FEATURE 98

BJC2021 前回王者インタビュー【男子】

原田海 五輪代表の新年初戦

次に繋がる大会にしたい

公言通りのボルダリングジャパンカップ(BJC)優勝から1年。選考問題を経て東京五輪代表に内定した21歳の2021年初戦に注目だ。

※本記事は「第16回ボルダリングジャパンカップ」(2021年1月30日~31日開催)大会公式プログラムの掲載インタビューに未収録分を追加したものです(このインタビューは2021年1月10日にオンラインで収録されました)。
 
 

2020年大会は「優勝を狙っている」と公言されていた通りの結果になりました。あらためて振り返ると?

「前から掲げていた目標を果たせたので、達成感は過去一番くらい大きかったです。何カ月も前から、自分を奮い立たせるように『優勝する』と周りに言っていました。そういうことはいつも言わないんですけど、それくらい優勝したいと思っていました。世界選手権で優勝(2018年インスブルック大会)したのに日本では勝てていなかったですし、(同じ種目で)世界選手権、ジャパンカップ、W杯の3つすべてで優勝している選手がまだいないんですよ。(原田以外に日本人で世界選手権を制した楢崎)智亜くんもまだBJCでは勝てていない。僕はBJCを取れば、あとはW杯だけになることもあって狙っていました」

予選は首位、準決勝は3位通過でしたが、決勝に臨む際も調子は良かったですか?

「正直、疲れ切っていました。いつも決勝で調子がいい時って、準決勝後に体力が余っていることが多いんです。昨年のBJCは準決勝で出し切ってしまって体がバキバキで、壁の裏で待っている間は『やばいな』と思っていました」

決勝は6人中4人が完登した第1課題を登ることができませんでしたが、第2課題は一転、唯一の完登を記録しました。

「1課題目を落としてしまった後でしたし、僕の順番が来るまで誰も登れていないことがわかっていたので、『挽回するならここしかない』と強い気持ちで挑みました」

 

課題の内容はいかがでしたか?

「まずゾーン取りのところ(写真上)で、傾斜しているのに両足を張った状態で耐えないといけない難しい課題でした。さらにそこを越えて、体力が消耗する中でゴールを掴み切るのがきつかったです(写真下)。僕は一発で登れたんですけど、あの時に落ちていたらもう駄目だったと思います。2トライ以上かかっていたら成功できなかったはずです」

 

完登時には渾身のガッツポーズが出ましたが、素直に嬉しかった?

「嬉しかったというよりは、あの時は『(課題が)悪すぎだろ!』っていう叫びです(笑)」

 

第3課題は誰も登れずにリザルトは動かないまま、最終課題を迎えます。楢崎智亜選手が完登し、優勝には登り切るしかない状況になりましたが、見事に攻略し優勝を決めました。

「智亜くんが登っていて、誰にも登れない課題じゃないことはわかっていたし、登れば優勝というのもわかっていました。それに以前のリードW杯で、登れば優勝という状況で結局ダメだったことがありました。だからプレッシャーは感じず、ただ『登ればいい』としか思っていませんでした。経験が活きたんだと思います」

 

BJCは原田選手にとってどんな大会ですか?

「うーん、あまりいいイメージはないですね。これまで6回出場して、半分は予選落ちしているので。日本の選手層は厚いですし、(その年のW杯日本代表選考を兼ねている)この大会で上位を逃すと1年間代表に選ばれないことを考えたら、W杯以上に気合いが入ります。他の選手もそうだと思うんですけど、普段以上にプレッシャーが大きい大会ですね」

今大会はどのような気持ちで臨みますか?

「正直、また予選落ちするんじゃないかと内心では思っています。コロナ禍や五輪代表選考問題によるストレスもあり、12月はほとんどクライミングを休んでいました。しっかりとしたトレーニングを再開したのは今年に入ってからです。もちろん、その時にできる限りの力を出したいと思っていますが、周りの選手は調整が順調で調子が良いという話を聞くので、自分は予選敗退でもおかしくないなと感じています」

 

今大会の目標は?

「シーズン本番に向けてゆっくりと調整している段階なので、その中で改善点というか、次に繋がるものが見つかる大会になればいいなと思います。でもさすがに予選は通過したいですね(笑)」

前回大会は川又玲瑛選手や佐野大輝選手(ともに2003年生まれ)など、原田選手よりもさらに若い選手が決勝に進出しました。年下選手の台頭をどう捉えていますか?

「その年代で決勝に残るというのは、同じ頃の僕だったらあり得ないことだったので、すごいなとは思いますけど、脅威には感じていないです」

大会は無観客開催で、多くの方は画面を通した観戦になりますが、注目ポイントはありますか?

「選手一人一人が全然違う動きをして、ムーブの選択も様々なのが、クライミングを見ていて面白いところです。そこに注目してほしいですね」

2021年の抱負を教えてください。

「コロナ禍が続いている状況ですが、またいつものように大会が開催されるようになって、僕ら選手たちが活躍できる場所が戻ることを願っています。そうなった時は、しっかりと一つ一つの大会に取り組んでいきたいです。いろいろありましたが、東京五輪の代表に選んでいただきました。選ばれなかった他の選手のためにも、選ばれたからには本気で優勝を目指したいです」

 
「第16回ボルダリングジャパンカップ」大会特設サイト

CREDITS

インタビュー・文 編集部 / 写真 窪田亮 / 協力 JMSCA

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PROFILE

原田海 (はらだ・かい)

1999年3月10日生まれ、大阪府岸和田市出身。日新火災所属。中学時代までは“遊び”でクライミングジムに通っていたが、高校1年生で出場した国体で同年代のライバルたちと出会い、大会を意識し始める。その翌2015年に日本代表に初選出され、18年には世界選手権ボルダリングでシニア大会初優勝。19年の世界選手権コンバインド種目で日本人2位となる4位に入り、20年12月に五輪代表に内定した。

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