FEATURE 28

大場美和・渡辺数馬

それぞれのBJC。二人の元日本代表

2018年のシーズン開幕を告げる、ボルダリングジャパンカップ(BJC)が2月3日から開催される。W杯で活躍する選手たちに注目が集まる一方で、本戦への切符を掴むため、優先出場権を持たないクライマーによる一般参加選手選考会が昨年12月に行われた。いわゆる予備予選を戦う選手たちのなかには、二人の元日本代表選手の姿があった。

再び世界の舞台に立つことを目指して

 大場美和、19歳。ユース年代から国内外で数々の実績を残し、2015年には日本代表としてW杯に出場。しかし、2017年のBJCで自身初の予選敗退を経験する。自らに足りない部分を補うため、通っていた大学を休学し、クライミングに集中する日々。10位で本戦へと駒を進めることとなった予備予選終了後、今の心境を聞いた。

 

 
まずは予備予選を振り返ってみて、いかがでしたか?(3課題目まではすべて一撃で仕留めるも、その後の課題は完登できなかった)

「4、5課題目は正解の動きが頭に出てこなかったです。特に最後はあと2、3秒あれば完登できたので、何でもっとはやくムーブが思い浮かばなかったんだろうって。悔しいですね」

今回、予備予選からの参加になったことについてはどう感じていますか?

「今年(2017年)のBJCで予選通過できなかった(33位)のが初めての経験でした。そのときは普段の練習から調子が悪くて、出る前から無理そうだな、全然実力が足りてないなって思ってしまって。周りの成長も感じて、自分が置いてかれちゃってるみたいな感覚がありますね」

昨年大会では大場選手より若い世代の選手が数多く活躍しました。

「誰がというのではないんですけど、本当に強い人が多くて、気持ちからして負けてしまうというか、勝てそうにないやってどこかで思っちゃう。勝負する前から負けていてはダメだって分かってはいるんですけど」

4月には大学を休学されています。やはりクライミングに触れる時間を増やしたいということでしょうか?

「そうですね」

休学後の生活はいかがですか?

「クライミングに集中できていると思います。トレーニングの日はしっかりトレーニングして、レストの日は何もする気にならないくらい疲れて、クライミング中心の日々を過ごしています」

練習量はどれくらい変わりましたか?

「時間で言ったら4倍は増えたと思います。学校行ってからだと3時間しか登れなかったのが、長いと12時間くらい」

ご自身のクライミングに変化は?

「基礎的な力がついたと思いますね。今まですごく不安定だった部分がだいぶ安定して登れるようになりました。ずっと保持力やパワーが弱かったので、そこを重点的に取り組んだ結果、以前と比べると断然強くなった実感はあります」

それではBJCへの意気込みを聞かせてください。

「やっぱり2月が本番なので、そこまでにもっともっと実力をつけてしっかり結果が出せるようにしたいです」

具体的な目標はありますか?

「W杯に出たいと思っているので、代表に選ばれるように、10位以内には入りたいです。決勝に行けたらいいですね」

 

「今の実力を確かめたい」元日本王者の胸の内

 
 大場のように代表復帰を目指す選手がいる一方、今の自分の実力を確かめるため、家族のために参戦するクライマーもいる。ちょうど10年前の同じ月、当時22歳で第3回ボルダリングジャパンカップを制した渡辺数馬。現在はコンペの第一線を退き、日本代表選手でもある妻と福岡でボルダリングジムを経営する。グループ12位で本戦出場を決めた元日本王者は、その胸の内を語ってくれた。

 

 
競技を振り返ってみていかがですか。

「リザルトを見たら、最終課題のスラブ(緩傾斜)が登れずに本選出場権を得ているのがほぼ僕だけなんですよ。僕にとってスラブというのは別競技みたいなもので(笑)、ずっと逃げ続けてたらこうなりますよね。本選はああいった傾斜が1、2面は出てくるはずなので、残り2か月、どうにかみんなと同じレベルになることを目標にしていきたいです」

最後にBJCに出場されたのが2015年の深谷大会ですが、再び出ようと思ったのはなぜですか?

「活動の比重を岩登りに置いていくなかで、人工壁でのトレーニングや、コンペティター並みの減量をするうちに『あれ、いまコンペ出たらどうなんだろう』って。ジムの経営が落ち着いてきたのもありますし、これは感覚の世界なんですけど、少しストレスに感じていた課題の微妙な変化が、僕が出ていなかった間に昔に戻ってきてる感じが見受けられて。通過できたら本選に出ようかなくらいの軽い気持ちでいたんですけど、出るからには練習は本格的に行なってきました」

日本代表選手でもある、奥様の沙亜里さんとは予備予選に参加するのにあたってお話はされましたか?

「沙亜里はもうBJCに出ないって言ってたんですよ。八王子W杯(2017年)のときに、もっと岩を登ったり、チョークバッグ(MUD HAND)の販売にも目を向けたいからって。で、僕がふらっと『予備予選通ったらBJC出ようかな?』って言いだしたら、『え?それはズルいよね?その間私が店番してるんだったら、私も出る』って(笑)。つまり僕がこの予選を通過をすれば沙亜里はBJCに出るし、通過しなかったら出ないって」

なるほど(笑)。沙亜里さんが登っている姿はやはり観たいですか?

「観たいですね。自分が決勝に行くよりも沙亜里に行ってほしいくらい。微妙に変化している課題のトレンドにまだまだ対応できるだろうし、いいとこ行けると思うんですよ。だから沙亜里が出るか出ないか、僕の通過にかかっていた(笑)。無事に突破できてよかったですね」

息子さん(4歳)に登っている姿を見せたいっていう思いはありますか?

「もともとはなかったんですけど、最近『パパみたいにムキムキになりたい』って言いだして。周りにいる僕の教え子とかから聞いて、僕をすごいって思ってくれてるみたい。だったら、本当にすごいな!って思うようなクライミングを公の場で出せたら、息子も何か感じてくれるのかなって」

結果的に、予備予選にかける思いは強くなっていったんですね。

「ぎりぎりのグループ30位でもいいから通過したいと思ってました」

それでは本選に向けて、意気込みを教えてください。

「自分は準決勝だとか、決勝だとかっていうリザルトを公言するにもレベルがわからないところにいる。まずは今回苦手な部分がみえてきたので、そこさえ修正できれば自分のなかで満足できるんじゃないかなって思ってます」

具体的な順位よりは、まずベストを出し切る。

「『大会に出るまでの努力をどれだけ出せるか』ですね。2月までは深酒しないとか、食べ過ぎないとか(笑)。でも今はそれが楽しくなってきてるのも事実なので。アスリートモード復活しようかなって感じですね。モチベーションを高めて頑張っていきたいと思います」

CREDITS

取材・文・写真 編集部 ※このインタビューは2017年12月9、10日に収録されました。

PROFILE

大場美和 (おおば・みわ)

1998年3月7日、愛知県生まれ。9歳でクライミングをはじめると、ユース年代から国内外の大会でその才能を発揮。2015年にはアジアユース選手権でボルダリング、リードの二冠を達成する。近年は校舎の壁をよじ登るCMが話題となるなどメディアにも多数出演し、活動の幅を拡げている。

PROFILE

渡辺数馬 (わたなべ・かずま)

1985年7月15日、千葉県生まれ。13歳でクライミングを始め、2000年からコンペに参戦。07年のボルダリング・ジャパンカップとアジアカップ(リード)で優勝を果たすなど実績を積み、W杯や世界選手権に出場した。現在は岩場をメインに活動する傍ら、ルートセッターとしても活躍。13年には福岡県にクライミングジム「ジップロック」をオープン、オーナーを務める。

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