日本人3選手が最終戦を表彰台で締めくくる/ボルダリングW杯最終第7戦 ドイツ・ミュンヘン大会

 8月18、19日、ボルダリングW杯の最終戦、第7戦がドイツ・ミュンヘンで行われた。男子は地元ドイツのヤン・ホイヤーが今シーズン初優勝を射止め、女子はヤンヤ・ガンブレットがシーズン3度目の優勝に輝いた。日本勢は男子で楢崎智亜が2位、石松大晟が3位に入り、石松はW杯初の表彰台。女子でも野口啓代が3位で最終戦を飾った。

 女子予選には野口、野中生萌、尾上彩、小武芽生の4人が出場。野中が全5完登で予選1位になると、野口も4完登で続き3位通過。4大会連続で予選を通過していた尾上と小武は1完登に終わり、予選敗退となった。準決勝では野口が全4完登でヤンヤ、スターシャ・ゲージョと並び、1位でファイナル進出。しかし、年間ランキング2位を確保したい野中は2完登の10位で決勝進出を逃し、年間表彰台に暗雲が立ち込める。

 決勝第1課題、先頭のアレックス・プッチョがボーナスを掴むにとどまるが、年間女王ショウナ・コクシーがその力を示し、これを一撃。3番手のペトラ・クリングラー、4番手のゲージョは完登できなかったが、5番手のヤンヤが2トライ目で完登すると、最終6番手の野口は一撃。今季決勝で幾度も相まみえた2人が最終戦でも熾烈なデッドヒートを繰り広げる。

 明暗を分けたのが第2課題。まずはプッチョがスタートから進めずに終えると、続くコクシー、クリングラーも先に進むことができない。するとゲージョがようやく突破口を見出し、何とかTOPにも両手がかかる。先月のワールドゲームズで国際大会初優勝を果たした19歳がW杯の舞台でも頂点への道を歩み始めるかと思われたが、完全に保持しきる前にフォール。あまりの悔しさに顔を両手でふさぎ込んでしまうゲージョに対し、観客からはねぎらいの拍手が送られた。この完登者が現れない難関課題に対し、リードW杯では負けなし3連勝中の絶対的女王がその実力を見せつける。ヤンヤは4トライ目でスタートを攻略すると、そのままゲージョが掴めなかったTOPのホールドも掴み連続完登で一気に暫定トップへ。野口はスタートを攻略出来ずじまいだった。

 第3課題でも繊細なバランスが求められたスタートの攻略に苦戦が強いられる。またもプッチョ、コクシー、クリングラーがスタートから進めずに終わったが、流れを変えたのはここでもゲージョだった。3トライ目でスタートを攻略すると、その勢いで一気に登り完登。後続のヤンヤと野口もスタートの壁を越えることができず、優勝の行方は最終課題に持ち込まれた。

 迎えた最終第4課題。まずはプッチョが3トライで完登すると、コクシーがこれを一撃。ここまで1完登だった女王が意地を見せ、逆転優勝に望みを繋ぐ。ゲージョは1トライ目でボーナスを掴んだが以降は苦戦。2完登で首位に立っていたヤンヤも、1トライ目でボーナスを得るが一撃はならず。しかし4トライ目で見事攻略し、唯一の3完登で今シーズン3度目の優勝を決めた。暫定3位の野口は一撃して一つ順位を上げたいトライとなったが、3トライ目でボーナスを掴むにとどまった。コクシーを抜くことはできなかったが、今シーズン5度目の表彰台となる3位で最終戦を終えた。

 男子予選は日本から9人が出場。藤井快、緒方良行が全完登で予選を1、2位通過するなど、楢崎智亜と石松、藤脇祐二を含めた計5人が予選を通過した。一方、年間優勝を争う渡部桂太は第1課題を一撃するも、その後に失速。1完登にとどまり、まさかの35位で予選敗退。年間優勝の可能性が潰えてしまった。

 準決勝に残った日本勢の快進撃は続き、藤井、石松、楢崎、緒方の4人がファイナルへ。石松は八王子大会で決勝に進出したことで掴んだこのチャンスを逃さず、再びファイナリストとなった。そのほか年間ランキングトップのチョン・ジョンウォンが1位、3年前の年間王者ホイヤーが5位で決勝へ駒を進めた。渡部と並び年間2位だったアレクセイ・ルブツォフは10位で敗退となり、この時点で男子年間王者はチョンに確定した。

 決勝は先頭を登る緒方が第1課題を2アテンプトで完登。2番手のホイヤーは3、4トライ目で連続してTOPに触れるが止めることができず。しかし5トライ目で地元の声援を煽り、後押しを受けると見事に完登。嫌な流れを自らのパフォーマンスで断ち切った。楢崎は3アテンプトで完登すると、石松がこれを一撃して会場を沸かせる。藤井も3アテンプト、チョンも2アテンプトで攻略し、6人全員が完登となった。

 すると第2課題で状況が一変する。緒方が何もできずに競技を終えると、ホイヤーは地元決勝の主役はこの俺だと言わんばかりに一撃。以降の4人もボーナスすら掴むことができず、ドイツの雄がアテンプト差で最下位だった状況から一気に頭一つ抜け出すことに成功。第3課題では全員が完登し、ここまで全完登のホイヤー以外は2完登で最終課題を迎える形に。

 2017年ボルダリングW杯シーズンの最終課題。一番手の緒方が惜しくもTOPを掴み切れずに終えると、会場は大声援でホイヤーを迎える。3トライ目、ホイヤーがボーナスを掴むと、声援は爆発的に大きくなった。そして観衆に押されるようにTOPを掴み、この日一番の歓声が会場を包みこむ。ホイヤーは決勝4課題全完登を成し遂げ、地元観衆の前で今シーズンW杯初優勝に輝いた。そして2アテンプトで完登した楢崎が2位、3アテンプトで完登した石松が3位に。苦戦した藤井はボーナスも掴めず、チョンもボーナス獲得に2アテンプトを要するにとどまった。

 これで2017年シーズンのボルダリングW杯全日程が終了。女子年間ランキングでは、第6戦を欠場して3位に後退していたヤンヤが2位に再浮上し、2位だった野中は最終的に4位に後退。野口は逆転で表彰台の3位に上がった。男子の年間優勝には2年ぶり2度目となるチョンが、2位には4位だった楢崎が入り、3位には準決勝で敗退したルブツォフ。年間優勝の可能性も残していた渡部は最終的に自身最高の4位でシーズンを終えた。

 また、国別ランキングでは日本が2位のイギリスにダブルスコアの大差をつけて4年連続の優勝を決めている。しかし、選手層の厚さを示してはいるものの、W杯全戦を通して優勝を遂げたのは第1戦の藤井、第3戦の渡部の2回のみ。来シーズンは、日本人が表彰台の頂点に立つ姿を多く目にできることを期待したい。

決勝第2課題唯一の完登で暫定トップに立ったヤンヤ

先月のワールドゲームズ優勝から好調のゲージョは第3課題を唯一完登

今大会女子表彰台=左からコクシー、ヤンヤ、野口

出場2大会続けてファイナリストとなった石松

地元の声援を味方につけるホイヤー

年間ランキング男子表彰台=左から楢崎、チョン、ルブツォフ

年間ランキング女子表彰台=左からヤンヤ、コクシー、野口

野口は今季5度目の表彰台で年間順位も3位に

 

<男子・決勝>

1位 ヤン・ホイヤー(ドイツ/25)4t10 4b6
2位 楢崎 智亜(21)3t6 3b3
3位 石松 大晟(20)3t7 3b4
4位 チョン・ジョンウォン(韓国/21)2t3 3b4
5位 緒方 良行(19)2t4 3b4
6位 藤井 快(24)2t9 2b6
—–
20位 藤脇 祐二(21)
21位 楢崎 明智(18)
23位 原田 海(18)
35位 渡部 桂太(23)
45位 堀 創(27)

<女子・決勝>

1位 ヤンヤ・ガンブレット(スロベニア/18)3t10 3b6
2位 ショウナ・コクシー(イギリス/24)2t2 2b2
3位 野口 啓代(28)1t1 2b4
4位 スターシャ・ゲージョ(セルビア/19)1t3 3b9
5位 アレックス・プッチョ(アメリカ/28)1t3 2b4
6位 ペトラ・クリングラー(スイス/25)0t 1b4
—–
10位 野中 生萌(20)
43位 尾上 彩(21)
49位 小武 芽生(20)

ボルダリングW杯/男子年間ランキング

1位 453pts チョン・ジョンウォン(韓国/21)
2位 404pts 楢崎 智亜(21)
3位 399pts アレクセイ・ルブツォフ(ロシア/28)
4位 372pts 渡部 桂太(23)
5位 327pts 藤井 快(24)

ボルダリングW杯/女子年間ランキング

1位 560pts ショウナ・コクシー(イギリス/24)
2位 470pts ヤンヤ・ガンブレット(スロベニア/18)
3位 381pts 野口 啓代(28)
4位 377pts 野中 生萌(20)
5位 290pts ペトラ・クリングラー(スイス/25)

ボルダリング国別ランキング

1位 2118pts 日本
2位 929pts イギリス
3位 927pts スロベニア
4位 736pts ドイツ
5位 715pts フランス
※国別ポイント=W杯各大会の国別上位3選手の合計ポイント

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CREDITS

篠幸彦 / 写真 藤枝隆介

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