FEATURE 08

裏方プロフェッショナル #002

佐藤豊(A級審判員)

審判界も今、若手が続々と挑戦しています

これが私のクライミング道。大会の舞台裏で壁と向き合うプロに迫った当連載。第2回は、現スポーツクライミング日本代表コーチにして数少ない日本山岳協会公認A級審判員、1月のボルダリングジャパンカップでも審判を務めた佐藤氏に話を聞いた。

※本記事の内容は2017年3月発行『CLIMBERS #003』掲載当時のものです。
 
 
日本人審判員の第一人者である佐藤さんですが、クライミングを始めたきっかけは?

「17歳、もう33年前ですね。自宅近くに日和田山のロッククライミング練習場があり、友人と遊びに行ったのが最初。岩登りにのめり込んだ20代には、平山ユージらと半年ほどヨーロッパ各国の岩場を回ったこともありました」

選手として、1993年にはジャパンツアー(当時)で総合優勝を飾っていますね。

「ただ、それで燃え尽きた感じで(笑)。翌年は3位でしたが、以降ほとんど出ていません。代わりに出場し始めたのが国体で、埼玉代表として98年から4年連続で優勝しました」

審判の世界へはどのように?

「審判をされていた先輩に誘われたのがきっかけで、それがなければやってなかったでしょうね。現役時代は考えもしませんでしたから(笑)。最近は大学生の審判もいるので驚きです。私自身、若い頃ワ-ルドカップへ遠征させてもらったりクライミング界に恩を感じていたので、何か貢献できないかと常々思っていました。そこで話をもらい、ではやってみよう!と」

A~C級とある審判資格に関してですが、大きくは「A=主要大会の審判長」、「B=主要大会の審判員、地方大会の審判長」、「C=地方大会の審判員」を務められるという違いがあるのですね。

「ええ。山岳協会の公認大会で審判を担当するにはまずC級が必要で、今日(ボルダリングジャパンカップ)のような選手権大会では基本的にB級以上のメンバーで運営されています」

C級、B 級を取得するには?

「Cは各地で行われるブロック別研修会の中にC級審判研修があるので、2日受講して最終試験に合格すればOK。B級に昇格するには、ルールに対する更なる理解と十分な審判経験が求められます。『審判長』を任されるとなれば、競技をジャッジするだけではない、大会を運営する、会場全体をコントロールする、審判団をマネージメントするといった能力が必要になりますからね。そしてAは、このような能力をBよりも高度に要求され、諸関係者の推薦があって取得できるものです。今、アクティブに活動中のA級審判は6人ほどでしょうか。また、さらに上にはIFSC(国際スポーツクライミング連盟)の主催大会に審判長として参加したり、IFSCジャッジという日本で言う主任審判を務めるために必要な国際資格が存在します」

なるほど。では大会中、競技をジャッジするにあたっての審判の役割を教えてください。

「端的に言うと、選手のパフォーマンスをルールに則って公平に審査すること。リードではどこまで登ったか、ボルダーではいかにボーナスを獲りゴールをしたかはもちろん、ルール違反をしていないかを見極める部分も大きいです。スタートポジションを取らずに始めるとか、ゴール時に審判がOKとコールする前に降りてしまうとか。微妙な場面も多いので、ビデオや2年ほど前から導入したタブレットで即座に確認できる態勢を整え、我々も日々レベルの向上に励んでいます」



審判界の現状にはどういった印象を?

「B級の人員が少し足りない気もしますけど、先ほど言ったように昔は現役を引退した人ばかりだったのが今ではやる気に満ちた若い人も続々と挑戦していて、非常に良いことですよね。諸外国にも若手審判は多いのですが、日本も追いついてきたなという感覚があります」

審判をやる醍醐味、喜びを感じる瞬間は?

「選手が正当な評価を得られるようにやっているので、彼らに判定が理解された時。ジャッジしたリザルトに何もアピールがない状態は、それが当たり前であるべきなのですが、やはり嬉しいですね。みんなわかってくれているんだと」

最後に、今後の目標を教えてください。

「選手の強い日本ですが、審判国際資格取得者の人数に関してはまだまだですので、取得する必要性を感じています。そして、2020年の東京オリンピックに参加するというのが今の目標です。開催国の審判が先頭に立つようでなければ当然、大会がうまく回らない部分も出てくるでしょう。日本を代表して、その一員に入れたらいいですね」

CREDITS

インタビュー・文・写真 編集部

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