FEATURE 110

裏方プロフェッショナル #017

堀創 有限会社フロンティアスピリッツ(ホールド仕入れ担当/「B-PUMP荻窪」店長)

新しいホールドはずっと見ていても飽きない

これが私のクライミング道。舞台裏で“壁”と向き合うプロに迫ったインタビュー連載。第17回は、クライミング界のリーディングカンパニー「フロンティアスピリッツ」で海外からホールドを仕入れるバイヤーを務める、元日本代表の堀氏に国内の流通事情を聞いた。

選手時代に日本人男子初のボルダリングW杯優勝(2011年キャンモア大会)を遂げた堀さんですが、現在は国内ホールド輸入代理店大手の「フロンティアスピリッツ」(FSP)で仕入れを担当し、さらにボルダリングジム「B-PUMP荻窪」で店長やルートセットを務めるなど幅広く活動されていますね。

「W杯優勝はずっと目指していたので、信じられないくらい嬉しかったのを覚えています。もともとホールド好きで、大会で勝つためでもあったのですが、そこまでしていたのは僕だけと言ってもいいくらい、当時からいろいろなホールドをネットで調べたりしていましたね」

やはり様々なホールドを知っておくことは大会で有利に働きますか?

「ホールドのどこを持てるかなど、事前に情報を得ていたほうが圧倒的に有利だと思います。大会に出ていた時は壁の後ろ側からホールドを止めているビスの位置を見ただけで『あそこにあのホールドが付いてるな』ってわかるくらい好きで詳しかったですね(笑)。新しいホールドはずっと見ていても飽きないくらいで」

輸入代理店の業務を教えてください。

「欧米で年に1、2回ホールドの展示会があるので、そこでメーカー側と会話をして仕入れを行います。国内では主にジムオーナーの方々に向けた展示会を実施していて、オンラインショップでも販売しています。最近はプライベートウォールを導入する人も増えていますが、一般の方はWEB注文が多いですね。また宣伝にもなるので国内の大会に貸し出しもしています」

国内で流通しているもののうち、輸入代理店が取り扱うホールドは何割ほどでしょうか?

「9割以上ではないでしょうか。FSPでは『flathold』『Cheeta Hold』『Kilter』などW杯で使用されるメーカーを多く扱っていて、『あれってどのホールドですか?』と問い合わせいただくことが多いです。大会で使われるとすぐに売り切れることもありますよ」

海外の展示会ではどのようなやり取りを?

「付き合いのあるメーカーさんとはすごく仲良くさせてもらっていて、彼らの家に行くこともあります。『次のシェイプの名前、何にする?』とか、新作の意見交換などをしていますね」

日本市場は海外からどう見られていますか?

「魅力的に映っていると思います。日本は選手がみんな強くて、多くの人気クライマーがインスタグラムに難しい課題を登る動画をアップしていますよね。コンペを想定した課題の多い『B-PUMP荻窪』のアカウントでも動画を上げていますが、海外のメーカーにとっては露出になってブランドイメージ向上に繋がりますし、自社ホールドが課題の中でどう使われているのか実際に見られて参考にもなるそうです」

他の海外メーカーから「うちのホールドを取り扱ってほしい」と言われることも多いのでは?

「よくいただくのですが、そこは見定めて進めます。シェイプのセンスや成長性、コンペシーンを見ているか、あとはシェイパーがクライマーかどうかも重要視します。アーティスティックな人がシェイプするメーカーもあるので」

人気のホールドはありますか?

「スプーンカットで知られる『Taijitu』を生み出したローラン・ラフォンによる『Taji』シリーズ(Cheeta)は常に人気があります。流行りのボリュームや(摩擦する面とツルツルした面のある)デュアルテクスチャーも売れていますね」

この仕事のやりがいは?

「やっぱり自分がいいなと思って仕入れたホールドが売れたり、コンペシーンで活躍したり、ジムで一般の方に登ってもらえたりすると嬉しいです。反対にいいと思わなくても売れることがあるので、そこは難しさでもありますね。好きなホールドって、みんなそれぞれ違うので」

今後やってみたいことはありますか?

「『B-PUMP荻窪』にはコンペティションウォールと言って、20m幅にボリュームを付けて10本ほどしか課題を引かない、普通の壁とは違うエリアがあります。取り扱いホールドの新シェイプお披露目の場にもなっているのですが、それと同じようなリード壁のあるジム作りに携わってみたいですね。今の日本のリード壁は欧米と比べると低かったりして規模が小さく、課題もトレーニング寄りが多いので、ボリュームを使って大きい動きのできるコンペ向きの壁があればいいなと思っているんです」

CREDITS

インタビュー・文・写真 編集部

※本記事の内容は、2020年12月末発行の『CLIMBERS #018』掲載当時のものです。
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