ベイル大会男子表彰台=(左から)楢崎智亜、緒方良行、チョン・ジョンウォン(韓国)

緒方良行が初優勝! 楢崎智亜も逆転で年間王者に輝く/ボルダリングW杯2019最終第6戦 ベイル大会

 現地時間7日・8日、ボルダリングW杯2019シーズンの最終第6戦がアメリカ・ベイルで行われ、男子は緒方良行がW杯初優勝を果たすと、楢崎智亜も2位となって自身2度目の年間優勝を成し遂げた。女子はヤンヤ・ガンブレット(スロベニア)がボルダリングW杯史上初となる全戦優勝の快挙を達成。野口が2位に入り、昨年に続く年間2位となった。

多くの観衆が集まったベイル大会。

 先に行われた女子決勝には、日本勢から野口、野中生萌、初めて準決勝を突破した中村真緒の3人が進出した。W杯最多22度目の優勝を狙う野口は、第1、第2課題を完登し、完登に要したアテンプト差で全勝優勝の懸かるガンブレットらを抑えて首位に立つ。

 勝敗を分けたのが第3課題。途中で壁面が変わる難関を、野口までの4選手全員がゾーン獲得にとどまると、ガンブレットが2トライ目で完登し、2位以下に決定的な1完登の差をつける。そして最終課題。ここでもゾーンのみで終える選手が続く中、野口が観客を煽った直後の2トライ目で意地の完登を記録し、逆転優勝に望みを繋ぐ。

 しかし、次に登場したガンブレットはこれを一撃。最後まで圧倒的な強さを見せつけて、自身初のボルダリングW杯年間優勝を、史上初となる全戦優勝という偉業とともに達成した。完登直後は拍手喝采を浴び、人目をはばからず涙した。

 今季のガンブレットは第1戦の予選から数えて全78課題のうち、完登を逃したのはわずか4課題で、ゾーンを逃したのはたったの1課題。新女王は記録の上でも驚異的な強さだった。最後まで優勝を争った野口は惜しくも2位、野中は4位、中村は6位となった。

全勝優勝を成し遂げ、涙するガンブレット。(写真=IFSC/Daniel Gadja)

女子表彰台=(左から)野口啓代、ガンブレット、ファニー・ジベール。年間表彰台も全く同じ顔触れとなった。

 男子では、楢崎と緒方の2人がファイナリスト入り。年間総合2位の楢崎は、同1位のアダム・オンドラ(チェコ)と決勝の舞台で年間優勝を争うこととなった。

 2課題連続完登が5名と、横一線のスタートとなったファイナルラウンド。楢崎とオンドラはともに2完登3アテンプトで前半を折り返す。

 第3課題。ゾーン手前の足場が難関となった緩傾斜課題を、オンドラが攻略できずまさかのノースコア。すると楢崎は一度足場のホールドを手で押さえることで安定感を獲得し、そのまま完登。大きなガッツポーズも飛び出した。緒方も同じ攻略法で完登し、3完登の日本人2人が上位抜け出しに成功する。

明暗を分けた第3課題を完登し、ガッツポーズする楢崎。(写真=IFSC/Daniel Gadja)

 迎えた最終課題、暫定5位のオンドラがゾーンのみで終えたため、完登で今大会と年間の2つの優勝を決めたい楢崎だったが、こちらもゾーンのみで競技終了。結果は他選手の成績次第となった。

 その後、暫定3位のヤン・ホイヤー(ドイツ)がゾーンを獲得。この時点で楢崎の年間優勝の条件だったオンドラの4位以下、楢崎の2位以上が確定し、楢崎の2016年以来2度目となるシーズンタイトルが決まった。

 ホイヤーが最後まで登り切れなかったことで、5番手の緒方に完登すれば初優勝というチャンスが巡ってくる。すると、なんと緒方は一撃で難関課題をクリア。唯一の全完登を決めた緒方が歓喜の雄叫びを上げてW杯初優勝を手にした。

緒方が最終課題を一撃し勝利の雄叫びをあげた。

 これで今季の全6戦が終了。楢崎は出場が4戦のみとなったが、優勝1回、準優勝3回と安定感は抜群だった。今年最大のターゲットである8月の世界選手権へ向け、大きな自信となる逆転の年間優勝となった。そして初優勝の緒方は年間ランキングでも11位から一気にジャンプアップして3位となりキャリアハイを記録。今大会9位の藤井快も年間5位でトップ10入りを果たした。

 女子では野口がファニー・ジベール(フランス)を抜いて年間2位でフィニッシュ。今大会12位の伊藤ふたばは年間4位に入り、昨季の8位からさらに飛躍した。

 また、各戦上位選手のポイントにより決まる国別ランキングでは日本の6年連続1位が確定。分厚い選手層を誇る日本が、ボルダリング最強国の座を防衛した。

楢崎が2016年以来2度目の年間王者に輝く。左はアダム・オンドラ、右は緒方。(写真=IFSC/Daniel Gadja)

<決勝>

[男子]
1位:緒方 良行/4t4z 11 9
2位:楢崎 智亜/3t4z 5 5
3位:チョン・ジョンウォン(KOR)/3t4z 6 7
4位:ヤン・ホイヤー(GER)/2t4z 4 6
5位:アダム・オンドラ(CZE)/2t3z 3 4
6位:ショーン・マッコール(CAN)/1t3z 3 9
―――――
7位:石松 大晟 ※準決勝進出
9位:藤井 快 ※準決勝進出
10位:楢崎 明智 ※準決勝進出
11位:高田 知尭 ※準決勝進出
12位:原田 海 ※準決勝進出
15位:川又 玲瑛 ※準決勝進出
16位:土肥 圭太 ※準決勝進出
27位:杉本 怜

[女子]
1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/4t4z 9 8
2位:野口 啓代/3t4z 5 6
3位:ファニー・ジベール(FRA)/2t4z 3 9
4位:野中 生萌/2t4z 5 5
5位:ルース・ドゥアディ(FRA)/1t4z 2 8
6位:中村 真緒/1t4z 3 10
―――――
12位:伊藤 ふたば ※準決勝進出
20位:谷井 菜月 ※準決勝進出
31位:倉 菜々子
33位:小武 芽生

※左から氏名、所属国、決勝成績
※成績は左から完登数、ゾーン獲得数、完登に要した合計アテンプト数、ゾーン獲得に要した合計アテンプト数

リザルト詳細は国際スポーツクライミング連盟/大会ページから

<ボルダリングW杯2019 年間ランキング>

[男子]
1位:楢崎 智亜/340pt
2位:アダム・オンドラ(CZE)/335pt
3位:緒方 良行/264pt
4位:チョン・ジョンウォン(KOR)/228pt
5位:藤井 快/227pt

[女子]
1位:ヤンヤ・ガンブレット(SLO)/500pt
2位:野口 啓代/320pt
3位:ファニー・ジベール(FRA)/308pt
4位:伊藤 ふたば/206pt
5位:ジェシカ・ピルツ(AUT)/203pt

<ボルダリングW杯2019 国別ランキング>

1位:日本/1,693pt
2位:スロベニア/1,359pt
3位:フランス/766pt
4位:オーストリア/591pt
5位:ドイツ/534pt

CREDITS

篠幸彦 / 写真 AP/アフロ

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