FEATURE 54
独占インタビュー
ジェシカ・ピルツ アキヨ、ミホウ、ヤンヤに手が届いた
無敵のヤンヤ・ガンブレッドを倒した、世界選手権のリード新女王。ボルダリングでも成長中の、新たに現れた2020年のヒロイン候補だ。素顔はチャーミングで謙虚な21歳、さらなる進化に注目である。
※本記事の内容は2019年3月発行『CLIMBERS #011』掲載当時のものです(インタビュー収録日:2019年2月14日)。
日本を訪れるのは何回目ですか?
「昨年、愛媛県の西条市に代表合宿で訪れたのが初めてで、今回が2回目です。東京は初めてですね。日本は食べ物がすごく美味しくて、特に巻き寿司が大好きなんですよ(笑)」
日本のジムの印象は?
「(練習拠点の地元)インスブルックには1つのジムしかないのですが、とても大きくて内容も充実しています。日本はジム数が多くて、小規模ながらクオリティはとても高いと感じました。ここ(B-PUMP荻窪店)が一番いいですね」
昨年はリードでW杯年間2位、世界選手権では優勝を果たしました。飛躍の要因は?
「1年間ハードな練習を積んできた成果の表れだと思っています。昨年コーチが変わったこと、そしてトレーニング内容を変えたことが良かったのかなって」
どういった部分を変えたのですか?
「例えばワンフットトレーニングと言って、あえて片足だけで登り、その後は逆の足で行うトレーニングをしています。また、以前は3日やって1日オフ→2日やって1日オフだったトレーニングのサイクルを、3日やって1日オフの繰り返しにして練習量を増やしました」
もともと得意なリードに加え、世界選手権で4位に入るなどボルダリングの能力も上がったように見えます。ご自身の手ごたえは?
「大会によるところが大きく、思うようにいかないこともあります。一番重視しているのはリードで、ボルダリングでは課題の傾向にもよりますが、足りない点がまだまだありますね」
具体的には?
「特に(リードではあまり必要とされない)コーディネーション系のスキル。トライの数もまだ多いので、ファーストチョイスをなるべく早く判断できるように力を入れています。スラブに関してもバランス能力の強化が必要です」
スピードにはどう取り組んでいますか?
「1週間に1、2回はトレーニングしています。セッション前に1時間強やることが多いですね。自己ベストは10秒40台。まだまだですね。マイナス1秒は必ず達成したいと思います」
東京2020オリンピックで実施されるコンバインドで、ライバルを挙げるならば?
「特にアキヨ、ミホウ、ヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)の3人がライバルだと考えています」
ガンブレット選手とは昨年のリードW杯でも激しい年間優勝争いを演じました。
「2年前、彼女は敵なしという感じでしたが、その後、私も実力を伸ばすことができて、ようやく彼女に勝つところまでたどり着けたかなと」
野口、野中選手はどんな選手でしょう?
「2人ともボルダリングが非常に優れていて、すでにW杯での実績もあります。ミホウはすごくスピードがあるし、パワーも兼ね備えている。アキヨはリードも得意なので、オリンピックで大きな可能性があるのではないでしょうか。2種目においてワールドクラスの実力があるというのは大きなアドバンテージとなるはずです」
東京2020での目標を教えてください。
「誰もが目指すのがメダルだと思いますが、オリンピックに出場することができれば、それ自体がとっても光栄なことです。もちろん、その中でメダルを狙っていきたいですね」
CREDITS
インタビュー・文 編集部 /
写真 窪田亮 /
撮影協力B-PUMP荻窪店
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PROFILE
ジェシカ・ピルツ (オーストリア)
1996年11月22日生まれ。リードが得意で、W杯では2017年に年間4位、18年は初優勝も経験して年間2位。世界選手権でもリード優勝、ボルダリング4位、コンバインド3位と、同年にトップ選手の仲間入りを果たした。