地元開催で日本勢が躍動 野口・野中、楢崎・渡部が表彰台へ/ボルダリングW杯2017 第4戦・八王子大会

 5月7日午後、ボルダリングW杯2017第4戦八王子大会の決勝が行われ、女子はヤンヤ・ガンブレットが優勝、野口啓代が2位、野中生萌が3位。男子はアレクセイ・ルブツォフが優勝し、楢崎智亜が2位、渡部桂太が3位で男女ともに表彰台に日本人2人が並ぶ結果となった。

 先に行われた女子決勝は第1課題を全員が一撃し、サバイバルな展開になると思われたが、第2課題でいきなり4人がつまずいて完登できず。そんな流れの中、野口が一撃して抜け出すと、続くガンブレットも2アテンプトで完登。準決勝を全完登した2人が、決勝でも一騎打ちとなった。

 第3課題は女王ショウナ・コクシーがスタートから先に進めないほどムーブが読みづらい難所となったが野中が見事に攻略し、そのままトップを掴んだ。ファニー・ジベールも5アテンプトの粘り強い完登で意地をみせる。それ以上に地力をみせたのが野口だった。5アテンプトを重ね、残り時間も少なく完登は厳しいと思われた展開から、残り1秒でトップを掴んで会場を沸かせた。しかし、次のガンブレットが開始30秒で難なく一撃すると、今度はどよめきが会場を包んだ。

 第4課題はコクシー、野中がオンサイトでプレッシャーをかけるが、野口とガンブレットも危なげなく一撃で締めた。ガンブレットは予選から決勝まで、すべての課題を完登し、圧倒的な強さで今シーズン2度目の優勝を射止めた。野口はシーズン最高の2位、野中は2戦連続の3位となり、日本人2人が表彰台に登った。

自身2度目のボルダー種目優勝となったガンブレット。予選から決勝まで全課題を完登する圧巻のパフォーマンス。

決勝4課題をすべて完登した野口。この日一番会場を沸かせた。

粘り強く3完登で3位に。2大会続けて表彰台に立った野中。

続いて行われた男子決勝は第1課題でほとんどの選手がボーナスを掴むのもやっとという展開の中、3番手で登場した楢崎がみせた。残り18秒でラストトライに挑み、残り2秒で「あれは奇跡的だと思います」という得意のランジでトップを掴んだ。「これで大会の流れはもらったと思った」というように、楢崎は第2、第3課題を一撃して一気に優勝への流れを引き寄せたかのように思えたが、第1課題で完登を逃したルブツォフと渡部も第2、第3を完登して楢崎に食らいつき、最終課題まで優勝の行方はもつれる展開に。

そして第4課題、ここまで完登がなかったミカエル・マウェム、ヤコブ・シューベルトが完登し、3番手の楢崎もそれに続くと思われたが、「思った以上に右手に力が入らなかった」と、第3課題で痛めた右手の影響もあり、トップに迫るも完登を逃してしまう。これで優勝はルブツォフと渡部の結果次第となった。先に登るルブツォフは3アテンプトで完登し、アテンプト差で楢崎を抜き首位に躍り出る。最後に渡部は3アテンプト以内で完登できれば優勝というチャンスが回ってきたが、疲労の影響かボーナスも掴むことができず力尽きた。最後の最後までもつれた優勝レースはルブツォフが制し、今シーズン1勝目。楢崎はアテンプト差1で2位、2完登した渡部は3位となり、優勝は逃したものの、女子に続いて男子も日本人2人が表彰台に上った。なお、開催国枠で出場し決勝まで進出した石松大晟は結果が出ないなか迎えた最終課題で「集中力を切らさなかった」と意地の完登をしてみせるなど、今後に期待を持たせる登りをみせた。

2日間通じて安定したクライミングで優勝を飾ったルブツォフ

第1課題で残り2秒というドラマチックな完登をみせた楢崎

最後まで優勝争いに絡んだ渡部。年間ランキングでは首位をキープ

野中生萌コメント
「去年の加須大会は他の国に比べて盛り上がりに欠けるように感じていましたが、今回は声援も大きくすごく嬉しかったです。2週間後の誕生日までは楽しんで、その後のアメリカ・ベイル大会に向けて調整していきたい。表彰台にも乗って輝くキラキラした20歳の年を送りたいです」

野口啓代コメント
「もちろん優勝を狙っていたので非常に悔しいですが、決勝4課題の登りにはどれも納得していて今の自分のベストが出せたと思っています。第3課題ラスト1秒での完登は本当に最高で、クライミングをやっていて良かったと思える瞬間でした。今回の地元開催を経験して、2020年は今日の声援の何倍になるか分かりませんが、もっとたくさんの方にクライミングを見て、応援してもらいたいという気持ちがますます高まりました」

渡部桂太コメント
「1課題目が登れなかったのが後に響いた。4課題目も登れるチャンスはあったけど、そこを登り切れなかったのが敗因。前回の優勝で良い流れは掴んでいると思うが、連続で優勝できるほどW杯は甘くないので、そこの洗礼を受けたことはある意味収穫でした。自分の実力的にもこの3位というのは、ツアー全体で考えると悪くはないと思います」

楢崎智亜コメント
「八王子で応援してくれるみんなの前で優勝したいという思いがあったので相当悔しいです。今まで2位で泣いたことはなかったんですけど、それくらい優勝したかった。決勝の内容はすごく良かったと感じていて、予選と準決勝ではミスが多くてそれを決勝では修正できたので、今回でかなり成長できたなと思います」

<女子決勝>
1位 ヤンヤ・ガンブレット(スロベニア/18)4t5 4b4
2位 野口 啓代(27)4t9 4b9
3位 野中 生萌(19)3t4 4b5
4位 ショウナ・コクシー(イギリス/24)2t2 3b3
5位 ファニー・ジベール(フランス/24)2t6 4b12
6位 ペトラ・クリングラー(スイス/25)1t1 3b5

<男子決勝>
1位 アレクセイ・ルブツォフ(ロシア/28)3t8 4b13
2位 楢崎 智亜(20)3t9 4b10
3位 渡部 桂太(23)2t5 3b6
4位 ミカエル・マウェム(フランス/26)1t1 4b8
5位 ヤコブ・シューベルト(オーストリア/26)1t2 3b5
6位 石松 大晟(20)1t3 4b9

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CREDITS

篠幸彦 / 写真 牧野慎吾

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