怪我から復帰の楢崎明智らが優勝/日本ユース選手権リード競技大会2018
26日、日本ユース選手権リード競技大会2018(松山下公園総合体育館=千葉県・印西市)の決勝が行われ、男子ジュニアカテゴリーでは楢崎明智が大会2度目の優勝を飾り、女子ではユースBの谷井菜月が予選から唯一の全ルート完登で国内大会初の頂点に輝いた。
24、25日に各1ルートづつ登る予選を終えて迎えた決勝。今年がユース年代最後の年となる楢崎が見事に怪我からの復活を遂げた。2月3、4日に行われたボルダリングジャパンカップ(BJC)で、ウォーミングアップ中に突如腰に激痛が走った。「元々1週間くらい痛みはあったんですけど、シューズを取ろうとしたら身体が痺れて。みんなが出る中で出場できず、とても悔しかったです」。その1カ月後に予定されていた日本選手権リード競技大会もキャンセルし、トレーニングへのモチベーションを失いかけていた時に、父親の言葉で目覚めたという。「『これから先、君はプロになるんだから、出られる大会に自分のベストを尽くしていかないのはプロとして失格だよ』って父から言われて。ビビっときましたね。平昌オリンピックで羽生(結弦)選手も怪我をしてたのにしっかり調整して自分のベストを出したじゃないですか。だから僕も見習って頑張らなきゃと思って、めちゃくちゃ練習しました」。こう話した楢崎は、予選2ルートを両完登すると、この日の決勝ではTOPまであと4手となる32+の記録を残し、今季初出場の大会で頂点に立った。また、同カテゴリーでは第2期オリンピック強化選手に入ることが濃厚な土肥圭太が、先月の日本選手権に続いて2位に入り好調を維持している。
一方女子では昨年の世界ユース複合種目(ユースB)で優勝した谷井が躍動する。同い年で先月の日本選手権を優勝した森秋彩(もり・あい)が体調不良で欠場となるなか、着実に結果を残していく。ジュニアからユースCまで同じルートで争われた今大会(決勝はユースCのみ一部異なる)だが、予選2ルートを女子出場全選手の中で唯一両完登すると、決勝でも多くの選手が苦戦した高度19をスムーズに通過。そのまま最後のクイックドローにロープをかけ、女子決勝ルートでただ一人の完登者となった。このほか、今年からユースAにカテゴリーが上がった伊藤ふたばも予選、決勝とも首位を維持し、大会3度目の金メダルを獲得している。
楢崎明智コメント
「医師からは軽度の椎間板ヘルニアだと言われましたが、ほぼ完治して今日も問題はなかったです。競技前はやっと大会で登れるってニコニコしちゃってました(笑)。(BJCと日本選手権の欠場によりW杯出場は未定だが)気持ちを切り替えて、この1年はしっかりとトレーニングを重ねていきたい。実際に今大会に向けていつも以上に練習をした結果、持久力が上がった実感があります。もっと練習をすることで、実力が上がるはず。今シーズンは、世界ユース選手権(8月)で3種目優勝したいですね」
土肥圭太コメント
「記録はもっと出せたと思うので満足はしていません。一回カンテ(壁の端)を中継してたら落ちた一手も止まったんじゃないかなって、その一瞬の判断力が出なかった。(競技順が)一つ前の選手だけは、ヌンチャクが揺れてるのでどこまで行ったか大体分かるんですよ。同じ所まで行ければカウントバックで勝てるっていうのが分かって、それで満足してしまいました。今後はもっとどん欲に、今まで以上に自分の実力を信じて、勝てる前提で参加しないといけないのかなと思います。最後の振り絞る力が変わってくるので。(第2期オリンピック強化選手に選ばれることが濃厚だが)まずはW杯初出場なので、準決勝に残るのが目標です。課題の傾向だったり、コンディション作りが国際大会の方が得意なので、自信をもって登れたらいいなと思います」
谷井菜月コメント
「昨日両完登できて、今日も完登したいと思っていましたが、実際にできるか不安でした。はじめての優勝でとても嬉しいです。(2020年に向けては)全体的にレベルアップしていかなくてはいけないんですけど、特にスピードの練習量を増やしていきたいです。(目標とする選手は)リード、ボルダーどんな課題でも強いヤンヤ・ガンブレット選手(スロベニア)です。彼女のように自分もどの課題でも対応できるようにしていきたい。(今季の目標は)世界ユースで金メダルを獲りたいです」
伊藤ふたばコメント
「結果的には1位だったんですけど、内容的にはあまり良くなかったと思います。いつもより動きが硬く、迷った部分もあって腕が張ってしまった。(ユースB優勝の谷井選手については)一個下なのですごく負けたくない気持ちが強いんですけど、持久力もあって、大会のときに実力をしっかり出せる選手。菜月ちゃんから学べる部分もたくさんあるので、吸収して自分も負けないように頑張りたい。(W杯については)すごく楽しみです。自分がどの位置にいるのかが全く分からないので、出場していく中で自分に足りない部分を見つけて改善していきたい。まずは出せる実力を出して、結果もついてきたらいいなと思っています」
<リザルト>
男子ジュニア(1999、2000年生まれ)
1位:楢崎 明智(18)/32+
2位:土肥 圭太(17)/28+ ※予選6位
3位:今泉 結太(17)/28+ ※予選8位
女子ジュニア(1999、2000年生まれ)
1位:高田 こころ(18)/26+
2位:森脇 ほの佳(18)/21+
3位:戸田 萌希(18)/19+
男子ユースA(2001、2002年生まれ)
1位:伊藤 寛太朗(16)/23+
2位:伊勢 一真(16)/22+
3位:西田 秀聖(15)/21.5+
女子ユースA(2001、2002年生まれ)
1位:伊藤 ふたば(15)/27+
2位:小島 果琳(16)/24
3位:栗田 湖有(15)/19+
男子ユースB(2003、2004年生まれ)
1位:抜井 亮瑛(14)/23+
2位:前田 健太郎(15)/22+
3位:村下 善乙(13)/21+
女子ユースB(2003、2004年生まれ)
1位:谷井 菜月(14)/TOP
2位:美谷島 ももか(14)/27+
3位:工藤 花(14)/21+
男子ユースC(2005、2006年生まれ)
1位:小俣 史温(12)/39 ※予選2位
2位:谷井 和季(11)/39 ※予選9位
3位:日高 清志郎(12)/29+
女子ユースC(2005、2006年生まれ)
1位:小池 はな(12)/26
2位:森 奈央(12)/19 ※予選1位
3位:小倉 紗奈(13)/19 ※予選2位
リザルト詳細は成績速報サイトから
CREDITS
取材・文 編集部 / 写真 JMSCA/アフロ