームのテクニカルアドバイザーとしてトレーニングコンペをセットしに行きました。私のムーブのアイデアを壁に移し、選手がそのムーブを理解する。もしできなくても、アドバイスを受けてそのムーブを習得するチャンスがある。選手の成長過程でアドバイスを受けるというのはとても大切なことです。今回の合宿は東京オリンピックに向けて最適なステップでした。選手が国の文化や、日本でのふるまいに慣れることができましたし(星さんをはじめ日本チームのみんな本当にありがとう!)、日本のジムの良さを感じられて、次のコンペセットのためのアイデア収集も完璧でした。大都会の中で道に迷いましたが(笑)、健康的な食事と親切で親しみやすい人々が素晴らしかった」
<ムーブ動画>
OnlineObservation(オンライン・オブザベーション)
3D化された課題の写真や動画をPC・スマホで自由に“オブザベ”でき、かつ今までになかったライブラリとして誰でも共有、自由に投稿も可能な新時代のサービス。クライマーが閲覧することはもちろん、ルートセッターの課題ライブラリとして、クライミングジムのPR効果を狙ったメディアとしても活用されている。
OnlineObservation 公式サイト
CREDITS
取材・構成・文 編集部・OnlineObservation