日本初となるIFSC公認仕様のスピード専用ウォールに海外トップ選手が集結!

 4月16日、東京都・昭島市のモリパークアウトドアヴィレッジに日本初となるIFSC(国際スポーツクライミング連盟)公認仕様のスピードクライミング専用ウォールが完成。そのこけら落としとして、第3回スポーツクライミング東京選手権大会のスピード種目と、エキシビジョン大会「SPEED STARS 2017」が開催された。

完成したスピードウォール

 スピードとは、毎大会同じ条件で15mの壁にセットされた同一の2本のルートを2人のクライマーが隣り合わせで登り、勝ち抜き形式で速さを競うスプリント競技。東京五輪のスポーツクライミングは、ボルダリングとリードに、このスピードを加えた3種目複合で行われる予定だ。

IFSC公認の男子世界記録は5秒60、女子は7秒53

 東京選手権大会の成年女子の部には、1週間前のボルダリングワールドカップ開幕戦(スイス・マイリンゲン)で3位に入賞した野中生萌が出場。予選で13秒85と、昨年末のフランス合宿でマークした14秒台の自己記録を更新すると、決勝も13秒87で登り切り優勝を飾った。

 成年男子の部では、スピードの韓国代表キム・ジュンジュが招待され、ボルダリング世界大学選手権優勝の渡辺海人と決勝で対決。キムが8秒57という記録を叩き出し、渡辺(12秒48)を大きく引き離して王座に就いた。

 野中は、日本初のスピード専用ウォールができたことに「やっと世界に追いついたという感じです。日本はこれまでスピード種目にまったく取り組んでこなかったので、これから積極的にここを利用して練習していきたい」とコメント。日本は昨年の国別ランキングで15位とスピード種目では世界から後れを取っており、3年後の東京五輪に向けて強化が急務とされている。

 選手権大会後、オープニングセレモニーに続いて行われたエキシビジョン大会「SPEED STARS 2017」には、スピード種目のオールスター選手が集結。女子では世界記録保持者のユリア・カプリナや昨年の世界選手権王者アンナ・ツィガノヴァ、世界ランキング1位のアヌーク・ジョベールら5人、男子も世界記録保持者のダニル・ボルドィレフ、昨年のワールドカップ&世界選手権2冠のマルチン・ジンスキら4人が参戦し、世界トップレベルのパフォーマンスを披露した。

左からボードゥイレフ、ジュベール、ブロジック、ゴンテロ、ツィガノヴァ、ココリン

 最も白熱したのは女子の決勝だ。アンナ・ツィガノヴァ対アヌーク・ジョベールという昨年の世界選手権決勝カードの再現となった。緊張感のあるバトルを制したのは、7秒71でゴールしたツィガノヴァ。ジュベールは7秒73で、その差はわずか0.02秒! 世界記録にも迫るハイレベルな戦いに会場はどよめきと喝采に包まれた。男子はボルドィレフとレオナルド・ゴンテロが決勝に進出。しかしボードゥイレフがフォールスタート(FS)で失格となり、確実に登り切ったゴンテロが優勝を果たした。

 新設されたウォールについて「文句なく世界基準だと感じた。ホールドの感触も良く、とても満足できるウォールだったわ」と語ったのは女王ツィガノヴァ。本場ヨーロッパに引けを取らない専用ウォールの誕生を機に、今後のスピード日本勢のさらなる成長に期待したい。

野中生萌、渡辺海人らと海外招待選手たち

取材・文 篠幸彦
写真 東京都山岳連盟(上から1・3・4・5枚目)/篠幸彦(2枚目)/水村信二(6枚目)

スポーツクライミング東京選手権大会/スピード
【成年男子】
1位:キム・ジュンジュ/8秒57
2位:渡辺 海人/12秒48
3位:松原 宏実/13秒26
4位:的場 栄樹/14秒30
【成年女子】
1位:野中 生萌/13秒87
2位:木暮 花/25秒62

SPEED STARS 2017
【男子】
1位:レオナルド・ゴンテロ/10秒93
2位:ダニル・ボルドィレフ/FS
3位:スタニスラフ・ココリン(準決勝 6秒24)
4位:マルチン・ジンスキ(準決勝 8秒86)
【女子】
1位:アンナ・ツィガノヴァ/7秒71
2位:アヌーク・ジョベール/7秒73
3位:アンナ・ブロジェク(準決勝 10秒71)
4位:クラウディア・ブクゼック(準決勝 10秒89)
5位:ユリア・カプリナ(予選 9秒24)

※「SPEED STARS 2017」出場選手は以下の通り。
【男子】
ダニル・ボルドィレフ(ウクライナ)
経歴:公認世界記録保持者 5秒60

マルチン・ジンスキ(ポーランド)
経歴:世界ランキング1位
   2016年世界選手権優勝
   2016年ワールドカップ総合優勝

スタニスラフ・ココリン(ロシア)
経歴:世界ランキング2位
   第1回世界大学選手権優勝
   2016年ワールドカップ優勝1回

レオナルド・ゴンテロ(イタリア)
経歴:世界ランキング7位

【女子】
ユリア・カプリナ(ロシア)
経歴:公認世界記録保持者 7秒53
   2016年ワールドカップ総合優勝

アンナ・ツィガノヴァ(ロシア)
経歴:非公認世界記録 7秒52
   2016年世界選手権優勝

アヌーク・ジョベール(フランス)
経歴:世界ランキング1位
   2016年ワールドカップ優勝4回

クラウディア・ブクゼック(ポーランド)
経歴:世界ランキング4位
   2016年ワールドカップ優勝1回

アンナ・ブロジェク(ポーランド)
経歴:世界ランキング6位
   第1回世界大学選手権優勝

スポーツクライミング東京選手権大会の詳細はコチラ

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