FEATURE 86

裏方プロフェッショナル #015

飯山健治(クライミングフォトグラファー)

ユージのような、熱量のある人間を撮りたい

これが私のクライミング道。舞台裏で“壁”と向き合うプロに迫ったインタビュー連載。第15回は30年以上この業界に携わり、フォトグラファーとしては平山ユージらの活躍をフィルムに収めてきた飯山氏に、ファインダー越しに見るクライミングの魅力を伺った。

クライミング歴30年以上という飯山さんですが、何がきっかけで始めたのですか?

「『川口浩探検隊』という洞窟に入ったり絶壁を登ったりするTV番組が昔あって、それを見てやってみたいと思ったのがきっかけです。写真家を志していましたが、クライミングに出会ってずいぶん変わりました。そうでなければ今こんな肉体労働(現在はウォールの施工をメインに活動)をしていなかったと思います(笑)」

クライミングを撮るようになったのは?

「岩場では『こんな絶景の中を人が登っているんだ』というシーンがよくあって、若い時は自分が登りたい気持ちの方が強かったのですが、自分のクライミングも頭打ちになった30歳くらいから『カメラもやろう』という感じで」

クライミング撮影の難しさとは?

「ポジション取りです。壁の中にぶら下がって撮ることがほとんどなので、それほど動けません。なのでどこが核心で、体がどちらに向いて、どんなムーブになるかというのを短時間で見極めなければならない。クライマーを待たせるわけにいかないので、ロープワークなどの素早さも必要です。大会の場合は、昔はパッと見れば5秒以内に(撮影ポジションが)わかったんですけど、今はコーディネーション系ムーブにハリボテもたくさん付いていて、もう途中のムーブはわかりません(笑)。岩場中心だった昔のクライマーは登り終えるとそのまま飛び降りて空中でガッツポーズするので、表情を撮るのも難しかった。最近はみんなわかっていて、完登したら後ろを向いてガッツポーズしますよね」

1998年には『FREEDOM 平山ユージの世界』(山と渓谷社)という写真集を出版されます。

「彼が移り住んでいたフランスで、半年働いては半年海外に登りに行く生活を繰り返していた僕はよく一緒に登るようになり、意気投合しました。そのうち彼にはもう追いつけないと感じるのですが、日本にもプロクライマーとしてやっていこうと一所懸命やっている男がいるから、写真集を作ったら面白いなって。もともとスタジオでアルバイトをしていてスナップ写真が好きだったので、自然と『この男を追いかけるのは面白い』という思いを持ちましたね」

写真集の中で最も印象深かったのは?

「やはりヨセミテにあるサラテのオンサイト(OS)トライです。当時、あれほど高難度のビッグウォールをOSトライしようなんて考える人間は一人もいなかった。結果的にOSは失敗してしまいますが、カメラを持つ僕の手も汗でびしょびしょだったのを覚えています。失敗した次のトライで落下したのとは違う初見のラインに挑んで、核心のランジに近いデッドポイントを止めた瞬間は鳥肌が立ちましたね。彼が本領を発揮するのはいつもOSトライ。レッドポイントの時はもうわかって登っているので、ピリピリした迫力はあまり出ないんです」

やはりOSトライが一番撮りがいがある?

「はい。OSトライは常に人生で一回限り。そこで発揮される限界のトライには“熱量”があるんです。純粋にそのルートを登りたいという気持ちでみなぎっている人っていうのは、みんないい顔をするので撮りたくなりますね。さらにそのクライマーが力を出し切って、完登に繋がった時の歓喜の爆発を写真に収められると嬉しいです。そういうオーラを出すクライマーはどうしてもいっぱい撮っちゃうんです」

平山さんは正にそんなクライマーだった。

「そうですね。彼ほどクラックも登れて、ビッグウォールも登れて、コンペも優勝しちゃうクライマーというのは現代だとほとんど見当たりません。最近は壁建ての仕事が忙しく、目も悪くなったため撮影をあまりしていませんが、ユージみたいな熱量のある人間が出てきたら、もしかしたらまた撮るかもしれませんね」

現在はクライミングウォールの設計・施工を行う「ストーンマスターズ」の代表をされていますが、今後やりたいことはありますか?

「僕はモノ作りも好きで、『ホッチホールド』という会社に壁建ての基本を教えていただき、その後独立させてもらいました。先ほども言ったように、熱量のある人に対しては僕も全力で発熱してやってあげたいんです。本当にクライミングを好きな人たちと一緒にいいモノを作っていきたい。それと、以前はコーディネーション系ムーブがなかったことを考えると、写真の構図や壁建てにしたって、未知の可能性があると思うんです。だから今後は、クライミングでまだ誰も気づいていないことに気づいてみたいですね」

CREDITS

インタビュー・文 編集部

back to top