FEATURE 15

独占インタビュー

是永敬一郎&波田悠貴 切磋琢磨でリード世界一を目指す期待の2人

波田くんと一緒にもっと強くなっていけたらいいな(是永)
敬一郎くんは目標とする選手…文武両道で頑張ります(波田)

スポーツクライミング日本勢の飛躍は、ボルダリングだけじゃない。7月に開幕したリードの2017年シーズン、そろってW杯の表彰台に上がり、ワールドゲームズでワンツーフィニッシュを飾ったのが、21歳の是永敬一郎(これなが・けいいちろう/左)と20歳の波田悠貴(はだ・ゆうき/右)だ。以前から練習を共にし、切磋琢磨してきたという2人のホープに、好調の理由と後半戦の抱負を聞きました。

※このインタビューは2017年8月5日に収録されました。
 
 

インタビュー:是永敬一郎

7月に始まったリードの2017年シーズン、ここまで決勝に残った2大会で表彰台に上がっていますね。手ごたえはいかがですか?

「今シーズンはどの大会でも調子は悪くなく、波に乗れていると感じています。この調子を維持することができれば、後半戦でも良い位置につけられるんじゃないかと思っています」

7月下旬にポーランドで行われたワールドゲームズでは、金メダル獲得という快挙を達成しました。

「ワールドゲームズは壁が短く、ルートが得意とする保持系だったこともあって勝てたという印象ですね。加えて、強い選手が序盤のリスキーなところで落ちてくれたので、僕に勝つチャンスが回ってきたという幸運もありました」

W杯初戦のヴィラール大会(スイス)は準決勝で敗退となりましたが、第2戦のシャモニー大会(フランス)では2位と、今シーズン最初の表彰台に上がりました。

「シャモニー大会の決勝では、このルートは完登しなければいけない、というのが雰囲気でわかったので、とにかく緊張しました」

あの大会は、力のある選手にもミスが目立ったという印象を受けました。やはりどの選手も緊張している感じはありましたか?

「そうですね、それはあったと思います。でも、だからチャンスだなと思っていたので、ここは絶対にこぼせないなという気持ちで臨みましたね」

実力者が次々と落ちていく中で、ご自身が登る時にプレッシャーは?

「それほどありませんでした。ただ、悔いの残らないような登りはしたいなと思っていましたね」

その後、7月末の第3戦ブリアンソン大会(フランス)は10位。かなり苦戦されたと思うのですが、ご自身ではどうでした?

「予選の1本目でミスをしてしまって67位。でも2本目が4位だったので、それで準決勝には残ることができました。ただ、ギリギリの通過になってしまって、準決勝は決勝ラインまでは行けたのですが、カウントバックで残れず……ちょっと悔やまれる結果になってしまいました」

ただ、予選1本目のミスを2本目でうまく立て直せましたよね。

「うまく立て直せたんですけど……1本目でミスをしてしまうあたりが、まだまだ甘いなと思いましたね」

今シーズンは波田悠貴選手も好成績を残していますが、その活躍についてはどう見ていますか?

「普段からけっこう一緒に練習するんですけど、彼は練習からとても強いので、本番で勝てていなかったのが不思議なくらいでした」

ワールドゲームズでは波田選手とともに、日本勢で史上初となる金・銀メダルという偉業を成し遂げました。

「実はまだあまり実感がないんですよね。でも国際大会で日本人が1位、2位を独占するというのは、もちろん凄いことだとわかっています。僕だけではなくて、波田くんと切磋琢磨して、これから一緒にもっと強くなっていけたらいいなと思いますね」

リードW杯は前半戦の折り返し地点ですが、後半戦に向けて修正点や意識していることはありますか?

「そういうのはまったくないんですよね。コンディション維持が第一です」

後半戦も頑張ってください。

「ありがとうございます。体調を崩さずに、波に乗り続けていきたいです。後半戦も頑張ります」

 

インタビュー:波田悠貴

7月に開幕したリードW杯で表彰台に立ち、ワールドゲームズでは銀メダルを獲得と、今シーズンは好調ですね。ここまでを振り返って、ご自身ではいかがですか?

「1戦目のヴィラール大会は予選から調子良く登れて、決勝にうまく残ることができました。そのいい流れを第2戦のシャモニー大会に繋げられましたね。予選では両ルートを完登し、準決勝も好スコアで決勝に進出できました。決勝は完登しての3位なので、良い登りができたと思います。翌週のワールドゲームズはメンタル的にもいい感じで臨めたので、そういった流れが銀メダルに繋がったと考えています」

シャモニー大会の3位はW杯で自身初の表彰台でした。結果を残せた要因を具体的に挙げるならば?

「僕は去年、W杯第7戦のクラーニ大会(スロベニア)で初めてW杯の決勝に残れたんですね。そこから『決勝には残らなきゃ』という意識が出てきて、それが開幕戦のヴィラール大会に繋がっていました。それで決勝に残れて5位という成績を残せた時に、『次はもう表彰台しかないな』という気持ちで。そういう段階を踏んでというか、流れがあって、シャモニーでの3位に繋がったのかなと思います」

昨年からの調子の良さと意識の変化が、現在の好調に繋がっているのですね。今シーズンのリードの課題にはボルダー的な要素もあると言われていますが、ボルダーもリードも並行してやっている波田選手にとって、その強みが出せている部分はありますか?

「今年はボルダーでも代表に選んでもらえたので、ここまでマイリンゲン(スイス)、八王子、ナビムンバイ(インド)の3戦に参加しています。そのボルダー大会の積み重ねというのは、リードのボルダー力にも間違いなく生きていると思いますね」

実際にボルダー要素が強くなったというのは、どういった点で感じていますか?

「競技時間がこれまでの8分から6分に変更され、東京五輪に向けて“魅せる系”のルート設定になってきていると思いますね。ランジを取り入れたりと、ムーブの面でもボルダー要素は強くなっていると感じています」

そうしたルートの変化も関係しているかもしれませんが、シャモニー大会では手を滑らせてフォールする選手が多かったと思います。あの大会はやはりスリップしやすいコンディションだったのでしょうか?

「シャモニーは観客も多くて、会場の雰囲気もすごく良かったんですね。ただ、それが選手にとっては緊張に繋がっていました。その緊張でスリップしたり、ミスしたりというのが多かった大会だと思います」

その中での3位という好成績が、ワールドゲームズの準優勝に繋がったわけですね。

「そうですね。シャモニーから日本に帰って来て、すぐにワールドゲームズだったことも調子を維持できた要因の一つだと思います」

シャモニー大会から約1週間後とスパンが短いことで、疲労が溜まる心配はありませんでした?

「リード競技は3日目だったので、疲労はだいぶ回復していましたね」

ワールドゲームズのタイトルというのは、W杯とはまた違う嬉しさがありますか?

「ワールドゲームズは4年に一度の大会なので、正直、行く前はメダルが取れるとは思っていなかったんですけど、やっぱりメダルが獲れるというのは嬉しいですね」

会場の雰囲気やルートの感触はどうでした?

「ワールドゲームズはいつものW杯よりも壁の高さが短い感じだったので、強度が凝縮されているというか、ランジの強度も高くて、序盤からとても難しかったですね」

その翌週のW杯、第3戦のブリアンソン大会(フランス)を欠場された理由は?

「僕は日本体育大学に通っているのですが、単位がちょっと危なくなってしまって、それでブリアンソンは欠場しました」

気持ち的には出たかった?

「そうですね。ブリアンソンは以前に出て予選落ちしていたので、リベンジという意味でも出てみたかったです」

今シーズンは是永敬一郎選手とともに表彰台に登る活躍が続いていますが、是永選手については?

「敬一郎くんとは昔から一緒に登ってきました。リードにおいて目標としている選手であり、敬一郎くんが結果を出しているのは嬉しいですね。彼がミスして自分が勝つよりは、しっかり登って自分より上の成績を残してくれた方が嬉しいんです」

ワールドゲームズのリード競技で日本人が金・銀を獲るというのは史上初の快挙でしたが、これについては?

「直前のシャモニーでは敬一郎くんが2位で僕が3位でした。それからお互い一つ順位を上げて、金・銀となったことは素直に嬉しいです」

W杯後半戦へ向けた意気込みを聞かせてください。

「年間ランキングで高い位置にいるので(7位)、なるべく順位を落とさず、残るラウンドでも決勝に残れるように。そして大学も少し忙しいので学業も疎かにせず、文武両道で頑張りたいと思います」

CREDITS

インタビュー・文 篠幸彦/ 写真 牧野慎吾 / 撮影協力 Climb Park Base Camp

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PROFILE

是永敬一郎 (これなが・けいいちろう)

1996年2月16日、埼玉県生まれ。リードを主戦場に数々のユース大会で優勝し、16歳でW杯に初出場。10代から日本代表を牽引してきた。2016年にはW杯ヴィラール大会で自己最高の2位に入ると、アジア選手権で連覇を達成。今シーズンはW杯第2戦のシャモニー大会で2位に立つと、4年に一度のワールドゲームズで金メダルに輝いた。

PROFILE

波田悠貴 (はだ・ゆうき)

1997年5月10日、埼玉県生まれ。ユース時代から実績を残し、2014年からリードW杯に参戦。今シーズンはW杯第1戦で5位、第2戦で3位と自身初の表彰台に立ち、その後のワールドゲームズでも銀メダルを獲得した。リードだけでなくボルダリングでも強さを発揮し、今年のジャパンカップで3位に入賞した期待のマルチプレーヤー。

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