※本記事の内容はCLIMBERSが制作協力した2024年2月発行の『JMSCA magazine 010』掲載インタビューから前半部分を抜粋したものです
 
 

 
楢崎智亜（ならさき・ともあ）
1996年6月22日生まれ、栃木県出身。無所属。抜群の身体能力を武器に2016、19年にボルダーでW杯年間優勝、世界選手権優勝。23年世界選手権複合3位で内定したパリ五輪で東京五輪4位の雪辱を期す。
 

 
森秋彩（もり・あい）
2003年9月17日生まれ、茨城県出身。茨城県山岳連盟所属。圧巻の保持力と持久力で10代から活躍。23年は世界選手権リード女王に輝いた。同大会複合3位でパリ五輪内定。モットーは「楽しむ」こと。
 

 
安楽宙斗（あんらく・そらと）
2006年11月14日生まれ、千葉県出身。千葉県立八千代高等学校所属。W杯初参戦の23年にボルダー、リードで年間優勝。同じ年に2種目制覇の初快挙を引っさげ、アジア大陸予選で優勝し五輪に内定した。
 
 

2023年を振り返る
代表戦士たちの裏話

2023年はどんな1年でしたか？ まずは楢崎選手から教えてください。
楢崎　前半戦は悪くなかったんですけど、W杯の欧州3連戦あたりからいまいちかみ合わない感覚が続きました。不安の中で8月の世界選手権（ベルン）を迎えましたが、2023年で一番の目標だったパリ五輪の代表内定を達成できたので、とにかくホッとしました。

5月には野口啓代さんとの間に第1子となる女の子が誕生しました。子育ては大変ですか？
楢崎　まだ慣れないんですけど、僕も啓代も家にいない時は僕ら双方の母にもサポートしてもらいながらなんとかやっています。
森　お子さんめっちゃかわいかったです。自分は赤ちゃんに嫌われる性質があって、これからはあまり相手にしてくれなくなるかもしれないので、今のうちに抱っことかしたいなって思います。
楢崎　秋彩ちゃんは猫にも避けられてたもんね（笑）
森　赤ちゃんも動物も大好きなんですけど、泣いちゃったり、すごい機嫌が悪くなったりして、なんだか居心地が悪いみたいです。

2人は2023年の楢崎選手をどう見ていましたか？
安楽　結果に浮き沈みがあっても、あまり表には出さないで淡々と大会をこなしている印象でした。
森　自分は悩むことがあると落ち込んじゃうけど、パッと切り替えている感じだったし、世界選手権の時も緊張し過ぎず、いつも野口家（にある壁）で見ているようにのびのびした登りができていて、しっかり五輪のチケットを取っていたからやっぱりすごいなって思いました。
楢崎　意外と見られてる（笑）。うれしいですね。でもそこが自分の強みというか、気持ちの浮き沈みが少ないタイプなので、それは長くコンペに出ている上で大事なことなのかなと思います。

森選手はどんな1年でしたか？ リードの世界女王にも輝きました。
森　苦手のボルダーでW杯決勝に残れたけど、決勝では結果が振るわずにまだまだだったのでまさか自分が五輪代表権を取れるとは思っていなかったです。でも世界のトップレベルとのパフォーマンスの差はかなり感じているので、これからの練習のモチベーションに繋げていきたいです。

9月には20歳になりました。以前、お酒は飲まないと話していましたが飲む機会はありましたか？
森　飲まざるを得ない状況があったんですけど、ちょっと気持ち悪くなっちゃったのでもう飲めないのを貫こうかなって思います。

楢崎選手は森選手と飲んでみたいですか？
楢崎　いや、俺もお酒よりソフトドリンクとかのほうが好きなので（笑）。ただ、たまに一緒にカードゲームをすることがあるので、そういう時にみんなで楽しくできたらなと思います。

2023年の森選手にはどんな印象がありますか？
楢崎　少し前まではリードの下部や中間部でのダイナミックなムーブで崩されてしまうことがあったんですけど、今はそういったことがほとんどなく、持久力の限界まで着実に登れてるので、毎回すごいなという印象ですね。
安楽　僕もアジア競技大会（杭州）の時にカードゲームを一緒にやったんですけど。
楢崎　（笑）
安楽　なんて言うんですかね、ちょっと不思議な存在っぽくて。普通に面白いです（笑）。カードゲームは大体強いので勝てることがほとんどなかったです。
楢崎　もしかして宙斗が弱いの？
安楽　基本的にゲームは全部苦手ですね。
楢崎　『ブロスタ』はうまいのに？（笑）
森　自分はカードゲームがすごい好きで、よくするのは『ノイ』『はぁっていうゲーム』『イト』『キャプテンリノ』とか。
楢崎　めっちゃしてる（笑）
安楽　（笑）
森　海外の大会に行くと暇な時間も結構あって、自分は部屋に1人でじっとしているのが苦手なので、せっかく仲間がいるならみんなで遊ぼうよ、みたいな感じで遊びます。それでリラックスできて結果に繋がることもあると思うし、みんなとゲームを通して仲良くなれました。

先輩と後輩の2人はどんなチームメイトですか？
森　ずっと一番下の世代だった自分よりも下の宙斗くんという存在は新しい感じで楽しいし、智亜くんはレジェンドというか、すごい上の存在だったけど、フレンドリーに話してくれたり一緒に遊んだり、YouTubeチャンネルに出させてもらったりして、一緒に登っていても楽しいしクライミングに対するまっすぐな気持ちが伝わってきてモチベーションが上がります。

安楽選手はシニアデビューを果たした2023年を振り返ると？
安楽　最初のボルダーシーズンからそこそこ良い順位を取れていたんですけど、確実に今のほうが成長していて、大会を重ねるごとに少しずつ強くなって成績も安定してきました。最終的には五輪のチケットを獲得できた1年になりました。

日本代表の海外遠征では2人をはじめとした先輩方はいかがでしたか？
安楽　めっちゃ優しかったです。2人とも世界で通用する日本のレジェンドっていうイメージだったんですけど、クライミング以外では意外と普通なんだなって。楽しい海外遠征でした。

2023年の安楽選手の印象は？
楢崎　実は代表に入るまであまり知らなかったんですけど、前半戦と後半戦で印象が違ってどんどん成長していったし、あとは日本人にフィジカルが強い選手がたくさんいる中で、宙斗はメンタルコントロールが飛び抜けてうまいと思います。大会での安定感といった部分は僕も見習いたいですね。
安楽　めちゃめちゃうれしいです。もしかしたら自分の型に持っていくのがうまいのかもしれません。フィジカルに関してはトレーニングで少しずつつくっていて、今後もっといい登りができると思っているので頑張りたいです。
森　宙斗くんはW杯に出始めて最初から優勝しているのがすごいし、 大会で勝つごとにプレッシャーが増えていくはずなのに、大きなミスなく成績を残し続けるのはなかなかできることじゃないと思います。あとは自分も脱力系というか、ガツガツ登れないタイプで伸び悩んでいるから、宙斗くんがパワーだけじゃなくてしなって登っていく感じで活躍しているのを見て希望をもらっています。

森選手には中学生の弟がいると聞いていますが、そのことで年下の安楽選手とも話がしやすかったですか？
森　どうだろう、なんか学校では元気らしいんですけど、家では普通の中学生ですね。弟はとにかくゲームが大好きで。
安楽　僕にも小学4年生の弟がいるんですけどゲーム好きです。学校では元気っぽいんですけど、家だとおとなしいんですよね。
楢崎　僕の弟（楢崎明智選手）もゲーム大好きです（笑）

全員に弟がいるという共通点がありますね。安楽選手は家ではおとなしいほうですか？
安楽　おとなしめだと思います。あまりはしゃぐことがないですね。
楢崎　うーん、たまにテンションがおかしくなる時はありますけど。W杯シーズン中に海外のサウナで水風呂に入ったら、奇声を上げていました（笑）
 
この続きは『JMSCA Magazine 010』でご覧ください。激闘の世界選手権や、選手同士で気になっていること、パリ五輪についてのインタビューを収録しています。
 

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【JMSCA magazine 010】
2024年2月9日より全国一部のクライミングジムに順次到着予定。
 
＜主な収録内容＞
・特別インタビュー　楢崎智亜×森秋彩×安楽宙斗
　五輪内定3選手が語るパリへの意欲
・対談　山口祥義佐賀県知事×丸誠一郎JMSCA会長
　深化する連携協定　SSP構想と競技普及の環境づくり
・インタビュー　安井博志（日本代表ヘッドコーチ）
　パリ五輪プレシーズンレビュー
・インタビュー　富澤隆一郎（強化委員会）
　JMSCA次世代アスリート育成プロジェクト